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つくることは、

暮らしの中に

ずっとあった。

精進料理

山崎由香

05

季節と手を動かして

私は、手を動かして何かをつくることが好きです。
料理やお菓子作りの中でも、特に旬の野菜を使った料理が好きです。

旬のものを使って料理やお菓子作りをしていると、清々しく、元気が出ます。
また私にとって、料理やお菓子作りはアートでもあります。

台所と手仕事の記憶

子供時代は、料理とお菓子作りが得意な母の横で、日々のごはんはもちろん、お菓子、パン、季節の行事にちなんだ料理、梅干し作り、ぶどうジュース作りなど、季節の手仕事を自然に手伝って育ちました。

今思えば、特別なことをしているという感覚はなく、季節がくれば梅を漬け、ぶどうがあればジュースにする。
母の横で一緒に手を動かしながら、つくることを覚えていったのだと思います。

そんなふうに、子供のころから何かをつくることが好きでした。
料理だけでなく、手を動かして形になっていくものなら、なんでも面白かったのだと思います。

❀カナリア諸島のラパルマ島でのワークショップ。現地で手に入る食材で作った精進料理。

母は料理やお菓子作りは得意でしたが、手芸は大の苦手。
そんな母とは反対に、私は手芸にも興味を持つようになりました。
編み物教室をしていた仲良しの友人のお母さんから、編み物やお裁縫を教えてもらい、すっかりのめりこんでいきました。

中学生くらいからは、自分一人でお菓子をつくるようになりました。
材料を混ぜたり、焼いたりしながら、「次はこうしてみよう」と試すことも好きでした。
本格的に料理をするようになったのは、社会人になって一人暮らしを始めてからです。

食べる楽しみを失って

海外旅行のたびに、帰国すると現地の名物料理を再現し、もう一つの趣味であるバレエの友人を招いてはパーティーを開いていました。
旅行先で食べた料理を思い出しながら、材料を探してつくってみる。
その時間もまた、私にとっては料理の楽しみのひとつでした。

特に北欧が好きな我が家は、北欧の食器や雑貨も少しずつ増え、いつしか「ムーミン屋敷」と呼ばれるようになりました。
人を招いて、一緒に食べたり飲んだりすることが好きな家だったのだと思います。

❀バレエの友人達のために作ったバレエ弁当。テーマは海賊。海と花園のイメージです。

しかし、昔から敏感な体質だった私は、一時期体調を崩し、食生活から乳製品、卵、小麦、大豆、昆布、砂糖を除去しなくてはならない時期がありました。

パンやケーキに囲まれて育った私にとって、好きなものを自由に食べられないことは、思っていた以上につらいことでした。
友人との食事や外食も難しくなり、それまで当たり前だった「みんなで食べる」という楽しみからも、少し遠ざかってしまいました。

今でこそグルテンフリーやアレルギー対応のお店は少し増えましたが、当時は選択肢も少なく、外食をすること自体がとても困難でした。

つくることが、また楽しくなった

小麦以外は半年ほどでほぼ克服したものの、その経験をきっかけに、乳製品、卵、小麦を使わないお菓子や料理に興味を持つようになりました。

食べられないものがあるなら、食べられるものを自分でつくってみよう。
そんな気持ちで、会社勤めをしながら、朝早くから日々あれこれと試作していました。

❀会社に勤めながら朝6時から蒸しパン研究。当初は米粉と野菜の蒸しパン屋さんをめざしていました。でもこの夢は温めすぎてまだ実現していません。

小麦を使わずに、どうしたらふんわりしたケーキがつくれるのか。
卵を使わずに、どうしたらおいしいお菓子になるのか。材料を変えてみたり、配合を変えてみたり。
うまくいかないこともありましたが、試していくうちに、少しずつ自分なりのつくり方が見えてくるのが楽しくなりました。

同時に、薬膳やマクロビオティックの教室にも通い、薬ではなく、日々の食事で身体を整えることを学びました。
ただ身体によいだけではなく、おいしくて、楽しくて、また食べたくなるものをつくりたい。
そんなことを考えながら、料理やお菓子をつくるようになりました。

❀アーティストの友人が描く世界をイメージして、ヴィーガン&グルテンフリースイーツプレートを作りました。フェアリーパーティー。
❀フェアリーパーティーで私のお菓子を素敵な絵画にして頂き感激。

食事制限がきっかけではありましたが、そこから「つくること」の面白さをあらためて知ったのだと思います。
この「つくること」は、今でも私の好きなことのひとつ。
そして今では、仕事にもなりました。

好きなことが、誰かのためになる

食事制限があった時に助けてくださった方々への感謝。
そして、私も同じ境遇の人のためになりたいという思いから、飲食店でヴィーガン料理やお菓子作りの経験を積みました。

実際にお店で料理をつくる中で、食事制限がある人のための料理だからといって、「我慢して食べるもの」にはしたくない。
食事制限があってもなくても、同じ食卓を囲んで、おいしいね、と言いながら食べられるものをつくりたい。
そんな思いが、少しずつ今の活動につながっていきました。

❀七夕の精進料理教室の一皿。生徒さんの提案でみんなの天野川を並べてみました。

その後、時々Pop-upやマルシェに出店しながら、精進料理をベースにした料理教室を開催するようになりました。
「Yuka’s Forest Kitchen」という、精進料理にしては少しカジュアルな屋号で活動していますが、そこには私がこの道にたどり着くまでの思いがこもっています。

料理教室では、料理そのものをつくるだけでなく、みんなで手を動かし、できあがったものを一緒に食べる時間も大切にしています。自分でつくったものを誰かと囲むと、それだけで食卓が少し楽しくなる。
今は、食事制限がある人もない人も一緒に楽しめる食事やお菓子の開発に励みながら、お客様と楽しい食卓を囲む時間を過ごしています。

❀グルテンフリー精進料理教室の定番メニュー。ドイツからきたフード・フォトグラファー のお客様が撮影してくれました。

振り返ってみると、子供時代から、料理も、お菓子も、編み物も、お裁縫も、ずっと手を動かしてきました。
何かをつくっているときは、試したり、失敗したり、工夫したりすることも含めて楽しい。
その時間が、昔からずっと好きなのだと思います。