11月からの銀座店は曜日ごとに表情が変わります

初日は11/3 「火曜の一皿」ご予約お待ちしています

シホとレイナの往復書簡

水野知帆 東京

池田玲菜 神戸

11

2026年10月下旬 秋晴

To.池田玲菜 様
From.水野知帆

東京から神戸へ

MAL(MAMEHICO ACOUSTIC LIVE)キックオフ、お疲れさまでした!
レイナも神戸から駆けつけてくれて、MAMEHICOにゆかりのある人たちが銀座店に集まり、一緒に生の演奏を楽しみました。

その翌週には、MAMEHICOが企画した「昭和歌謡、歌うフルート」もあり、音楽に触れる機会が続きました。
そんな日々のなかで、いろいろと考えることがありました。

MALキックオフの席で、井川さんはこう話していました。
「音楽家が音楽だけで食べていくのは難しい。生の演奏は素晴らしいけれど、集客はまた別の問題。よい演奏をすることと、それを聴きに来てもらうことは、まったく別の仕事なんだ。」

私もスタッフとしてイベントに立ち会いながら、胸が熱くなり、こっそり泣いてしまうこともありました。
それだけに、客席にちらほらと空席を見つけると、「こんなにも素晴らしいのに…」と、なんとも切ない気持ちになってしまうのです。

音楽に限らず、演劇の世界でも似たようなことを感じます。
「面白可笑ひこ」をやっていると、日頃から演劇に親しんでいる人も、そうでない人も、お店に集まってきます。
舞台に立つ人がいて、それを見に来る人がいる。
そういう場ができること自体、面白いなと思います。
けれど、表現する場をつくり、そこにお客さんに来てもらうとなると、簡単なことではありません。

井川さんは、「MAMEHICO銀座には日頃から通ってくれるメンバーさんたちがいる。そこに、表現する人を招く。そういう形でいこう」と話していました。
今回のMALキックオフや「昭和歌謡、歌うフルート」にも、普段からMAMEHICOに通ってくれているお客さんが足を運んでくれました。

いつものお客さんが、いつもとは違う楽しみ方をする。
そして、そこに新しく舞台に立つ人が加わる。
そういう光景を見ていると、普段からお店に通ってくれる人たちがいることの心強さを感じます。

もっとも、井川さんからの無茶振りにタジタジとなっている出演者の姿を見ていると、なかなか大変そうではありますが…(笑)。
予定調和ではないからこその面白さ、というのもあるのかもしれません。
舞台に立つ人が真剣に取り組む姿に、お客さんが手を叩いて笑っている。そんな光景を見ていると、こちらまでつい夢中になってしまいます。

そういえば、この前、三茶店のシフトに向かう途中、駅を出たら大道芸をやっていて、すごい人だかりができていました。
綱渡りの最中、落ちそうになりながらもなんとか持ち堪える場面では、みんな拍手喝采!
その様子を見ながら、銀座店で行われる舞台のことを思い出しました。

時には、見ているお客さんまで「その綱」を一緒に渡らされるようなハラハラ感がある。
会場全体が息をのむような、あの緊張感。すさまじいものがあります。笑
そして、そんな場面を一緒に味わったあとには、会場全体が妙な熱気に包まれている。
舞台に立つ人がキラキラと輝いて見える。そんな瞬間があります。

銀座店でこういう時間を過ごすたびに、誰かがやってみたかったことを、実際に形にしていく場でもあるんだなと思います。
誰かが何かに取り組む姿を見ていると、こちらも胸を打たれたり、思いがけない景色を見せてもらったりします。それが何より面白い。

そして、イベントの日だけで終わらず、なんてことのない日にお店にお茶を飲みに来てくれたりする。
あの日、同じ時間を過ごした人と、また別の日にお店で会える。
そんな関係が続いていくことが、私はとても嬉しい。
銀座店で、これからどんな人に出会い、どんな時間を一緒に過ごせるのか。
楽しみは尽きません。

レイナが神戸に行って、もうすぐ丸4ヶ月。
働いてみて、御影店はレイナにとってどんなお店だと思いましたか?

東京から神戸へ

To.水野知帆 様
From.池田玲菜

神戸から東京へ

今回もお手紙ありがとうございます。
私は神戸から、そして桐生の紫香邸からもさっちゃんとりかこちゃんが来て、みんなで銀座の新しい企画「MAL」を見届けました。とてもいい時間でした。

その後に続くイベントも、シホちゃんの感想を聞いていると、きっとMAMEHICOらしい時間だったんだろうなぁと想像しています。

そして、これからも続けていきたいと思う一方で、本当に続けていけるのだろうか…と、不安になったり、切ない気持ちになったりする。
そんなシホちゃんの思いを読んで、私自身も考えさせられました。

私は学生時代、「良い物を、売れる物にしたい」とずっと思っていました。
きっかけは、小学4年生の頃。
2010年の年間オリコンCDシングルチャートを、朝の情報番組で偶然見かけたことです。
あの衝撃は忘れられません。
TOP10のうち、半分がAKB48、もう半分が嵐だったんです。全員アイドルです。

幼い頃の私は、みんな「良い音楽」が好きだと思っていました。
だから当然、「良い」順に音楽が売れると思っていたのです。

ところがどっこい、CDという音楽を聴くための媒体が、「可愛い、かっこいい」という理由、さらには「会える」「握手ができる」という理由でも買われている。
そんなことを知りました。
私にとっては、とても衝撃的な出来事でした。

当時、ヴァイオリンのレッスンに通い、それなりに厳しい指導を受けながら、1日2時間ほど練習していました。
そんな中で、「今こうして少しでも上手くなろうと頑張るより、少しでも綺麗になる努力をした方が、より多くの人に喜んでもらえるのではないだろうか…」なんて、極論を真剣に考えたこともあります。笑

だって、すっごくすっごく努力して、良い音楽を披露したつもりでも、それが良いとわかってもらえない。聴いている人に喜んでもらえない。
そんなことがあったら、もったいないし、残念だし、悔しいし、寂しい。

それに、こんなに時間をかけてもお金にならないのなら、続けていくことさえできないんじゃないか…。
小学生の私は、そんなふうに考えて、軽い絶望を味わったのです。

以来、「良い物を良いと理解して買ってもらうのは、難しいことらしい。どうしたら売れるのだろう」という問いを胸に抱えながら、大学の進路なども決めてきました。

時は過ぎ、大学1年生のときです。
渋谷のMAMEHICOで井川さんたちとテーブルを囲んでいたとき、シホちゃんのショート動画さながら、「井川さん! 良いものを売るためにはどうしたら良いですか?」と質問しました。
井川さんは、良いものを売っている人だと思っていたからです。

「そんなものはない、商品と作品は違うんだ」
即答で否定され、びっくりしてしまった私。

「えっ、でも井川さん、売れなきゃ作品を作り続けるためのお金がなくなってしまうじゃないですか!良い物を作り続けることもできなくなってしまうんじゃないですか!?」
すぐに続けて質問しました。

「作品を作り続ける、それも良い物をとなると当然、相当に難しいことなのは間違いない。けれど、大きな市場を相手にするのではなく、規模を小さくしたら、まだ希望があるんじゃないかと思っているよ。小さな規模、顔と名前のわかる人同士なら、良い物を作り続けられるんじゃないかと」

今のメンバーシップ制のMAMEHICOが始まる前の話です。
良い物を「売る」ことはできない。
でも、良い物を「続ける」ことならできる。
私は、このときの井川さんの話を自分なりにそう受け取りました。

この話を思い出しながら、御影店はどんなお店なんだろうと、改めて考えてみました。
今年の9月に4周年を迎えた御影店。
ここにいると、お店も人との関係も、少しずつ歳月を重ねているのだなぁと感じます。

良い場所に、良い木材を使った家具を置き、良い素材の食べ物を出す。
それはもちろん大切なことです。
でも、私が御影店にいて面白いなぁと思うのは、そこに人が集まることで、思いがけない出来事が起こることです。
セレンディピティですね。
今回、シホちゃんが銀座のイベントを通して感じたことも、そんな出来事のひとつなのかもしれません。

ひとつの楽しい偶然が起こるまでにかかる時間は、本当にそれぞれです。
1日で十分な人もいれば、21年前の出会いがじっくり熟成されて、ようやく今! ということだってある。

だから、今の御影店にいて思うのは、まずは続けていくこと。
長く続くお店にしたい。
そして、ここで生まれるたくさんの偶然に出会って、みんなで一緒に楽しんでいきたい。

続けることだけでも楽じゃないんだけれど、それでも、きっと私にもできることがある。
油断せず、でも前向きにお店に立つ日々です。

御影店は今週からリニューアル期間に入ります。さぁ、頑張るぞ!
またシホちゃんの思っていること、聞かせてくださいね。待ってます。

神戸から東京へ