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ランドパワー

昨今の飲食店を見ていると、タッチパネルでの注文が、当たり前になってきましたね。うちはというと、カトラリーレストを置いて、カトラリーを並べて、水も丁寧に注いで回る。周りからすれば「変な店」に映っているかもしれない。

でも、なぜ多くの店が合理化を進めるのか。コストが削れるから、売上が伸びるから、というよりも、ボクはもうひとつの理由があると思っているんです。株主や上から「合理的にやれ」と言われたとき、タッチパネルを「導入しない」と言い切れる思想がないから、ではないかと。

今日はその「思想」の正体を、ランドパワーとシーパワーという話から考えてみたいと思います。

地政学の言葉を借りると、「シーパワー」というのは海の論理です。移動する、流動するということですね。典型はイギリス。土地は貧しく、資源もない。だったら船で出て行って、あるところから持ってきて加工して売ればいい。特定の場所に根を張らず、儲かるところへ、自分から動いていく。ヒトへの義理も、場所への愛着も、この論理の中では「摩擦」でしかない。

このシーパワーの論理が、いまの大手チェーン店の中に当然あるわけです。コンビニのお弁当がどこでも同じなのは、土地の違いを反映すると、管理が複雑になってコストが上がるから。土地の記憶を消して均一化する。均一化するからスケールできる。スケールするから、安くなり、広がり、普遍になる。これがグローバル資本主義の論理だと、ボクは思っているんです。さっきのタッチパネルも、結局はこの流れの中にあるんですね。

一方の「ランドパワー」は、陸の論理です。どこかに定着して、そこに蓄積していく。同じ土地で同じヒトと関係を積み重ねて、時間をかけてきたものが力になる。広く浅くではなく、狭く深く。移動ではなく、深さで勝負する発想です。

ボク自身、気質としてはシーパワー寄りなんです。どこかに定着するより、風の吹くまま動いていたい。地元の地主や商店街のヒトと付き合い続けるのは、正直あまり得意ではない。でも店を作るということは、そういうことなんですよね。三軒茶屋に店を構えたら、痛くても痒くても、ずっとそこにいなければいけない。そしてやり続けた20年で、MAMEHICOがボクに教えてくれたのは、流動の論理ではなく、定着して深く関わることの中にある、大切なものだったんです。

だからいまは、神戸・御影にしても、桐生にしても、「その場所」を設計の中心に置くようにしています。一見さんを広く相手にするより、深く関わる垂直方向の人間関係を育てていく店を、やろうと。そう考えると、最初の話に戻れるんですよ。タッチパネルを「入れない」と言い切れるのは、ボクが意地を張っているからじゃない。定着して深く関わるというランドパワーの思想が、ボクの中にあるからなんですね。

ここで少し視点を引いて、世界のほうを見てみます。いま、世界規模でランドパワーの復活が起きている、と感じるんです。ブリックスの台頭、ロシアや中国やインドの進歩、アメリカやイギリスの凋落。これも、シーパワーとランドパワーの転換として読み解けば、ひとつの文脈で見えてくるものがある。

ただ、ランドパワー的なものには大きな弱点もあって、それは閉鎖性なんですね。定着して蓄積するのは強みだけれど、外部の刺激や新しい思想を受け入れにくい。囲い込んだ内側だけよければいい、というナショナリズムに陥りやすい。これは世界規模でも、ひとつの店でも、同じ罠なんです。

だからボクが考えているのは、スモールでローカル、だけれどオープンでコネクテッド、という在り方です。「スロック」と呼んでいますが、要するにランドパワーの強さを持ちながら、シーパワー的な流動性や開かれた進歩性を生かせないか、ということ。来るものは拒まず、去るものは追わず。開かれた共同体、というものが必要なんじゃないかと思っています。

そしてMAMEHICOがやっていることも、そのベクトルの中にあるんじゃないかと、ボクはひそかに思っているわけです。

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6/14(日) 10:00〜 / 15:00〜 神戸
6/16(火) 10:30〜 三軒茶屋
7/14(火) 10:30〜 三軒茶屋
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