春の山歩き│2026年4月
今回の「暦の手帖」は、春の気配がふくらみはじめた芦屋の山を歩きました。
ロケ日は三月下旬。当初は「岡本の梅がいいんじゃないか」「芦屋川の桜もきれいだろう」と井川さんと話していました。
ところが、実際にロケハンへ出かけてみると、梅はもう終わり、桜にはまだ早い。
ちょうど花の端境期でした。
そこで急遽、芦屋ロックガーデンを歩き、冬から春へ目を覚ましはじめた山を撮る台本へと変わりました。
春を探しに行ったら、まさかの山登り
今回は井川さんが東京から来てくれましたが、東京から参加するのは井川さん一人。
音声を担当するみゆきをはじめ、ほかの技術スタッフは御影店のメンバーという新しい体制で臨みました。
さらに、一谷さんのお嬢さんのアキちゃんも、お子さんを保育所に預け、有給まで取って荷物持ちとして駆けつけてくれました。
重い機材を抱えて山に入るロケだったので、本当に助かりました。
歩き始めると、赤い実を残したアオキや、花ごと地面に落ちるヤブツバキが目に入ります。
梅も桜も咲いていない時期ですが、山には山の春がありました。
一谷さんは、落ちているツバキを見つけては「お皿に水を張って浮かべたら、まだ飾れる」と拾っていきます。
アオキの実や枝も持ち帰り、後日、MAMEHICOで実際に生けてもらいました。
高座の滝を越えると、いよいよロックガーデンです。
名前だけ聞くと、きれいに整備された庭のようですが、実際は思っていた以上の急勾配。場所によっては鎖を握り、岩に足を掛けて登る、ほとんどロッククライミングのような道でした。
カメラや三脚、音声機材を抱えながら必死に登っていると、すれ違う登山客から「その荷物で大丈夫ですか」と心配されたほどです。
当初は、高座の滝から風吹岩、雄池、雌池、保久良神社を経由してMAMEHICOへ戻るルートを考えていました。
しかし、撮影しながら重い機材を運ぶため、想定以上に時間がかかります。
地図の位置情報と日没時刻をにらみながら進みましたが、このままでは山の中で日が暮れてしまう。
結局、風吹岩に着く前に、井川さんの英断で引き返すことになりました(笑)。
絶景の先に、春を見つけた
今回、最も大変だったのが、岩場の先にあるビューポイントでの撮影です。
井川さんは一人で別の崖に登り、望遠レンズで一谷さんを狙います。
僕はハンディカメラを抱え、一谷さんと一緒に岩を登る。
みゆきも、ワイヤレスマイクの電波が届く距離を保ちながら、後を追って登りました。
これまでのロケで一番過酷な場面でしたが、岩の上に立つ一谷さんの向こうには、神戸から大阪、遠く紀伊半島まで広がる景色がありました。
五、六年前に一度見て以来、忘れられなかったというその景色を前に、一谷さんは「来れた」と本当にうれしそうでした。
その表情も含めて、今回一番好きな場面です。
そして驚いたのが、井川さんの体力です。
帰り道では僕を気遣って、重い三脚を持ってくれました。
それを抱えたまま、急勾配の岩場をひょいひょいと下っていく。
一度、ヒヤッとする場面もありましたけど(笑)。
もちろん、一谷さんも相変わらずの体力です。
最近ではすっかり撮影にも慣れ、登山客から「あの女優さん、誰やろ」とひそひそ話されることもしばしば。
いい感じに仕上がってきました。
梅も桜もないからこそ、アセビやコバノミツバツツジ、ふくらみはじめた芽に目が向く。
予定していた場所まで行けなかったからこそ、岩場の上で出会えた景色が強く心に残る。
花の端境期から始まった今回のロケは、春は満開の花だけにあるのではないと気づかせてくれました。
そして何より、御影から少し足を延ばしただけで、こんなに素晴らしく、こんなに過酷な山道があることを知りました。
次に訪れるときは、カメラも三脚も持たず、普通のハイキングとして歩きたいと思います。








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