神戸 暦の手帖|お花の先生・一谷さんと春の山歩き

今月の『暦の手帖』は、お花の先生・一谷さんと一緒に、春の気配がふくらみはじめた芦屋の山を歩きます。
冬の終わり、山が少しずつ目を覚ます季節です。
芦屋ロックガーデンから道草を始めます。
歩きはじめてまず目に飛び込んでくるのは、アオキの赤い実。
冬のあいだじゅう山に残っていた、最後の冬の色です。
少し進むと、ヤブツバキ。散るときに花びらではなく、花ごとぽとりと落ちる木。
見上げても赤、足元にも赤、春の山の二つの赤です。
可愛いと思うと、ついつい拾ってしまう。
お皿に水を張って浮かべれば、しばらく素敵に飾れる、そんな小さな道草です。
水音が聞こえてきて、その先に高座の滝。
およそ十メートルの小さな滝ですが、横に建つ護摩堂とあいまって、あたりは静かな緊張に包まれています。
かつて修験者たちが、この滝に打たれて修行をした場所。
今も、その気配が残っているようです。
そこから岩を縫って進むのが、ロックガーデン。
花崗岩が、風と雨に長い年月をかけて削られ、磨かれてできた地形です。
この花崗岩は、マグマが地下深くで、気の遠くなるような長い年月をかけて、ゆっくりと冷え固まってできたもの。
岩と緑が静かに響き合う、まさに、岩の庭です。
枝先には、滝のようにしなって咲くアセビをみつけました。
そして葉より先に紅紫の花をいっせいに開く、コバノミツバツツジ。
冬枯れていた山が、この花でいっぺんに華やぎます。
山全体が、優しい霞みがかかったように、ほわっと色づいて見えるのです。
緑豊かな六甲も、江戸時代までは、伐採と石材採取で、ところどころに草が残るだけのはげ山に近い姿だったと言われています。
いまの緑は、長い年月をかけた地道な植林のたまもの。歩いているこの道の一本一本が、山を甦らせた人々の仕事の跡です。
岩を登り切った先に、ずっと忘れられなかったビューポイント。
神戸の街並みから大阪、遠く紀伊半島までを見渡す、パノラマの景色が広がります。
山を下りて、MAMEHICOに戻ります。
拾ってきた春の枝を、テーブルに並べていきます。
ふくらみはじめた芽、まだ赤いアオキの実。どこに何を置くか、迷いながら、春の輪を組んでいく時間。
仕上げたあとは、温かい一杯とともに、ひと息。
道草を楽しみながら、芦屋から春の山の魅力を、すこしお届けしました。





