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火曜の一皿/モヤモヤ食堂/井川さんのタダヒコ/MAL

道端の草から、

手仕事が始まる。

蔓かご編み

今井たみこ

06

宝の山は、すぐそばに

川沿いや雑木林、畑の隅。わたしはいつも、何か編めるものはないかと、つい地面や草むらに目を向けています。

わたしが夢中になっているのは、蔓(つる)で籠(かご)を編むこと。
素材となる蔓も、自分で刈ってきます。

宝の山に見える

自由気ままに生えている蔓。
放っておけば町全体を埋め尽くしてしまうんじゃないか!?と思うほどの生命力で、ごちゃごちゃに絡まり、藪と化した葛(くず)の蔓なんて、わたしには「宝の山」にしか見えません。

見つけると、つい立ち止まってしまいます。
あれを刈ったら、どんな籠が編めるだろう。
そう考えると、もう刈りたくて、編みたくて、そわそわしてしまうのです。

❀わたしが草を編むきっかけとなった、しめ縄作りの様子です

草刈りや庭の手入れをしているときも、蔓を見つけると、つい「これ、刈らせてもらっていいですか?」と聞いてしまいます。
ほかの人にとっては、邪魔な草や片づけるものでも、わたしにとっては大事な材料です。
太くて立派な蔓を見つけた日には、もううれしくて仕方ありません。

以前、三田の古い家の草刈りを頼まれたことがありました。
そこで見つけたのが、たくさんのアケビの蔓です。
これは使える!と、草刈りそっちのけで夢中になって刈り集めました。
気がつけば一日仕事。蔓を束にして、家まで持ち帰りました。

❀葛の蔓(つる)を採集中

ほかの人から見れば、片づけるべき草や蔓なのかもしれません。
でも、わたしには、これでどんな籠が編めるだろうと想像するだけで楽しいのです。

籠になるまで

もちろん、刈ってきたらすぐに編めるわけではありません。
まずは一か月ほど乾かします。
乾いた蔓は、ほこりや泥を落としてから水に浸し、編む準備をします。
お風呂場で洗うこともあるのですが、そうするとお風呂が泥だらけになってしまいます。笑

自然の蔓は、一本一本違います。
まっすぐなものもあれば、曲がったものもあります。
太いもの、細いもの、硬いもの、しなやかなもの。
それぞれの形や具合を見ながら、どこにどう使おうかと考えるのも楽しみのひとつです。

❀アケビの蔓を見つけてうれしくて編んだ籠。こちらも超適当

母も籠を編んでいた

わたしが中学生だった頃、母が藤の籠作りを熱心に習って、たくさん作っていました。
自分が蔓で籠を編み始めてから、「そういえば…」と、記憶がふっと蘇ってきました。

母は、大きな洗濯籠のようなものから、食卓に置くみかんを入れるような小さなもの、持ち手のついたものまで、いろいろな籠を作っていました。
次から次へと作るので、見飽きるほどでした。

❀底の編み方がわかって、レパートリーも増えた。ますます楽しい

でも、当時のわたしは何の興味も湧かなくて、たいした感想も言ってあげていませんでした。
今思えば、もう少し褒めてあげればよかったなあ、と思います。
それに、今のわたしだったら、柿渋でも塗って、ちょっとおしゃれに仕上げたりできただろうに。そんなことも思います。

まあ、母にしてみれば、娘が何十年も経ってから同じようなことを始めるなんて、思いもしなかったでしょう。

草があれば編みたくなる

それにしても、どうしてわたしは、こんなに草や蔓を編みたくなったのでしょう。
きっかけは、三年前にしめ縄の作り方を習ったことだったと思います。

稲わらを手に取り、撚(よ)って、編んでいく。
たったそれだけのことなのに、手を動かしていると、なんともいえず楽しいのです。
それから、草や蔓を見つけると、何か作れないだろうかと考えるようになりました。

❀ちいさなしめ縄の箸置きです

人間はそもそも、草や蔓があれば編みたくなる生き物なのかもしれません。
遠いご先祖様のことを想像してみます。
採ってきた果物や木の実、魚介などを入れておく便利なものが欲しくなったとき、最初は大きな葉っぱで包んだだけだったかもしれません。
でも、葉っぱを裂いたものや蔓をちょっと編んでみたら、何かを入れられるものができた!
「おお、これは便利だ!」と、小躍りしたに違いありません。

もちろん、そんな場面を見たわけではありません。わたしの勝手な想像です。
けれど、そうやって誰かが草を編み始め、長い長い時間をかけて、いろいろな編み方や形が生まれてきたのだとしたら、なんだかすごいことだと思います。

お店に行けば、かごなんていくらでも売っています。
安くて丈夫で、きれいなものがたくさんあります。
それなのに、わざわざ藪に分け入り、蔓を刈って、持ち帰り、乾かして、洗って、自分で編むのです。ずいぶんと手間のかかることをしています。

❀自立する籠が作りたくて、底の作り方を習った。ちゃんと立ってくれて感動

最近は、小さな籠を作ることも多くなりました。コップくらいの大きさの籠です。
小さいものなら簡単そうに思えるかもしれませんが、実は小さい籠のほうが難しいのです。
細かなところまで手を入れなくてはいけないし、蔓の具合を見ながら、少しずつ形を整えていきます。

思い描いたとおりにいかないこともあります。
でも、そこも含めて、手仕事のおもしろさなのだと思います。

草や蔓に呼ばれて

もしかすると、わたしは籠を編むことだけが好きなのではないのかもしれません。
そこらへんに生えている草や蔓を見つけて、刈り取って、手を動かして、何かに変えていく。その一連の時間が好きなのです。

人間が昔から続けてきたことを、今、自分も夢中になってやっている。
そう思うと、なんだか不思議な気持ちになります。

蔓を見ると、わたしの細胞がくすぐられます。
どうしてなのかは、よくわかりません。

ただ、道端に蔓が絡まっていると、つい足が止まります。
ああ、あれを刈ったら、どんな籠が編めるだろう。
そう考えながら、今日もわたしは、宝の山を探しています。

❀はじめて本を見ながら編んだ籠