銀座はモーニングと予約制ランチ
三茶と神戸はもうすぐ初夏メニューに変わります

三軒茶屋、神戸・御影、桐生・紫香邸
開店当初から続く、看板の甘味。
クロカンとは、黒豆寒天のこと。MAMEHICOの開店当初から続く、看板メニューのひとつです。日本古来の豆と珈琲の店、マメとヒーコー(コーヒー)でマメヒコ⋯それが店名の由来であり、その意味でもこのクロカンは、お店のコンセプトをそのまま形にしたような甘味です。

北海道産の黒大豆を、3日ほどかけてゆっくりと火を入れていきます。時間をかけることで、甘さがじんわりと豆に入り、シワのない、つややかな黒豆に仕上がります。
ただ、この炊き方も、ずっと同じではありません。はじめは、きれいな黒色を出すために、鉄を煮汁に入れて一緒に煮ていました。 でも、どこか味わいが鉄っぽく感じられて(笑)。もう少しすっきりした味にしたいと思い、おそるおそる鉄を抜いてみたところ、思ったより色落ちもせず、いい具合に炊けることがわかりました。
さらに、火にかける時間や火加減も、少しずつ見直してきました。ずっと火にかけ続けるのではなく、定期的に火を入れて、あとは保温鍋で休ませる。煮汁も、ぐらぐらと沸かさずに、沸く少し手前で火を止めるようにしています。弱火であっても火にかけすぎたり、沸かしてしまったりすると、酸が立ってしまい、味わいが変わってしまうのです。
素材そのものが持つ風味と、それを引き立てる甘み。ひと粒ひと粒、豆の中心まで、じんわり味が入るように炊いています。

クロカンの甘さは、とても控えめです。よくある黒蜜よりもずっと淡い色をした、さらりとしたシロップも自家製で、きび砂糖の風味を活かしてつくっています。 甘さを加えるというより、黒豆の味を引き立てるために使っています。ゆっくりと炊き上げた黒豆に、やわらかな甘さが重なります。

クロカンの「カン」は、寒天のことです。寒天粉にアガーを合わせて、やわらかすぎず、かたすぎない食感に仕上げています。
はじめは、寒天100%でつくっていました。そのときは「これがいい」と思って始めたのですが、続けていくうちに、少しずつ違和感が出てきました。黒豆の食感と寒天の食感を合わせたときに、どうもしっくりこない。
そこで、ゼラチンを合わせてみました。寒天とゼラチンの割合を変えながら、いくつも試していくうちに、めざすかたさには近づいてきました。ただ、ひとつ問題が。時間が経つと、どうしても水が出てきてしまうのです。そうなると、また研究です。
そこで出会ったのが、アガーでした。同じ海藻由来でも原料や性質が違うので、寒天とは食感がまったく異なります。どちらかというと、食感はゼラチンのほうが近い、ふるっとしたやわらかさ。ここからまた、割合を少しずつ変えながら試して、ようやく「これだな」と思えるバランスにたどり着きました。いまお出ししているのは、そのときにたどりついたレシピです。

春先になると、若芽のよもぎを摘んで、白玉にします。粉末を使ったり、葉を仕入れることもできるけれど、MAMEHICOでは自分たちの手で摘んだものを使います。手間だけを考えれば、買ってしまうほうがずっと簡単です。それでも、わざわざ摘みに行くのはなぜか。
よもぎは、どれでも同じではありません。注意して見てみると、葉っぱのかたさがひとつひとつ違います。ごわごわした葉は使わず、ふわっとやわらかいものだけを選ぶ。そして、葉先だけを摘みます。そうすることで、繊維の多い茎が入らず、なめらかなペーストになり、えぐみが出ずに、よもぎのやさしい香りだけが残ります。
よく「トリカブトと似ていて危なくないですか?」と聞かれるのですが(笑)、よもぎの葉には細かい切れ込みがあって、裏には白い綿毛がびっしり生えているのが特徴です。実際に見て、さわって、香ってみる。その場で「これはいい」と思ったものだけを摘む。その感覚ごと、お客さまに届けたいと思っています。どこで育ったのか、どんな場所に生えているのか。日当たりや、まわりの環境によっても、香りや状態はまったく違います。自分たちの目と手を通したものだけを使うこと。それが、そのまま品質につながっていると考えています。
そしてもうひとつ。よもぎにも、旬があります。ぐんと背が伸びてきたら、もうおしまい。葉がかたくなり、アクが強くなってくるからです。また来年の春まで待ちます。だから、たくさんはつくれません。その年、その時期に摘めた分だけ。少しだけ手間をかけて、少しだけ自然の都合に合わせる。そうしてできた白玉は、その年ごとの味わいになります。

コロナ禍の前までは、北海道に「ハタケマメヒコ」と呼んでいる畑があり、スタッフとお客さんで一緒に、種を蒔くところから黒豆や小豆などの豆を育てていました。毎月のように遠足に出かけて、畑仕事をするのです。
収穫した豆は、そのまま使うのではなく、よい豆と傷んだ豆とを選り分けます。これがなかなか地道な作業で、お店の営業の合間にはやりきれないこともあります。そんなとき、「手伝うよ」と声をかけてくれたお客さんがいて、そこから「豆より隊」が生まれました。その後、いろんなおてつ隊が増えていきます。そんな時間が、いまのメンバーシップのかたちにもつながっています。
黒豆をきっかけに、人が集まり、関係ができていく。種まきから、お客さまのもとへ届くまで。クロカンは、そんな背景ごとお出ししているデザートです。

クロカンは、MAMEHICOの定番のデザートです。季節のパフェやケーキのように、大きく姿を変えることはありません。
けれど、黒豆の炊き方や甘さの加減、寒天の固さや食感、量や盛りつけ。そういった細かなところは、日々見直しを重ねています。 変わらないように見えて、少しずつ整え続けている。だからこそ、いつ食べても「ああ、これだ」と思える味になっていくのだと思います。
ちょうどいいと思っていたものも、状況が変われば、また見直すことがあるかもしれません。当たり前に続けてきたことも、一度ほどいて、もう一度組み立て直す。それは、MAMEHICOを続けていく中でやっていることと、どこか似ています。クロカンもまた、その延長にあるようなデザートです。

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