御影の夏を歩く│2025年8月
リベンジするもまたボツ
こんにちは。MAMEHICO神戸・御影店長のシゲです。
「暦の手帖」の二作目は、一作目の反省を生かして、今度こそ僕たちだけで撮れるはずだと思って始まりました。台本は井川さんが書いてくれています。舞台は、MAMEHICO神戸・御影のある御影の町。いつも店に季節の花を生けてくださっている「紫水」の一谷美智子さんと、夏の御影を歩きます。
一作目では、大雨のなか、紫陽花ばかりを撮っていました。今回は町並みも一谷さんの姿も、前よりはいろいろ撮ったつもりでした。さすがに今回は大丈夫だろう、と素材を井川さんへ送ったのですが、返ってきた答えは、またしても完全にボツです。
乗り込んできた井川さんたち
それで、ついに井川さんが東京から御影へやって来ることになりました。しかも一人ではありません。これまで井川さんの映像作品(とくに連ドラ)を長く一緒につくってきたMAMEHICO映像部のスタッフのチカちゃんとうっちーさんも、撮影するために駆けつけてくれたのです。
皆そもそもさんはプロの映像スタッフではなく、今も昔もMAMEHICOのお客さんですが、井川さんに鍛えられて、もう立派なプロスタッフです。井川さんに頼まれたとはいえ、わさわざ僕たちを助けるために、新幹線代まで自腹で来てくれました。ありがたい話ですが、よく考えると、なかなかの大ごとです(笑)。
再度撮影に参加してみて
撮り直しの日が来ました。そこでまず度肝を抜かれたのが1stカットでした。御影ガーデンシティを出ると、夏の強い日差しと、にぎやかなセミの声が一気に押し寄せます。その夏らしさに、一谷さんが思わず「わあ」と声を上げる。
御影の夏の空気を、光と音だけで一瞬のうちに伝えながら、一谷さんの素直でチャーミングな一面まで映している。最初の一場面から、自分たちだけで撮った映像とは、まるで違っていました。
完成した作品は、地域の情報番組というより、一本の短い映画のようでした。御影石の石垣、若宮八幡宮、旧乾邸、水車、阿弥陀堂をめぐりながら、季節の草花と一谷さんの人柄、御影の歴史や、かつてのひとびとの暮らしまでが、静かにつながっていきます。
場所の名前や歴史を説明するテロップもありません。情報を次々と伝えるのではなく、映像と音を見せて、あとは受け手がどう感じるか。その余白まで含めて設計されていました。
お花の先生が出るから花を映す。御影の名所を順番に紹介する。そんな単純な構成ではないのです。季節とひとと歴史を重ねて、見慣れた町をもう一度見直すきっかけをつくる。「暦の手帖」が目指しているものを、二作目にして初めて実感した気がします。
井川さんの徹底した力技
驚いたのは、東京にいる井川さんが、撮影の前から御影のことを徹底的に調べていたことでした。Googleマップのストリートビューを駆使して、遠隔でロケハンまでしていたのです。
僕はといえば、御影で店をやって、毎日のようにこの町を歩いています。それなのに、町に水車がいくつも回っていたことや、御影を含む灘目一帯が、かつて素麺の一大産地だったことを、ほとんど知りませんでした。東京にいる井川さんのほうが、御影のことを知っている。これは、なかなか衝撃でした。
撮影の技術についても、ずいぶん教わりました。カメラを横に振るパンや、被写体と一緒に動くドリー。井川さんが実際にカメラを持って、どう撮れば場面がつながるのかを見せてくれます。
僕は背が高いので、普通にハンディカメラを構えると、どうしても目線が高くなります。「目線が高い」と撮影中に散々注意され、完成した映像のほうは、井川さんが編集でどうにかしてくれたそうです(笑)。
一谷さんの体力たるや
この日は真夏の暑さのなか、朝から一日中、御影の坂道を歩き続けました。僕は最後にはヘトヘトでしたが、一谷さんは文句ひとつ言いません。道端の草花を見つけるたびに足を止めて、最後まで楽しそうに歩いていました。花の知識だけでなく、あの体力もすごい方です。
完成した映像は、きれいなだけではなく、とにかく内容が濃い。御影をこういう視点で紹介した作品は、ほかにあまりないように思います。僕にとっても、御影の歴史や伝統を改めて知って、地域の魅力を見つけ直す機会になりました。
視点が変わった
そして、ロケハンの大切さも初めて実感しました。台本からどんな視点を持って、それをどう映像へ落とし込むのか。そこには経験や技術があるのでしょうが、それだけではないような気もします。
普段から、ひとや町をどう見ているのか。何を感じて、何を大切にして生きているのか。カメラを向けたときに映るものは、撮り手がそれまで何を見てきたかと、無関係ではないのだと思います。
一作目では、4Kのカメラを持って紫陽花ばかり撮っていた僕が、二作目では、一谷さんの人柄や御影の歴史をどう映すのかを考えるようになりました。そのきっかけをつくってくれたのは、東京から急に駆けつけてくれた井川さんと、自腹で新幹線に乗って撮影を助けてくれたMAMEHICOのお客さんたちでした。





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