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「こうあるべき」を脱ぎ捨てて
三人兄弟の長女として生まれた私は、幼い頃から「お姉ちゃんであること」を自然に求められてきました。
妹や弟を導くために、しっかりしなければいけない。怒られてはいけない。うまくやらなきゃ。いい娘でいなくては。
そんな思いは、疑うことのない当たり前として、私の中に深く根を下ろしていったように思います。
鎧をまとい続けて
結婚してからは、良き妻、従順な嫁。そして子どもが生まれてからは、いい母であること。働く母としても、落ち度がないように。
誰かに強く求められたわけではありません。
私は自分で自分にいくつもの役割を課し、そのたびに「こうあるべき」という鎧をまとってきました。
若い頃は、その鎧の重さも苦ではありませんでした。
むしろ、自分を成長させてくれるものだと、前向きに受け止めていたくらいです。
実際、仕事も子育ても、なんとかやってきました。

けれど、年を重ねるにつれて、少しずつ状況が変わっていきました。
子どもたちは成長し、義理の両親を見送り、働く環境も変わる。そしてコロナ禍。
仕事では、リモートワークになったことで、やったことを時系列ですべて報告するよう求められることもありました。
家にいても仕事の管理をされているような感覚があり、息苦しさを感じていたのだと思います。
家庭でも仕事でも、ずっと何かを引き受けてきた。
そんな毎日の中で、以前と同じようには動けなくなっている自分がいました。
自分のための時間をつくる
そんな頃、私は毎週土曜日の朝、三宮にあるスタジオへ通うようになりました。
朝7時半から9時まで。1回500円で、グランドピアノを弾くことができる場所です。
家にもピアノはあるのですが、なかなか弾かない。
だから、わざわざ出かけて弾くことにしました。
子どもたちの朝ごはんさえ用意しておけば、朝の時間は自分に使えます。

その頃はベリーダンスも習っていて、練習のために使っていたスタジオでピアノも弾けると知ったのがきっかけでした。
最初から何かを変えようと思っていたわけではありません。
ただ、少し発散したかった。自分のために何かをする時間が欲しかったのだと思います。
その後、もう一度ピアノを習いたいと思い、先生を探しました。
習い始めてみると、ただ曲を弾くだけでなく、曲をつくったり、アレンジしたり、人と一緒に演奏したりすることが自分に向いていると気づきました。
そして、MAMEHICOと出会います。
ライブを聴きに来たことがきっかけで、イベントに参加するようになり、井川さんとの会話から、ピアノを弾く機会も生まれました。
自分のために始めたことが、思いがけず、人とつながり、新しい経験につながっていったのです。
振り返ってみると、あの頃の私に必要だったのは、何か大きな決断をすることではなく、自分の好きなことに時間を使うことだったのかもしれません。
家族の物語と、私の物語
自分の時間を持つようになり、私はこれまでの自分や、家族との関係を見つめ直すようになりました。
私はずっと、家族のために自分を後回しにすることが当たり前だと思っていたのです。
家族が困らないように。家族がうまくいくように。
自分ができることは、できるだけやっておこう。
それは、家族を大切に思っていたからこそです。
でも、いつの間にか、家族のことを自分が引き受けすぎていたのかもしれません。

家族一人ひとりには、それぞれの人生があります。
夫には夫の、子どもたちには子どもたちの物語がある。そして私にも、私自身の物語がある。
同じ時間を共有し、同じ家族として暮らしていても、それぞれの物語は並行して流れているのです。
私は家族の物語の中に自分を重ねることで、自分の人生を生きているつもりになっていたのかもしれません。
家族のためにできることをする。それ自体が悪いわけではありません。
ただ、相手の人生まで自分が背負おうとすることは、もしかしたら相手にとっても重さになる。
そんなことにも、ようやく気づき始めました。
鎧を置いてみる
これまで自分を守り、支えてくれていた鎧も、いつの間にか自分を締めつけるものになっていたのだと思います。
だからといって、これまでの生き方を否定したいわけではありません。
家族のために頑張ってきたことも、仕事に打ち込んできたことも、今の自分につながっています。
ただ、これからは自分のために時間を使ってもいい。好きなことに心を向けてもいい。そう思うようになりました。

MAMEHICOで過ごす時間にも、そんな気づきがあります。
お店のお手伝いやイベントへの参加を通して感じたのは、これまで背負ってきた役割とは違う、ただの私としてそこにいることの軽やかさでした。
誰かの期待に応えなければいけないわけでも、何かを成し遂げなければいけないわけでもない。
自分がやってみたいことをやってみる。
自分の興味のままに人と関わり、好きなことを楽しむ。
そんな時間が、久しぶりに心地よいと感じました。
まるで、新しい自分に出会い直していくような感覚でした。
「こうでなければならない」という思い込みは、知らないうちに自分だけでなく、周りの人まで縛ってしまうことがあります。
だからこそ、これからは自分にも、家族にも、それぞれの人生があることを忘れずにいたい。
私は私の物語を生きていく。
そう思えるようになったことで、自分にも、大切な人たちにも、以前よりやさしいまなざしを向けられるようになった気がしています。











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