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朝の街を、あてもなく
仕事柄、毎週末、試合や合宿で日本各地を飛び回る生活を長く続けてきました。
試合の日は、夜遅くまで選手のサポートが続きます。
せっかく遠くまで来ていても、街を歩く余裕はほとんどありません。
だからこそ、少しだけ早起きをしてホテルを抜け出し、その土地の朝を歩くことが、いつしか私の小さな楽しみになりました。
急がないから、見えるもの
目的地は決めません。ただ、気になった方向へ歩いてみます。
路地裏で季節の花を見つけたり、昔からそこにある喫茶店に出会ったり。
どこからか焼き立てのパンの匂いが漂ってきたり。
急いでいたら気づかないようなものばかりが、不思議と目に留まります。


歩いていると、その街で暮らしている人たちの気配も少しずつ見えてきます。
朝の道を歩く人。
店を開ける準備をしている人。
家の前を掃除している人。
そこに住んでいる人にとっては、きっといつもの朝。
でも、私にとっては初めて見る朝です。
観光ガイドに載っている名所よりも、そんな何気ない景色のほうが、なぜか気になってしまうのです。

知らない街の、知らない誰かのいつもの朝を、ほんの少しだけ覗かせてもらう。
それだけで、その街に来たことが、ちょっと特別なことに思えてきます。
自分の時間に戻るひととき
高台にある公園で、ゆっくり昇っていく朝日をぼーっと眺めたり。
雪が降り積もる朝に、白い息を吐きながら、少し離れたコーヒー屋さんまで歩いてみたり。
堂々と道の真ん中であくびをしている、ちょっと太っちょな犬に出会ったり。
二度見してしまうような、なんとも言えない顔をしたカモを見つけたり。


どれも、大きな出来事ではありません。
でも、そんなものを眺めながら歩いていると、その土地で暮らしている人たちの日常や、季節の匂い、生き物たちの気配が少しだけ身近に感じられます。
携帯の地図を閉じて、気になった角を曲がってみる。
細い路地に入ってみる。
行き止まりなら戻ればいい。
気になるお店を見つけたら、入ってみればいい。

そんなふうに歩いていると、慌ただしく過ぎていく日々の中で、ふっと自分の時間が戻ってくるような気がします。
その街の空気を感じる
仕事で訪れている街でも、朝の少しの時間だけは、選手のことも予定のことも忘れて、その街を自分の目で見て歩くことができます。


知らない道を歩いて、知らない景色を見て、知らない人たちの暮らしを少しだけ覗いてみる。
そうしているうちに、「ここに来たんだな」と実感するのかもしれません。
だから、新しい街を訪れると、まず歩きたくなるのだと思います。
これからも知らない土地へ行くときは、少しだけ早起きをして、その土地だけが持つ朝の景色を探しに出かけたいと思います。



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