失われた30年

失われた30年、って言いますよね。日本の経済が、ずっと停滞してきた30年です。給料が上がらない。物の値段も上がらない。銀行に預けても、ちっとも増えない。なんとなく、国全体が元気がない。そういう30年でした。
ボクは、経済の専門家じゃありません。株もやらないし。でも、店を21年やってきて、世の中のお金の流れというものが、肌でなんとなくわかるようになってきた。景気がいいとか悪いとか、そういうのは、店に立っていると、数字を見るより先に、お客さんの財布の緩み方でわかるんです。
で、このあいだ、ふと思ったんです。あの失われた30年って、そもそも、いつから始まったんだろう、と。それで、AIに聞いてみたんです。最近、ボクは、なんでもAIに聞くようになりました。AIには、立場も面子もない。わからないことを、わからないと言っても、恥ずかしくない。何度でも聞き返せる。これが、なかなかいいんです。
失われた30年は、いつ始まったのか。そう聞いたら、AIは、こう返してきました。多くのヒトは、バブルが弾けたときからだと考えています、と。
1990年です。年明けから株が下がり始めて、その年のうちに、日経平均が半分近くになった。翌91年には、土地の値段も下がり始めた。だから90年から数えて、失われた30年。これが、いちばん一般的な見方です、と。ボクも、そう思っていました。誰に聞いても、たぶん、そう答える。
ところが、AIは、続けてこう言ったんです。ただ、日本経済の仕組みそのものが壊れ始めたのは、1996年からだ、という見方もあります、と。
これ、ボクには新鮮でした。90年じゃなくて、96年。6年もずれている。もちろん、これが唯一の正解、というわけじゃないんです。起点をどこに置くかは、諸説ある。でも、96年から、という見方には、なるほど、と思わせるものがありました。どういうことか、詳しく聞いてみたんです。
そうしたら、こう説明してくれた。株が下がった。土地が下がった。でもそれは、値段が下がっただけのことなんです、と。高すぎたものが、元に戻っただけ。風船が、パンパンに膨らんでいたのが、ちょうどいい大きさに萎んだだけ。風船そのものは、まだ破れていなかった。
日本の仕組みそのもの、つまり、銀行があって、会社があって、終身雇用があって、新卒で入った会社に定年までいる。そういう骨組みは、90年の時点では、まだちゃんと生きていたんです。株で大損したヒトは、たくさんいた。でも、会社は潰れない。銀行も潰れない。みんな、それだけは信じていられた。土地や株の値段が下がっても、明日、自分の勤め先が消えてなくなるなんてことは、誰も思っていなかった。
その、いちばん大事な骨組みが、ミシミシと音を立てて壊れ始めたのが、96年からなんだ、と。AIは、そう言うわけです。
言われてみると、たしかにそうなんです。ボクは経済の数字はわからないけれど、その頃の空気は覚えている。90年、91年は、まだ、どこかで、そのうち戻るだろう、という感じがあった。悪い夢を見ているけど、目が覚めれば元通り、みたいな。それが、96年、97年あたりから、様子が変わった。あ、これは、戻らないやつだ、と。世の中の空気が、はっきり変わったんです。
なぜ96年なのか。その年に、いったい何が起きたのか。AIは、いくつもの出来事を並べて教えてくれました。それを聞いていくと、あの30年の入口が、くっきりと見えてくる。それが、ちょっと怖いくらいなんです。
その話を、次にしようと思います。実は、その96年という年は、ボク自身にとっても、忘れられない年でして。その話も、少しすることになりそうです。

何気ない言葉の中に、ふと立ち止まるきっかけがあります。
今はまさに、仕組みそのものが変わって、壊れて、また作り直される時代。
ぜひ一度、耳を傾けてみてください。








コメント 0
コメントを投稿するには ログイン してください。