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庭を育てて、庭に育てられて
私は植物が好きで、20代の頃、花屋で働くという夢を叶えました。
植物に囲まれて働くことは楽しくて、まさに天職だと思っていました。
ところが、体調を崩したことをきっかけに、食べるものの大切さを考えるようになりました。
その頃に出会ったのが、「オーガニック」という言葉です。
農薬や肥料に頼るのではなく、自然の力を活かしながら、命が循環していく。
そんな考え方に惹かれ、本屋で曳地義治さん、トシさんの『オーガニックガーデンブック』を手に取りました。
そこで初めて、庭にもオーガニックという考え方があることを知ったんです。
こんな庭をつくりたい!
その後、妹が私のために買ってきてくれた雑誌で、「十勝千年の森」という庭に出会いました。
写真を見て、どうしても実際に見てみたくなり、初めての一人旅で北海道へ。
北海道ガーデニング街道を巡りました。

なかでも十勝千年の森には、すっかり心を奪われました。
植物が本来持っている力を活かしてつくられた庭。
人間がすべてをコントロールするのではなく、植物が芽生え、育ち、枯れていく。
その一生を含めて庭として見る。
その景色に感動して、「私もこんな庭をつくりたい!」と思いました。
それからいろいろあって花屋を辞めることになり、そこでふと気づいたんです。
目の前に、祖父がつくった庭がある。
それまで庭づくりには、まったく関心がありませんでした。
でも、よく見ると、そこには長い時間をかけてつくられた庭がある。
だったら、この庭を活かしてやってみよう。
そう思って、30代の頃に庭づくりを始めました。
庭と一緒に、つくっていく
私が影響を受けた庭師さんに、ポール・スミザーさん、ピート・アウドルフさん、ジル・クレマンさんがいます。
3人に共通しているのは、生命と循環を大切にしていること。
植物の芽生えから枯れるまで、その一生を見届けることも、庭の一部として考えています。

私の庭も、肥料や農薬は使いません。
水やりも最小限。
生えてくる草をむやみに抜くこともしません。
庭に出現する生き物を、できるだけ受け入れて生かしていく。
庭を人間の思い通りにするのではなく、そこにある命を大切にしながら、庭と一緒につくっていく。
そんな庭を目指しています。
庭には、終わりがない
庭づくりを始めて10年になります。
10年やっていても、庭に出るたびに発見があります。
「こんなところに、こんなものが生えてる!」
「去年と全然違う!」
季節が変われば景色が変わり、天気によっても変わる。
思った通りに育たないこともあれば、思いがけないところから新しい命が出てくることもあります。

そのたびに、「じゃあ、今年はこうしてみよう」と考える。
だから、全然飽きません。
庭づくりには終わりがないんです。
少しずつ手を入れながら、自分の楽園をつくっているような感覚です。
庭に育ててもらう
振り返ってみると、庭から教えてもらったことはたくさんあります。
草の根が土をつくること。
自然はゆっくりだということ。
植物も人間も、同じ生き物だということ。
庭づくりは、自分と自然との対話でもあるということ。
それまで苦手だと思っていた虫やヘビ、カエルも、ただ知らなかっただけでした。
知っていくと、この世に存在するすべてのものが素晴らしく思えてくる。
私たちは、大きな自然の中で生かされているんだなと感じます。
環境が変わることも自然なこと。
だからといって、放っておけばいいわけではなく、ちゃんと手入れをすることも大切。
そんなことまで、私は庭から教えてもらいました。

今までは、知識を得ることを重視していたように思います。
でも、実際に自分でやってみて、感じることのほうが何より大事なんだと気づきました。
そう考えると、10年経った今、私はようやくスタート地点に立ったところなのかもしれません。
地球をひとつの庭として
子どもの頃から、庭で遊んだり、土をいじったりするのが好きでした。
実家は酪農をしていて、牧草地もありました。
草原を見るのも好きでした。
一人遊びが多かったので、庭づくりも一人で黙々とやっています。
今思えば、そんな子どもの頃の時間が、今につながっているのかもしれません。
これからは、もっと経験を積んで、自分の言葉で庭の素晴らしさを伝えられるようになりたい。
そして、庭づくりをする人が増えたら嬉しいと思っています。
ジル・クレマンさんが、
「地球をひとつの庭と見ることで、すべての人間は庭師で、私たちの行動が地球という庭に影響を及ぼしている」
という考えを示しています。
私は、自然を愛することは、平和にもつながると信じています。
だから、庭づくりをしていると、未来への希望を感じます。
草原や野山の自然な景色、日本の文化や芸術、そして平和。
私が好きなもの、心の中にある風景を、庭という場所に少しずつ表しているのだと思います。

季節を感じられて、土や植物に触れることで元気になれる。
暮らしの中で美しいものをつくるのに、庭はとてもいい場所です。
私にとって庭は、地球上でいちばん幸せな場所。
庭を育てているつもりが、いつの間にか、自分の心と体のほうを育ててもらっていました。
今では、庭づくりをするために生まれてきたんじゃないかと思うほどです。笑
もう「趣味」という言葉では足りないくらい。
私にとって庭づくりは、生きがいになっています。



素敵な写真と文章で、千明さんがなぜ紫香邸に来てくれるのかが、よくわかりました。 とても共感します。 これからも、どうぞ、よろしくお願いします☺️