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これは、オフキャンバスの後のカスタムコンテンツです。

著者: 井川啓央

フツーの幸せを

桃の節句でした。この日は女の子のお祭りですね。 女の子なら誰でも「他人が羨ましい、いいな」って、思うことがあるはずです。たとえば、顔だったり、お金だったり、運動神経とか?頭の善し悪しとかね。でもね。もしかしたらですよ。みんなが一番羨ましいなって思うのは、こんな女の子じゃないかしらって思います。 「うちのお母さんってね、フフ。どこにでもいるフツーのお母さんだと思ってたんですよ。でも、最近、気づいたん

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過ちを超えて

アメリカの作家で、ネイティブ・インディアンと30年以上にわたって交流し、その文化や哲学を世に知らしめた作家のナンシー・ウッドの代表作『今日は死ぬのにもってこいの日』のなかの一説に、こういうのがあります。 今知っていることのすべてをもっと以前に知っていたならば人生を年寄りとして始めたことだろう、若さを置き去りにすることのほか人生に恐れることなど何もないそう言ってくれた老人にだまされた年寄りとして。そ

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不変と不可避

「珈琲豆の卸値についてご相談が」と札幌の焙煎所からお手紙が届く。「いままでにない高騰でして、現状価格では持ちこたえられません。何卒ご理解を」と結んである。 「あのさ、過去何回、値上げしてきたんだよ。うちだって大変なんだ、そんな値上げは認めらんないよ」、と言いたいところだけど。開店以来のお付き合いだし、そもそも生豆の仕入れ値が上がっているのだから、「あらまぁ仕方ないですね、わかりました。お互い頑張り

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試練を超えて

父は戦中、母は戦後の生まれです。戦後の荒廃から立ち上がり、高度経済成長期と呼ばれるなかで青春を送った二人は、いわゆる団塊と呼ばれる世代で、ボクは団塊ジュニアというわけです。 父は政府系の銀行員、母は専業主婦でしたから、ボクは物質的には不自由なく育ちました。いわゆる「一億総中流」の典型といった家庭で、新型冷蔵庫にカラーテレビ、オートマ自動車、ビデオデッキにカセットコンポ。「豊かさ」の象徴が、またひと

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今、この瞬間を

ボクはおいなりさんよりも、にぎり寿司が好きです。それも、できればカウンターで食べたい。握ってもらったその瞬間に食べてこそ、「ああ、お寿司よ」と思うんですね。この季節になると檸檬ケーキの持ち帰りを頼まれることがあるけれど、基本的にお断りしています。近所のヒトに頼まれたらなんとかしますけど、ボクは檸檬ケーキこそ、その場で食べてほしいんです。あのクリーム、あのパイこそ、今その瞬間に食べてこその美味しさと

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ルールを超えて

「ルールに基づいて社会を統治する」、ボクの記憶では、平成の30年間でそーゆー空気が強くなった気がするわね。企業も法令やコンプライアンスを盾に動いて。対岸の火事。やれやれと思ってました。 ボクはカフェの経営者だし、「コンプラ?関係ない、やりたいヒトはどうぞご自由に」ってスタンスで、気にも留めなかったのね。正社員でそれなりのお給料をもらってるヒトたちは、社会がそうなれば守るほか無いでしょ。正規の社会が

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適当を認める寛大さ

アジアの街は、今じゃどこも経済発展して近代的な街に様変わりしてるけれど、植民地時代や大東亜戦争、ベトナム戦争、朝鮮戦争、激しい闘争の歴史がきれいな町並みの背後に見え隠れしていて。もちろんシンガポールも例外じゃないんです。 大航海時代からイギリスの植民地で、東西を結ぶ貿易の拠点となって、そこに中国からやってきた華僑やらが絡み合って、いまの独特な文化を作り出した。そんなシンガポールを代表する最高級ホテ

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全ての卵を1つのカゴに入れるな

カフエ マメヒコは、三軒茶屋でお店を出しました。20年前の7月のことです。飲食店のアルバイトさえしたことなかったボクが、まさかカフェを始めるなんて思いもよらなかった、というのが本音です。今もって、なんで始めたのか、神のいたずらだったんじゃないか、と思っています。 とはいえ、始めちゃったわけですから、真面目に一生懸命、潰さないようにしなくちゃなと。それでやってみてすぐに、「あっ、これ、一軒だけやって

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vol.38 雨は恵み、風は歌

桐生に通うようになり、紫香邸の庭いじりをしている。土を掻き、石を積み、一年中紫の花が咲くようにと願いを込めて、花壇を作ってみる。去年の春先、剪定した木や枝を庭の隅に積んでおいたら、半年後、それがちゃんと土に変わっていたという経験をして、枯れた植物が新しい命のもとになることがやっと腑に落ちた。頭ではわかっていたけれど、きちんと目の当たりにして、ボクはようやく自然の力を「信じられた」。なんと愚かなんだ

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考えて、考えて

新年あけましておめでとうございます。今年もボクの考えや感じていることを、みなさんにお伝えしていければなと思っています。 昨年もお芝居をはじめ、いろいろな作品制作に関わってきましたが、その中で、準備してたのに残念ながら上演できなかった作品がある。それは「ぽうく」という演劇作品です。「ぽうく」は豚肉のポークから取った名前で、2021年と2023年に再演したもの。この作品、少し不気味で現実離れした寓話で

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明るく生きるコツ

ボクたちの時代は戦争もなく、食べ物にも困らない。死の危機に直面することなんてほとんどない。それなのに、自分から死を選ぶ人も少なくない。んーーーーー。それって、一体なんなんだろうって思う。まぁ、ひとしきり考えてみても、答えはさっぱり出ないんですけど、よくよく考えるんですね。 ボク自身。MAMEHICOを始めてからというもの、片時も「のんびり」なんてことはなかったんです。店を渋谷周辺にいくつも構えてい

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走るな、車に乗れ

いよいよ師走。今年もあっという間に過ぎ去ろうとしてる。ああ。この一年、ボクもMAMEHICOも、いやいや大変な挑戦が続きました。ほんとに、ボクはよくやってるなぁと、ボクはボクを褒めたい。 今年も色々あったけど、中でも福岡・糸島での開店準備は大きかった。だけど、その店舗はオープンしないという前代未聞の珍事に(笑)。あーーーーーー。ずっとやってきたのに、まさか開店しないなんてことあります!?ボクの心は

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