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シホとレイナの往復書簡

水野知帆 東京

池田玲菜 神戸

09

2026年10月上旬 秋涼

To.池田玲菜 様
From.水野知帆

東京から神戸へ

神戸のいちじくがお店に並びだし、秋だなあと感じている日々です。
レイナは元気ですか。

昨日、MAMEHICOの自主企画「面白可笑ひこ」の銀座と桐生での公演を終え、この手紙を書いています。

怒涛の日々が終わって、今は穏やかな日常が心地よく感じます。
本当に何が何だか分からないまま、ひたすら突き進んだ2週間でした。笑

面白可笑ひこに演者として参加した感想は、別のマガジンで書かせてもらっているので、今回はレイナには、裏方スタッフとして感じたことを伝えようと思います。

この舞台の裏には、ほんっっとにいろんな人が関わっているんだなと、今回、しみじみ思いました。

誰かが店に来て鍵を開けないと、稽古場という「場」は始まらない。
来てくれた人たちが気持ちよく過ごせるように、お茶を作って待つ。
稽古に来たお客さんが差し入れを持ってきてくれたら、それをいい感じに盛り付ける。
そして、それを「いつ出すか」も大事だったりする。
普段、店で働いているときと同じことが、そこでも求められていました。

3年前、まだお客さんだったわたしは、稽古場に来て楽しく見学させてもらっていました。
でも、その裏で誰かがこういうことをしていたなんて、当時は全然知らなかった。
今回、スタッフ側に立ってみて、初めて見えたことでした。

本番前日には、演者たちが来るよりも前に、スタッフとお手伝いさんが銀座店にやってきました。
そこから、舞台がどんどん出来上がっていく。
動きにはまったく迷いがなくて、2時間ほどかけて、いつもお客さんが珈琲を飲んでいる銀座の店内が、面白可笑ひこ専用の劇場になっていきました。

何もなかったところから、舞台が立ち上がっていく。
それを見ていたら、なんとも言えず、ただ感動してしまいました。

本番当日も、キッチンからは今回のお弁当に使う油淋鶏を、ひたすら揚げている音が聞こえていました。
リハーサルを開場直前までやって、すぐに本番。

そして昼の部が終わると、お客さんの反応を受けて、夜の部の内容が変わることになりました。
セリフが足されたり、演目の順番が変わったり。
井川さんが指示を周りに送り、大急ぎで小道具を準備する人がいて、演者は新しい演技を覚える。

みんな、休むことなく動き続ける。
横で見ていて、「こんなことが本当にできるんだ」と思いました。

話はそれるけれど、こういう変化が起こって、それがまたすごく面白い方向に変わっていくから、できればお客さんには昼夜二公演、続けて観てほしいと切実に思います。笑

本番が終わった後も、演者たちが井川さんと反省会をしている傍らで、お客さんとして観に来ていた人たちも残って、スタッフみんなで後片付け。
反省会が終わって、その片付けに井川さんたちが合流しました。

そのとき、わたしよりずっと年上の方が、「僕は下っ端なんで、いいように使ってください」と、平身低頭で笑っていて。
いや…もう…。普段の自分の態度のデカさが、恥ずかしくなるくらいでした。笑

今回、「面白可笑ひこ」というイベントを通して、普段ならなかなか見ることのできない、周りにいるいろんな人たちの仕事ぶりを、間近で見させてもらいました。

こんなことを言ったら、観に来てくれたお客さんには失礼かもしれないけれど、舞台の本番は予告編にすぎなくて、この作っていく過程こそが本編なんじゃないか。
そんなふうに思うくらい、作っていく時間そのものに心を動かされました。

舞台に立つ人だけじゃなくて、鍵を開ける人、お茶を出す人、料理を作る人、小道具を用意する人、片付ける人。
それぞれが自分の持ち場で動いていて、その一つひとつが重なって、ようやくひとつの舞台になる。
そんな人たちがいるんだと、身をもって知ったことで、「わたし、まだまだ頑張らないとダメだな」と思ったよ。

神戸公演は11月。
場所が変わって、人が変わると、今度はどんなものが出来上がっていくんだろう。
今からとても楽しみです。

そんなこんなで過ぎ去ったシルバーウィークでしたが、レイナはどう過ごしていましたか?

東京から神戸へ

To.水野知帆 様
From.池田玲菜

神戸から東京へ

今週もお手紙ありがとうございます。
そして、面白可笑ひこ、お疲れ様でした!

シホちゃんの出演シーンを撮って送ってくれた方がいたので、私も観ました。
いやいや女の子!
「いやいやいや」が口癖のシホちゃんへの当て書きの演目ということで、シホちゃんというキャラクターが全面に押し出されていましたね。
大笑いしました!

シホちゃんがまだMAMEHICOで働き始める前、お客さんだった頃、毎月必ず面白可笑ひこに来てくれていました。
最後の反省会まで残って、どの出演者よりも大泣きして、「シホが泣いてどーすんの!」とみんなにツッコまれながら、熱い感想を言ってくれていたのをよく覚えています。笑

あの頃も、シホちゃんはいろいろとお手伝いしてくれていましたが、今回スタッフとして関わってみて、舞台の裏側にいる人たちの動きも、たくさん見えたんじゃないかなと思います。
大変だけど、楽しいですよね!

面白可笑ひこの参加者同士で同じテーブルを囲んでご飯を食べたり、舞台に上がったり、お互いの稽古を観たり、片付けをしたり。
いろんな場面を一緒に過ごすからこそ、初対面のときには分からなかった、その人のチャーミングなところを知ることができる。

だから私は、面白可笑ひこって、特別な、あったかい場所だなといつも思います。
11月の神戸での面白可笑ひこも、そんな楽しい時間にしていきたいと思います。

さて、ここからは神戸での個人的な話です。
先週、「久しぶり、レイナ。覚えてるかな?」と、約10年ぶりに会う友人が突然お店に来てくれました。

あまりに久しぶりだったので、最近どうしてる?と話しているうちに、昔のことや今のこと、いろんな話が出てきて。
神戸には一人旅で来ていたので、そのまま晩ご飯に誘って、一緒に食べに行きました。

思い出話をしているうちに、その友人との関わりが、今の私がMAMEHICOにいる理由の一つというか、ある種の原体験のようになっていることを思い出しました。

その友人と出会ったのは、中学生の頃。
小学校が同じだった友人とは、別々の中学校へ進学したのですが、ひょんなことから、お互いが中学校で知り合った友人をSNS上で紹介し合うようになりました。

気がつけば、公立・私立、女子校・男子校に関係なく、いろんな学校に通う15人ほどのサークルのような友人関係ができていました。
神戸に来てくれた友人も、そこで知り合った一人です。

お互いの学校の文化祭に行ったり、それぞれの小さな地元のお祭りに遊びに行ったり。
夜中に親に隠れて電話をしたり、ゲームをしたり。
今思えば、なんとも不思議なつながりでしたが、それがとても楽しかった。

中学生の頃、同じクラスで、同じ制服を着ていると、どうしても横にいる人と自分を比べてしまって、苦しくなることがありました。
人気があるか、頭がいいか、容姿なのか、性格なのか。
何を比べていたのかは、今となってはよく分からないのですが、とにかく「自分はどうなんだろう」と気にしていたんだと思います。

でも、そのサークルで出会った人たちの前では、なんというか、こういう自分でいなきゃ、と思わずにいられた。
そんな話を、10年ぶりに会った友人としていました。

すると、
「わかる、私もそう。いろんな人がいるんだっていう、貴重な学びだったと思うし、そのつながりが、なんだかとても居心地がよかった」
と話してくれました。
同じように感じてくれていたことが、なんだか嬉しかったです。

「こうあるべき」が存在しないつながりって、居心地がいいな。
学校の中では、いつの間にか周りと自分を比べてしまっていたけれど、そこから離れた場所では、そんなことを気にしなくてもよかった。
あの頃の私は、そんなつながりに安心していたんだと思います。

そして、私がMAMEHICOに来て、なんとなく最初から「安心するな」「居心地がいいな」と感じていたのは、この体験がどこかにつながっているのかもしれない。
今回、友人と話していて、そんなことに気づきました。

その友人は、遊ばなくなってからも私のSNSをずっと見てくれていたそうです。
「MAMEHICO、気になるな」
「レイナ、頑張っているな」
と思ってくれていて、私が神戸にいるという投稿を見たときに、「会いに行こう」と思い立ってくれたんだとか。

10年ぶりに会った友人が、自分の今をちゃんと見ていてくれた。
そう思うと、なんだか嬉しくて、これからも頑張ろうという気持ちが湧いてきます。
過去を振り返りながら、これからのことにも少し希望が湧いてくるような、そんな素敵な再会の日でした。

またシホちゃんの東京での近況、聞かせてくださいね。待ってます。

神戸から東京へ