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シホとレイナの往復書簡

水野知帆 東京

池田玲菜 神戸

04

2026年7月下旬 盛夏

To.池田玲菜 様
From.水野知帆

東京から神戸へ

関西は梅雨明けしたそうですね。
こちらは天気予報によるとまだ梅雨のようですが、それなのに一気に暑くなって、サウナみたいにムシムシしていて嫌な感じです。

東京に来て、1ヶ月半が経ちました。
仕事や生活の流れは何となく掴めてきましたが、銀座のモーニングシフトにずっと入っていると、色々な壁が見えてきて、正直苦しい日々が続いています。

一番は、お客さんが全く来ないこと。
店を開けては待ち、待てど来ず、閉める。
3年いた御影店でもそういう時はありましたが、あの頃は店長がそばにいて声をかけ続けてくれたから、不安を感じずにいられました。

今、銀座店の朝番は私一人です。
一人で開けて、一人で締める。
時間にしたら数時間のことだけれど、そこで生まれた不安は、自分の中にただただ溜まっていきました。

勉強のつもりで都内の他のモーニングにも行ってみましたが、行けば行くほど、うちのモーニングは唯一無二だと感じます。
落ち着いた空間で、旬の野菜を使った朝食が食べられる。そんな場所が銀座の一等地にあるなんて、他にはない。
そう思えば思うほど、「それなのにお客さんが来ない」という現実がよりつらく感じられ、不安はますます募っていきました。

立ち止まってもいられないと思い、チラシを作ってみました。
お客さんが集まる三軒茶屋店で配ってもらったりもしましたが、すぐに効果が出るわけでもなく。
なんだかなあと井川さんに愚痴ったところ、言われたのが「朝、二駅前の桜田門で降りて、そこから銀座店まで歩いてみなさい」ということでした。

どういうこと?と思いつつ、次の日の朝に、実際に降りてみて驚きました。
国会、警視庁、皇居と、日本の中心がそこに集まっているのです。
それらを見ながら銀座店の方に目をやると、朝日が昇っている。
つまり、日本を支えている人たちは、銀座店の上にある太陽を見ている!?
私、すごいところで働いてるんだ!と思えました。

今考えれば、子ども騙しだったのかもしれません。
でも、その日から、「とにかく毎日開けなくちゃ」と思えるようになりました。
いつか誰かがふらっと立ち寄るかもしれない。その日のために、開けなくちゃ、と。

そうしていたある日、学生時代の友達が名古屋から来てくれました。
たまたま都内に用があって、ふらっと立ち寄ってくれた友達を見て、びっくりしたけれど、本当に嬉しかった。
ああ、この瞬間のために店を開けるんだな、と思えて。

それを井川さんに報告すると、「やっとわかったか」という顔をされました。
こういうことを21年もやり続けているんだもんね。
私はたった1ヶ月で不安に押しつぶされそうになったのに。
いやあ、もう色々、舐めてたわ…。

お客さんが来なくても、店を開けることに意味がある。
まだお客さんが少ない日は続くと思うけど、誰かのためのモーニングを用意しておかないとね。

暑い日々が続くけれど、そちらもどうか体に気をつけて。
いつか銀座にも、遊びに来てね。

東京から神戸へ

To.水野知帆 様
From.池田玲菜

神戸から東京へ

今週もお手紙ありがとうございます!
夏真っ盛りですね!モーニングに向かう朝6時前でも、すでに暑いです。

先週頭あたりに、生まれて初めて蝉が脱皮している現場に立ち会いました!!
壁にひと際大きい虫の影があったので、都会っこらしく一瞬身構えたのですが、近づいてよく見ると、透き通る緑色の羽が見えました。
すごく綺麗で、感動しちゃいました!

その翌朝から、蝉の大合唱がスタート。
東京にももちろん蝉はいるんですが、こんなに大音量の鳴き声は聞いたことがありません。
中には、ひと際大きな鳴き声がする木があって、「さぞびっしり蝉がついているに違いない…!!」と思って見るのですが、全然蝉の姿が見当たらないんです。不思議です。

夏の間でも、蝉の鳴き声は変わっていくんだよ、と店長に教えてもらいました。
今は「ワシワシワシ」という鳴き声で、次は「ミーンミーン」、秋が近づくと「ツクツクボーシ」。
そんな変化も楽しみながら過ごす毎日です。

しばらく手紙でやりとりをしている私たちですが、先日、久しぶりに会えましたね!!
エトワール★ヨシノの久しぶりのバンドセットでのコンサートが南青山であり、桐生からも神戸からもスタッフ一同、東京に集まりました。

ライブの後には、全店のスタッフで懇親会。
みんなで集まるのは、3年前の神戸でのヨシノライブ以来。
久しぶりに顔を合わせたことで、それぞれが過ごしてきた時間や変化を感じる、とても貴重な時間になりました。

私とシホちゃんが入れ替わってから、どんな変化があったのかを話しているうちに、私たちだけでなく、周りのスタッフにもそれぞれ変化があったことを知りました。
神戸の店長の奥さんのみゆきさんが、シホちゃんの前で胸の内を話していたことが、強く心に残っています。

みゆきさんはシホちゃんと離れてから、「もっと私の教え方が良かったら、シホはもっと成長したんじゃないか」と、自分を振り返るような言葉を時折こぼしていました。
入れ替わってから2ヶ月が経とうとしている今でも、そんな思いを抱えていたとは知りませんでした。

みゆきさんは、本当に親のような気持ちでシホちゃんに向き合っていたんだなと感じます。
そしてシホちゃんからも、「ここにいて良い」と思えるまで付き合ってくれた店長やみゆきさんへの感謝の言葉がありましたね。
2人が顔を合わせて、お互いの本心を伝え合う機会があって、本当に良かったなと思います。

みゆきさんは私によく、「玲菜の後ろに、東京のスタッフの顔が見える」と言います。
私も離れてみて、みんなにたくさん育ててもらったんだなと感じます。
「誰々だったら、このときどうするだろう」と、そんな風に考えながら判断している自分に気づくことがあります。

さて、ここで最近の私の課題が生まれています。
気づいたはいいものの、実際に変化させるためには、行動するしかないということです。
「言うは易し、行うは難し」という言葉が頭に浮かび続ける日々です。

東京では、自分よりも早く気づき、早く動く人ばかりだったので、自分の力なんて全然感じられませんでした。
でも神戸にいて、もし自分が気づいたことがあるのなら、それは思っているだけでは何も変わらない。
自分の力で動かなければいけない。

「社会には名前もついていない小さな仕事がたくさんあって、それをどう評価されるかなんて関係なく、面倒くさがらずにやる人がいるから、いい社会になっていく。」
中学から私立校に通い、なんとなく他人から評価される道を歩んできた頃の私は、そんなことを知りませんでした。
MAMEHICOに来てから、周りの先輩たちに教えてもらったことです。

私は、その面倒くさくて小さいことを、丁寧にできる人なのか。
神戸に来て、天の神様に問われているような気がする最近です。

シホちゃんのショート動画やブログ、神戸でいつも笑いながら見ています。
次のお手紙も楽しみにしていますね!

神戸から東京へ