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2メートルの飛行物体

急いでいた、そのとき

それは、お店がお客さまで賑わう日曜日の夕方のことでした。
その日は先輩スタッフが他店舗へ出向いていて、私と若手スタッフの3人体制。

季節のパフェのオーダーが立て続けに入り、私はキッチンでひたすらパフェやドリンクを作り続けていました。
パフェが完成し、ホールスタッフに持って行ってほしいのだけれど、2人とも接客の真っ最中。
忙しいときにはポジションに関係なく、ホールに出て、お料理やデザート、飲み物をお客さまのもとへ運ぶのが私たちのルールです。

「アイスが溶けないうちに、最高の状態でお客さまのもとへ届けたい!」
そう意気込んでパフェをトレイに乗せ、ホールへ踏み出した、その瞬間でした。
床に敷いてあるマットにつまずき、盛大にバランスを崩してしまったのです。

足元から崩れ落ちる視界の中、スローモーションのように美しい弧を描いて宙を舞うパフェ…。
頭の中は真っ白、顔面は蒼白です。

…そして、宙を舞ったパフェの着地点にいらっしゃったのは、なんとお客さまでした。
履かれていたジーパンの裾に、無残にもパフェのクリームがついてしまったのです。

「どうしよう…」

足元を見つめ直した日

青ざめる思いで駆け寄り、綺麗なタオルでお召し物を拭こうとした私に、そのお客さまは思いがけない言葉をかけてくださいました。

「僕のジーパンの方が汚いから全然大丈夫!」

まさに天使のようなお心遣いに深く感謝しつつ、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、私は床に散らばったパフェを片付けました…。

「忙しい時こそ、まずは顔をあげて周りを見渡し、全体を見て深呼吸」

日頃から先輩スタッフに言われている言葉が身にしみてよみがえります。
「早く届けたい」という一心だった私ですが、本当に大切なのは焦ることではなく、足元を確かめ、周りを見渡し、確実に届けることでした。

…とはいえ、あの2メートルほど見事に宙を飛んでいったパフェの残像が、しばらく脳裏から離れなかったのは言うまでもありません。とほほ…。