02
「映え」に逃げんなよ
国産ブルーベリーのパフェ
パフェが運ばれてくる。
パフェの上にはクリームとブルーベリーソース。

- みさき
- あー美味しそう。初めて食べる。
- トモ
- これはもう、ブルーベリーの旬が短いから、ひと月も持たないぐらい。
- みさき
- マジで!?
- トモ
- 国産だから。
- みさき
- へぇー国産。
- トモ
- 今日のは横浜かな。あ、群馬県産のブルーベリーだった。
すごい香りが良くて。農園によって味も香りも違うんだけど。
- みさき
- 外国産のよく売ってるものは、大粒だけど香りしないやつあるもんね。
- トモ
- そう、国産のは香りがいいのよ。
まずは食べてみて。
みさき、パフェを眺める。
- みさき
- いくつか層になってるけど、何が入ってるの?
- トモ
- 一番下は玄米フレークで、その上はブルーベリー。
そしてシャーベット。
ミルクプリン、アイス、ヨーグルト。
そしてブルーベリーソース。
このブルーベリーのソースはお砂糖とブルーベリーを、
ちょっと火にかけただけ。
- みさき
- 美味しい。
これ、ヨーグルトがすごいいい味出してるね。
ヨーグルトとこのブルーベリーの調和がいい。
ミルクプリンとアイスが爽やかだね。
- トモ
- 全部混ぜて、フレークまで混ぜながら食べて。美味しいから。
玄米なんだよね、これ。
- みさき
- コーンじゃないところが、しなしななりにくくていいね。
- トモ
- そうなの。
みさき、パフェを崩して食べ始める。

- みさき
- ああ。うん。美味しい。
正直言うと、パフェってあんまり好きじゃなかったんだよね。
- トモ
- わかる。パフェ嫌いってスタッフも多い。
- みさき
- なんていうか、「映えです」みたいな。
- トモ
- そして甘すぎる。
- みさき
- そう。一個一個!?一層一層!?の主張が強すぎて。
- トモ
- わかりました、ってなるよね笑
- みさき
- 「映えパフェです」わかりました、ってなる。
- トモ
- 「映えパフェ」、韻を踏んでていいね。
- みさき
- ちっちゃいグラスの中に、もういちいち、どうですかー。
しつこいわってなっちゃう。ごめんなさい。
- トモ
- そういう意味で、MAMEHICOのは、
「アンチ映えパフェ」が作ってるから。
- みさき
- 「アンチ映えパフェ」が作るパフェ(笑)
- トモ
- ミルクプリンがあって、ヨーグルトがあって、
バニラアイスがあって。

- みさき
- うん、この白いの全部乳製品。
- トモ
- そう、ぜんぶ白い。だから境目がわからない笑 映えない。
- みさき
- でも全部が混じり合ったところがめっちゃ美味しい。
ミルクプリンもあんまりミルク感が強くないしね。
- トモ
- 「アンチ映えパフェ」のこだわり。
しつこくして、どうすんだよって。
だからか。MAMEHICOのパフェシリーズは、
アンチ映えパフェの方々に気に入っていただいていて、
絶対食べに来てくれる、全制覇してるヒトが結構いるの。
- みさき
- わかる。
みさき食べ進めて。ふと、
- みさき
- ところで「アンチ映えパフェ」って誰?
- トモ
- 、、、、
- みさき
- あのお方?
気まずそうにうつむく、トモ。
- トモ
- (ただ黙って)
- みさき
- 日で始まって、
- トモ
- (耐えかねて思わず)野で終わる。
- みさき
- (笑いだして)やっぱり。

- トモ
- (こちらも大笑い)ほんとめんどくさくて、
果物がちゃんと美味しいかとか、材料が良いか、
グラスに指紋がついてないか、とにかくうるさい。
「映えパフェ」とかに逃げるんじゃねーぞって。
- みさき
- 「映えパフェ」に逃げるんじゃねーぞ(大笑)
- トモ
- 聞いたこと無いでしょ、そのフレーズ。
あのお方、変なとこロックなんで。
- みさき
- でもそういうところがいい。
私もあのお方が推すなら、パフェ苦手だけど食べよっかなってなる。
このブルーベリーもマジ、食べるべきのやつ。大好き。
- トモ
- 伝えとくね。
- みさき
- 今ブラッドオレンジシャーベットに到達したんですけど、
なんか、また違うものが加わったかんじだね。
- トモ
- これもね結構、試作の時にいろいろ試したの。
最初はブルーベリーシャーベットを入れようとしたんだけど、
なんかちがうとなって。
20種類ぐらい試したの。
- みさき
- 美味しい。間にオレンジが挟まることで、だいぶ印象が変わるね。
- トモ
- 酸味、それに苦味があるでしょ。
- みさき
- あるある。めっちゃおいしい。
- トモ
- (急にうつむく)
- みさき
- (それに気づいて)どした?

トモ、モジモジする。
- トモ
- うん。
- みさき
- なに?
- トモ
- (小声で)これも、あのお方から、最近、横槍入ってて。
- みさき
- え。これって?
- トモ
- ブラッドオレンジ。
- みさき
- あーシャーベット。
- トモ
- そのシャーベットってどうなのよ?
- みさき
- 何がだめなの?美味しいよ。
- トモ
- 手作りじゃないところが気に入らないらしく。
- みさき
- え。
- トモ
- このシャーベットもちゃんとしたものなんだよ。
だけど、どうしても手作りじゃないから、
なんか感じ取ってるんだと思う。
- みさき
- 感じ取ってるって?なにを!?
- トモ
- わかんない、たぶん。
- みさき
- たぶん?
- トモ
- 匂いとか?
- みさき
- 匂い。
- トモ
- やっぱり香料とかそういうの入ってるのかなって。
子供の時の風邪シロップの味がするって言い出して(涙ぐむ)
- みさき
- 警察犬かよ。
- トモ
- だからまた変わるかもしれない。
- みさき
- そう、まっ、ひとまずハンカチで涙拭いて。
みさきポケットからハンカチ出す。
- みさき
- トモちゃんもいろいろと大変なんだね。
- トモ
- ごめんね、こんなとこ、見せたくなかったんだけど。
(止まらない涙拭きつつ、つい鼻までかむ)
あっ、ごめん、(ハンカチ見つめて)どうしよう。
- みさき
- いいよ、いいよ(と手を振りつつ、パフェに目を落とすみさき)。

ふたりしんとなる。店内は締め作業の音だけになる。
- トモ
- いろいろ我慢してるところもあって、私も中間管理職だから。
- みさき
- うん。私たちの年ってそんな感じだよね。
でもMAMEHICOって、ほんと細かいことしてんだなって思う。
それってすごい手間だろうなって、
私もクリエイティブな仕事してるからわかるよ。
そこにたどり着くのがすごいし、それがまた面白い。
お客からしたら「なんだこれ」ってなるよ。
「どうやってやってんの」って。
トモ、気を取り直して。
- トモ
- そもそもこの『私たちのメニュー』って企画、
誰にしようかって立ち上げのときに話があってね。
- みさき
- あーうん。
- トモ
- みさきちゃんになった経緯というのがあったの、──聞いてる?
- みさき
- あー、いや。そう、なんで私なのかなって?
- トモ
- いつだか銀座のランチに、みさきちゃん来てもらったじゃない?
- みさき
- あー行った。うん、とっても美味しかった。
- トモ
- そのとき、あのお方に、いろいろと質問したでしょ、みさきちゃん。
- みさき
- (思い出せず)したかな?(少し考えて)あー、したかも。
- トモ
- その質問の内容が、とってもよかったんだって。
あのお方が言うにはよ、
『こやつは絶対食べるのが好きなニンゲンだぞ』。
それでお墨付きとなったの。
- みさき
- なにそれ、──時代劇かよ。
- トモ
- 「食べるの好きなヒトの質問の仕方」って言うのがあるんだって。
- みさき
- 食べるの好きなヒトの質問の仕方(笑)
- トモ
- そう。それで、この対談に選ばれたってわけ。
- みさき
- よかった、食べるの好きなヒトの質問しといて(笑)
- トモ
- 笑っちゃうよね。
- みさき
- 裏話聞きながら、こんないっぱい食べさせてもらって嬉しいよ。

- トモ
- ほんと?そう言ってもらえると私も嬉しい。
今年はストーンフルーツのパフェもやるから、
いい感じのパフェがずっと出てくるんだ。
ストーンフルーツっていうのは、
石のように硬い種を持つ果物の総称ね。
どれも旬が短いから。
「あんず」「プラム」とか種類を限定せず、
ストーンフルーツとしていろいろな果物を楽しんでいただこうと。
- みさき
- なんかこのパフェシリーズは、本当に季節を味わうって感じだね。
- トモ
- ほんとに、その時その時で一瞬なんだよ。
ブルーベリーパフェとストーンフルーツのパフェを並行でやるのも、
どちらも夏の天候で安定しないから、A面、B面、同時に出すという。
- みさき
- なんかMAMEHICOっぽい。すごいね。
- トモ
- うん、頑張る。ハンカチ、洗って返すから。
- みさき
- あー、うん。急がなくていいよ。



あのお方(笑)。 この記事、紙の時代のM=Hicoを思い出す。懐かしい感じ。
先日、神戸メンバーのことみんこと青山琴美さんと一緒に梅レモンパフェを食べたことを思い出しました。 確かあれは6月の終わり。お天気もすっきりせず、蒸し暑い日でした。 でも、梅レモンパフェをひと口食べた瞬間、生き返るような気持ちになったのを覚えています。 そのあとしばらく話題は「映えなんかいらない」でした(笑) 私もパフェはあまり得意ではありません。 でも、MAMEHICOのパフェだけは「もう一つ食べられるかも」と思ってしまうから不思議です。 「あのお方」の徹底したこだわりや、トモちゃんの苦労。パフェの裏側には、たくさんの物語や試行錯誤があるんですね。ロック精神まで混ざっているとは(笑) メニューのお話から、仕事に向き合う姿勢へと自然につながっていくお二人の対談が、とても好きです。 次回も楽しみにしています。