やわらかさを選ぶ春

みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野です。
春のはじめ、空気が少しやわらいで暖かくなってきたころ、「そろそろかな」と思いながら、目を落として歩くことが増えてきます。
草たちが一斉に伸びはじめるなか、やわらかいよもぎの若芽が顔を出します。
そのタイミングを見計らって、よもぎを摘みに出かけます。
摘んだよもぎはペーストにして、白玉に練り込む。春先の、MAMEHICOの手仕事です。
よもぎは、粉末を使ったり、葉を仕入れることもできるけれど、MAMEHICOでは自分たちの手で摘んだものを使います。
手間だけを考えれば、買ってしまうほうがずっと楽です。
それでも、わざわざ摘みに行くのはなぜか。
よもぎは、どれでも同じではないからです。
といっても、「この品種だけを選ぶ」というよりは、目の前のよもぎを見て、その状態を見極めています。
個性豊かなのは、人間と同じ。人によってコミュニケーションのとり方が違うように、よもぎ一枚一枚と対話するような感覚で摘んでいきます。
見分けるポイントはいくつかありますが、いちばん大きいのは「やわらかさ」です。
春先の若い葉は水分を多く含んでいて、繊維がまだ発達しきっていません。
すりつぶしたときに繊維が口に残らず、舌ざわりがなめらかになります。
少し育ってくると、見た目は似ていても繊維が強くなり、ペーストにするとざらつきやすくなります。
だから、ごわごわした葉は避けて、ふわっとやわらかいものだけを選びます。
さらに、葉先だけを摘みます。茎に近い部分は繊維が多く、アクも強いからです。
葉先だけを使うことで、えぐみが出にくく、よもぎ特有の、青くてやさしい香りだけが残ります。
適度なアクは風味の奥行きにもなりますが、強すぎると「草っぽい」「えぐい」と感じてしまう。
摘む段階での見極めが、そのまま味の仕上がりに直結します。
ちなみに、よく「トリカブトと似ていて危なくないですか?」と聞かれます。笑
よもぎの葉には細かい切れ込みがあり、裏には白い綿毛がびっしり生えています。
触るとやわらかく、指に独特の香りが残る。
実際に見て、さわって、香ってみると、すぐにわかります。
自分たちで摘んでいるというと、「やってみたい!」という方が多く、ならば一緒に、と始めたのがよもぎ遠足です。
野原をゆっくり歩きながら、よもぎを探して、選んで、摘む。
でも、参加してくださった方が、だんだん真剣な顔になっていくのが毎回おもしろい。
「こんなに一枚一枚違うんですね」
「これはやわらかい、これはかたい」
そう言いながら、自分の手で選んでいく。
そして、摘み終わったあとのお茶の時間に出すよもぎ白玉は、また少し違った味わいになるようです。
自分で選んだよもぎが、白玉になってお皿にのる。
その経路を知っていることも、おいしさの一部なのかもしれません。
よもぎのいい時期は、毎年ほんの短いあいだだけです。ちゃんと旬があります。
ぐんと背が伸びてくると、葉は一気にかたくなり、繊維が増えて、アクも強くなる。
植物としては成長しているのですが、食べるには少しピークを過ぎてしまう。
摘める時期はほんのわずか、3週間ほど。また来年の春まで待つことになります。
だから、たくさんはつくれません。その年、その時期に摘めた分だけです。
どこで育ったのか。どんな場所に生えているのか。
日当たりや土の状態、まわりの環境によっても、香りややわらかさは変わってきます。
自分たちの目と手を通したものだけを使うこと。
その感覚ごと、お客さまに届けたいと思っています。
少しだけ手間をかけて、少しだけ自然の都合に合わせる。
効率だけを考えれば、もっと別のやり方はいくらでもあります。
でも、この時期にしか出てこないやわらかさがあり、この手間の中にしか出てこない香りや味わいがある。
そうしてできた白玉は、その年ごとの味わいになります。
春先にだけお出ししている、よもぎ白玉。
ぜひ、召し上がってみてください。きっと、はっとする香りです。








