三茶と神戸にて桃寒天パフェ始まりました。

毎年夏の人気メニューです。お早めにどうぞ。

美しい文字の奥に

人の温度がある

カリグラフィー

玉井亜里彩

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手から生まれる文字

 一枚の席札が、私を導いた

みなさん、「カリグラフィー」をご存知でしょうか。英語の「calligraphy」の通り、いわゆる西洋書道を指します。

私がカリグラフィーに出会ったのは4年前。趣味として始めたのは、2023年の夏でした。きっかけは、自身の結婚式で使う披露宴のペーパーアイテムを探していた時のことです。

SNSで目に飛び込んできた海外ウェディングの写真。その中に写っていた席札の美しい文字に、私は心を奪われました。

後から、それが人の手によって書かれたものだと知りました。幼い頃から文字を書くことが大好きだった私は、「こんな美しい文字を、自分の手でも書いてみたい」と強く思ったのです。

けれど当時は、多忙な会社員生活に加えて、コロナ禍の真っ只中。挑戦する機会を逃したまま1年が過ぎようとしていた頃、日本モダンカリグラフィー主催の定期レッスン募集を知り、すぐに申し込みました。1年半の学びを経て、レッスンなどを実施できる指導資格を取得。現在は個人での活動を視野に入れながら、準備を進めています。

❀大好きなラルフローレンをテーマにした卒業制作の一部

ぺンとインクに向き合う時間

カリグラフィーと一括りに言っても、書く書体はローマンキャピタル体やゴシック体、イタリック体など、さまざまです。私が最初に習ったのは「モダンカリグラフィー」と呼ばれるもので、「カッパープレート体」を自分のスタイルで書いていくというものでした。

「自分のスタイルで」とはいえ、まず必要なのは基礎を固め、安定した書き方を身につけることです。オブリークホルダーと呼ばれるペン軸に、ペン先となるニブを差し込み、インクをつけて文字を書く。そこから始まり、基本のストロークを何度も繰り返し練習しながら、アルファベットを一文字ずつ学んでいきます。

❀ペンホルダーやインクなど、愛用している道具たち

角度のついたペン先を扱い、初めは筆圧の加減も分からないところからのスタートでした。それでも、思い通りにインクが紙に乗り、文字を書くことができた瞬間の楽しさは、今でも覚えています。

「できなかったことが、できるようになる」

大人になってから、そんなシンプルな喜びを味わえることも、カリグラフィーの魅力のひとつではないでしょうか。

文字を書くことで、心がほどけていく

カリグラフィーを始めてから、文字と向き合う時間は、瞑想にも近いものだと感じるようになりました。一画一画に神経を研ぎ澄ませて集中していると、いつの間にか「無」になっている自分がいます。

仕事がどれだけ激務でも、カリグラフィーに向き合う時間だけは夢中になれる。休日に時間を見つけ、静かにペンを動かす。社会人になってから初めて、何も考えずに没頭できる、静かな幸せを感じました。

そして、もう一つ大きな気づきがありました。それは、「いつの時代も、人の手で生まれたものは美しく、温かく、優しい」ということです。

もしAIが進化し、人間と同じような文字を再現できるようになったとしても、不思議と不安はありません。なぜなら、人の手仕事のぬくもりは、人の心でしか感じられないものだと信じているからです。

時間や労力、そして純粋な思いをかけて作られたものには、自然と心を奪われます。心の奥にある凝り固まったものが、少しずつほぐれていくような感覚があります。

想いを届ける、一文字

先日、初めて知人の結婚披露宴の席札を筆耕する機会があり、約30名のお名前を書かせていただきました。これは、これからの私の原点になる経験になったと思っています。

お二人にとって大切な方々のお名前を、代理で書かせていただくこと。当日の会場やドレス、お花の雰囲気を伺いながら、それに相応しいペーパーアイテムを考えること。そのひとつひとつが、とても新鮮で嬉しい時間でした。

❀知人の結婚披露宴の席札

カリグラフィーの魅力は、紙やインクの世界だけにとどまりません。ウェディングの席札だけではなく、手紙やカード、ラッピング、名入れなど、想いを伝えるさまざまな場面で生かされています。

相手を思いながら選ぶ、世界にひとつだけの形。そんな形で誰かの大切な時間に関われることも、カリグラフィーの魅力だと思います。

また、文字を書く対象は紙だけではありません。道具を工夫すれば、布や木、アクリルなどの異素材にも施すことができ、ペイントやエングレービングなど、可能性は今も広がっています。

❀キャンバス生地の小物にイニシャルをペイントし、オリジナル仕様に

これから育てていく、私の手仕事

この春、会社を退職し、カリグラフィーを職業としていきたいという気持ちが、一層強くなりました。ライフワークとして、年齢を重ねても長く大切に育てていきたいと思っています。

また、カリグラフィーの原点を学びたいという思いから、現在は新たに二つの書体の勉強にも取り組んでいます。先生方は技量面では雲の上のような存在ですが、それだけではなく、人としても目標にしたいと思える方ばかりです。そして、ともに学ぶ多才な仲間にも恵まれています。

❀ローマンキャピタル体をまずは鉛筆で反復練習

美しい文字への入り口は、紙とペンとインクがあれば、いつでも、誰でも、どこからでも始めることができます。

これからは関西近郊で、初心者の方に向けたワークショップなども開催していく予定です。文字を書く楽しさや、手を動かすことで生まれる静かな時間を、たくさんの方と分かち合えたら嬉しいです。