04
MAMEHICOのドライカレー
MAMEHICOのカレーの特徴

- トモ
- MAMEHICOのカレーを初めて頼んだ時にびっくりされるのは、やっぱり野菜なんだよ。
- みさき
- たしかに。いろんな野菜が来る。すごいよね。
- トモ
- ポテトサラダに、にんじんのラペ、ナス、トマト、それにグリーン。
- みさき
- 確かに半分以上、3分の2は野菜だよね。
- トモ
- 野菜だよ。
ドライカレーが運ばれてくる。
皿を見て声をあげるみさき。
- みさき
- 来た、ありがとうございます。すごい、ほんとに3分の2くらいある。
- みさき
- これ、乗ってるスパイスは何?
- トモ
- ああ、それはホアジャオ。中国山椒。
麻婆とか担々麺にかかってる、あの中国の山椒。
それがアクセントになってて、このカレーの特徴だね。
- みさき
- 久しぶりに食べる。これが噂の山椒か。
- トモ
- 今日はナスを炒め煮して、冷やしてからミョウガと和えてる。
- みさき
- さっぱりしてて夏らしいね。
- トモ
- ちなみに、このポテトサラダに大豆が入ってるのは三茶店だけ。
- みさき
- え、なんで?
- トモ
- あと、にんじんにツナが入ってるのも三茶店だけか。
- みさき
- なんで。特別。面白い。
カレーもすごいし、ご飯が玄米なんだよね。
……言いたいことがいろいろある。情報量がマジで多い。

脂っぽくない理由
- みさき
- ホアジャオの香りがするよ。カレーなんだけど麻婆豆腐みたいな感じ。
- トモ
- でしょうね。
- みさき
- そして脂っぽくないよね。
- トモ
- だと思う。
- みさき
- キーマカレーって、ひき肉だから結構脂っこいのが多くない?
- トモ
- そう。お肉屋さんに脂を多くしないでと、井川さんが指定して頼んでるから。
- みさき
- そうなの?
- トモ
- ひき肉っていう肉はなくて、脂が多ければ白いし、肉の部分が多いと赤い。そういうことを井川さんは、ものすごくうるさい。だからスーパーでひき肉っていう買い方はしなくて、肉屋さんに何対何で、挽き方はあら挽きか、一度挽きか、2度挽きかで指定してる。
- みさき
- そういうのはわかるね。

- トモ
- それと、植物油もキャノーラ油とかは使わないで、国産の菜種油を圧搾した、薬を使わずにちゃんと絞ったものしか使わない。
- みさき
- 菜種から抽出した純粋な油なんだね。
サラダ油って、工業的に菜種を薬につけて溶かして作るんだってね…。
- トモ
- そう。そういう油だともたれるとか、あるよね。
- みさき
- そうなんだ。
- トモ
- 抽出方法が違う。MAMEHICOは全部ちゃんと絞られた油を選んで使ってる。でもこれはねお料理するヒトならわかると思うけど、高いんだよ。だからまとめて一斗缶で取って、使う分だけ小分けにしてつかってる。
- みさき
- 体にスルスルって入るね。
ルーの骨格になってるお野菜も甘みがあって美味しい。
- トモ
- そう、玉ねぎ、にんじん、セロリの3種類の甘みがするよね。これはイタリア料理では「ソフリット」と呼ばれてて、ほんとに骨格なんだよ。
にんじんがちゃんと甘くなるまで強火で炒める。
弱火は絶対ダメ、グズグズのポタージュみたいになっちゃう。

- みさき
- でも大変でしょ?
- トモ
- そうだね、そのためには、最初の野菜のみじん切りの具合でほぼ決まるところがあって。
- みさき
- なるほど。
- トモ
- 細かすぎると水分が出すぎてビショビショになる。いつまでもフライパンから湯気が消えない。時間もかかる。
でも粗すぎると、今度は、食感がボリボリしたりするし。
一口にカレーを作ると言っても、まずみじん切りの大きさを揃える。
その粗みじんを揃えるのが美味しさだね。
- みさき
- すごい。そこか。
- トモ
- たとえばにんじんは火を入れても水分が少ないから、ちょっと細かめがいい。
玉ねぎは細かすぎると、びしょびしょのジュースみたいになる。だからきちんと角のあるみじん切りに。

火加減という永遠のテーマ
- トモ
- 火力より水が出てくるスピードの方が早いと、水分が飛ばないじゃん。
水を飛ばしたいのに飛ばないぐらいの火力で炒め続けると、ぐじょぐじょの煮物になっちゃう。
だから、火がいつも優勢じゃないとっていう。
- みさき
- それもまた大変。加減が。
- トモ
- フライパンの大きさに対して、仕込む量が違うと味変わるからね。みんな炒めてる間に、他の接客したりもするわけじゃない。
- みさき
- そうだよね、忙しいもんね。
- トモ
- 目を離してると、焦げたり、煮物が出来上がったりしてしまう。すると、あのお方が怒る怒る。もうちょっと強くしろボケとか、焦げてんだろボケとか。
- みさき
- ボケとかいうの?
- トモ
- いういう。
- みさき
- コンプライアンスとか関係なく?
- トモ
- ないない。コンプライアンスなんて言ってると、この国は滅びるとか言ってるくらいだから。
- みさき
- はあ。
- トモ
- 関係性ができてないヒトには、逆に何にも言わない。インじゃないですか。そういう昭和のヒト。
- みさき
- フフフ。火加減は難しいでしょ。
- トモ
- そう。銀座はIH、ビルのルールでガスが使えなくて、さらに電気容量の問題で、そんなに火力も強くできないから。三茶はガスだから、まるで違う。
- みさき
- 全然違うね。

スパイスの香りを移す
- トモ
- カレーや中華作るときに、私がいつも井川さんに言われるのは、香りを移した油の料理なんだと。大事なのは油。にんにくや生姜も香りを油に移して、それから水を入れて乳化させろと。スパイスも油に香りを移さないとダメだけど、焦がしちゃ絶対ダメ。弱火でフツフツって。
これだけなんだけど、口では言えないことも多くて。
- みさき
- 情報量めっちゃ多いね。30分しゃべれるわ、これは。
- トモ
- 永遠にしゃべれる。一時間くらいいける。
- みさき
- 見くびってた。
- トモ
- そのスパイスの香りを移した油で、ひき肉を炒める。ひき肉は水なんだよ。野菜も水。水を入れたら100度以上いかないから、やっぱりお店ではお金を取るので、きちんと火の料理を出さないとなと思ってる。
- みさき
- へぇー。野菜は別なの?
- トモ
- にんじんと玉ねぎは隣で別に炒めて、最後に合わせるよ。
そこにトマト。
ここもトマト缶を潰したピューレを入れるんだけど、野菜と肉が合わさった鍋に直接入れるんじゃなくて。
- みさき
- どういうこと?
- トモ
- トマト缶って酸味が強くて、そのまま入れると酸っぱいカレーになっちゃう。
だから、スパイスを炒めた方のフライパンで、まずトマト缶をきちんと強火で火を入れる。そうすると酸が飛んで。
酸味だけ残るんじゃなくて、コクが出て酸が飛ぶ。それを合わせる。
- みさき
- へえ。

- トモ
- 油と酸も中和してまろやかにするんだよ。
脂っぽさは酸で中和されて、酸味も脂で中和されて、コクが出る。
- みさき
- コクが出る。科学だね、実験だね。
- トモ
- 仕上げにバターとお醤油で香りづけ。
それはもう香り付けだから、あんまり火を入れないようにしてる。
で、塩加減は最後。
その日の野菜が持ってる水分量とか、炒めてる時の水の飛び具合で調整しなきゃいけない。
- みさき
- 変わるんだ。
- トモ
- 7割ぐらいお塩を入れといて、最後にどのくらい足すかを調整する。
- みさき
- 足す分には足せるもんね。
- トモ
- 引けないけど足せるから。
アイスコーヒーのお砂糖じゃないけど、カレーは塩がきちんと入らないと辛くならない。だからぼんやりしてるのは大抵塩が足らない。
スパイスが弱いなと思ったら、スパイスを入れるな塩を入れろって井川さん。今日のカレー、ちょっとぼんやりしてるなと思って塩を足すと、急にすっきりして、いろんな香りがする。
- みさき
- 面白い。塩すごいんだね。
このつけあわせのナスとルーを合わせて食べても美味しそう。
ナスをひと口。
- みさき
- 噂の通り、爽やか。本当だね。

季節で変わる付け合わせ野菜
- トモ
- MAMEHICOのドライカレーは、季節で付け合せの野菜が変わっていくから。
この間までは新玉ねぎのアチャール、唐辛子とお酢で和えたサラダみたいなのを乗せてたんだけど、新玉ねぎの季節が終わったから今はナス。
生姜とみょうがのオイルで蒸したナス。
- みさき
- 油で蒸す?
- トモ
- 鍋に油をたっぷり入れてナスを入れて蓋をすると、ナス自体が蒸されて火が通る。
- みさき
- くたっとした感じになるんだ。
- トモ
- くたっとして、油でちょっとこんがり香りもする。
生姜の香りを移した油でやってて、味付けはシンプルな塩とお砂糖と、ちょっとだけ醤油の香り。
- みさき
- それが最近加わったんだ。
- トモ
- そう。カレーに添えるお野菜の一品。
脂感はそんなにないんだけど、ナスが油を吸った時の美味しさはある。
- みさき
- 揚げナスみたいなギトッとした感はなくて、ジューシーさが勝ってる。
ポテサラにさ、大豆ってなんで入れたの、これ。
- トモ
- なんでだろうね、だいぶ珍しい。
でもMAMEHICOだから。
昔は豆サラダとか豆カレーとか、お料理にも豆を結構使ってたんだけど、今はあんまりないからっていうのもあるかも。

- みさき
- そうなんだ。思ったより豆の主張が入ってるね。
- トモ
- 結構主張ある。豆とジャガイモの比率が、結構豆かも。
- みさき
- 美味しいね。
でもポテトサラダって感じじゃないね。ポテトサラダってマヨネーズの味が多いけど、そんなに強くない気がする。
- トモ
- お芋の甘さがね。
- みさき
- そうか、ホクホク。
- トモ
- このお芋も、塩加減がヒトによって違って難しかったんだけど、最近は塩の加減を統一することにして。
薄いと美味しくないし、濃すぎるとカレーと食べ合わせるにはしょっぱくなっちゃう。
サラダとして美味しいぐらいの味付けにしちゃうと、カレーと合わなくて。
- みさき
- サラダとしてはちょっと物足りないぐらいのものだと。
- トモ
- このプレートとして、一皿が成り立つっていう。
- みさき
- 奥深いですね。みんな、ポテトサラダとして美味しくしちゃいそう。
- トモ
- でも洋服もそうじゃん、きっと。
- みさき
- そうだね。バランス。
- みさき
- 上着は柔らかめで、小物ををキリッと差し色とかね。
どんなものでもトータルコーディネートがなきゃいけない、バランスが。
- トモ
- そうなの!



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