MAMEHICOのアイスコーヒーをご自宅でもどうぞ

紫香邸は通常営業再開です!

シホとレイナの往復書簡

水野知帆 東京

池田玲菜 神戸

07

2026年9月上旬 処暑

To.池田玲菜 様
From.水野知帆

東京から神戸へ

涼しくなったと思ったら、また暑くなりましたね。
「関西の方が雨もあんまり降らんし、暑くてたまらんわ〜」という声も聞きましたが、みなさんお元気ですか?

神戸のみんなの活躍を聞いていると、そこまでの過程、一つ一つを想像します。
千里の道は一歩から、じゃないけどさ。
地道なことの積み重ねなんだよね。ほんとに。

「人前に出るよ」と言うだけで震えていた、あのさくちゃんが、今はホールに出て、焼きたてのマフィンを直接、お客さんに売り込んでるなんて。
それは、さくちゃんがずっとやりたいと言ってきたことだったんです。

でも、そのタイミングがなかなかこなかった。
それが半年以上経って、やっと形になった。
それを私は知ってるから、泣けてきます。
希望を持ち続け、常に進み続けるその姿に、私は東京にいても、元気をもらっています。

レイナも、「こうしたい」ということがたくさんあるんだと言ってたね。
そうやって働く姿は、誰かの希望になってるはずだと思うし、私自身の姿も、誰かの希望になれるように、手を抜かず、頑張らないとなと思うよ。

さて、最近の銀座店は、自主企画に向けた動きがありました。
レイナも出演していた、「面白可笑ひこ」です。
レイナは知ってると思うけど、私はこのイベント、ほんとうに面白いから、好きなのです。

以前、井川さんが、「面白い」と感じるのは、予想もしていなかったものが出てくる、その差だと話してくれました。
そう考えると、「面白可笑ひこ」って、まさにそういうものだよね。

あの可愛い猿のポスターを見て、「動物が出るんですか?」と聞いてきたお客さんがいました。
まさか、井川さんが書き下ろした、現代を風刺した劇や古典劇が出てくるとは思わないでしょう。
しかも、それをカフェのお客さんと一緒に、閉店後の店でどう作り上げるのか、夜な夜な、真剣にやっているなんて。

そしてさらに、面白いことになりました。
私も、役をもらって出ることになったのです。
今まで舞台の裏にいたのですが、今回は表に出ることになりました。
びっくりしましたが、ありがたい機会だと思っています。
カフェと同じように、自分にできることを、一生懸命やろうと思います。

ということで、閉店後、銀座店の舞台に立ってみたんだけど、お客さんの目を想像したら、途端に震えました。
こんな中で、レイナは堂々と立って、お客さんの視線を一身に浴びていたんだね。

そんな私の舞台の練習が始まりました。
この前は、レイナと一緒に舞台に立っていた、セツオさんと練習をさせてもらったよ。
まずは、滑舌を直してもらいました。
そんなこと、普段は意識することもないから、すごく新鮮。

そして、どう「相手に伝えるのか」という話もしてもらったよ。
感情的になるよりも、むしろ、とつとつと話した方が伝わるものがある、なんて言われて。
それで改めて、MAMEHICO製作の連続ドラマ「ノッテビアンカ」を見てみると、ああ、確かにそうだなと、腑に落ちたりもした。

まあ、だからと言って、じゃあどうすればいいのかなんて、正直さっぱり。
なので、セツオさんに私の役を全部読んでもらい、それを録音したやつをひたすら聞いて、声に出して、体に覚えさせています。

気分は、英語を勉強する学生よ、ほんと。
電車でそれやってたら、変な目で見られたけど。気にしてらんないよね。
移動時間しか練習する時間なんてないんだもん。
時間がないから焦る。でも、なんか楽しいです。

レイナが東京にいた時には、毎度出演していた舞台。
みんなで積み上げてきたものだから、良いものになるように、がんばるね。
何か、舞台初心者の私に、先輩からのアドバイス、もらえたら嬉しいな。
お返事待ってます。

東京から神戸へ

To.水野知帆 様
From.池田玲菜

神戸から東京へ

今回もお手紙ありがとうございます。
まだまだ暑いですが、空を見ると、もう秋の雲の形をしていますね。
あれだけ大音量で合唱していた蝉も、すっかり鳴き止みました。
なんだかちょっと切ない、夏の終わりです。

さて、シホちゃんが「面白可笑ひこ」に出演するという話、楽しみですね!
新しい台本ができたということで、気になって読んでいると、「あっ! この役はシホちゃんに違いない!」という箇所があって、想像してみただけでも笑ってしまいました。

私がMAMEHICOにこうして関わるようになったきっかけは、カフェじゃなくて、お芝居が最初だったんです。
だから、「面白可笑ひこ」や、井川さんが脚本を書くもの全般に、格別な思い入れがあります。

私が高校3年生のころ、『ゲーテ先生の音楽会』を初めて観たときの衝撃は、今でも忘れられません。
それはかつて、井川さんとオペラ歌手の増原さんの二人でやっていたお芝居です。

二人の役者の丁寧な演技と、生き生きとしたアドリブ合戦。
腕の良いミュージシャンたちと奏でる、オリジナル曲の耳心地の良さ。
衣装、舞台セット、チラシのデザインまで、すべての細部にこだわりが見えました。

こんなに素敵なものが、大きな資本に頼ることなく、丁寧に、上質につくり上げられている。
それが衝撃で、そして、「表からはわからないけど、何かバックがあるのかしら…」なんて疑って、気になって、どんどん関わるようになりました。

でも、過ごしているうちに、MAMEHICOには何か後ろ支えするものがあるわけではなく、ただただ井川さんとスタッフのみんなが、ものすごい努力をしているだけなんだということがわかりました。

それまで浅はかな疑いを持っていた自分が恥ずかしかったですし、同時に、MAMEHICOという場所をますます特別に感じるようになって。
そして働き始めて、今に至ります。

井川さんの作る演劇は、「自分らしさを出す」ことが一番大事なんです。
他ではどうだかわからないけれど、少なくともMAMEHICOでやる演劇は、違う何かになるのではなくて、自分の皮を剥いて、裸の自分を見せる作業なんじゃないかなと感じています。

シホちゃんが、舞台に立ってみたら怖くなってきたという話、とてもよくわかります。
私も何回もやっているけれど、人前に立つと、普段は意識していない「こう見られたい」という自意識が、浮き彫りになります。
だから毎回、この自意識を捨てるために、たくさん練習して、本をしっかり理解して、最後は本番で勇気を振り絞っています。

でも、その分、学ぶことが多いんですよね。
だから私は、人前に立つのが好きです。
シホちゃんの初舞台、楽しみですね!

さて、こちら御影店では、今週は井川さんが来てのイベントウィークでした。
まずは、マフィン工房の小さな花壇に、たくさんのかわいい植物を植えました!

さくらちゃんが群馬・桐生の紫香邸から苗を持ち帰って、自宅で育てていたものもあって、「これがあの紫香邸から来たのか!」と思うと、なんだかうれしくなります。
今のメニュー冊子の表紙に登場しているジャカランタも仲間入りしました。
ほかにもいろいろ植わって、今までちょっと寂しかった工房のまわりが、急に賑やかになりました。

植物があるだけで、なんだか工房の景色が変わるんですよね。
花壇もマフィンも、これからどんなふうに育っていくのか楽しみです!

そして、お話し会は、2日連続でいらっしゃる方もいたりして、今回も盛り上がりました。
そんなお話し会で、最近よく聞くのが、「ここでは自然体でいられる」という声です。

家でも、職場でも、それぞれに役割がある。
役割を通した発言ばかりしていると、自分って何なのかわからなくなってきてしまうけれど、少なくともMAMEHICOにいるときは、自分そのものだと思える。
そんなふうに言ってくださるんです。

そういう話を聞くと、やっぱりうれしいですね。
人が来る日も、来ない日もあるし、働いていて「今日はどうなるかな」と思う日もあります。
でも、ここに来ると自然体でいられる、と言ってくれる人がいる。
それなら今日もちゃんとお店を開けて、ちゃんと働こう、と思います。

なんだか、良いイベントウィークでした。
またシホちゃんの近況も聞かせてくださいね。
お手紙待ってます。

神戸から東京へ