著者: 井川啓央

今、この瞬間を

ボクはおいなりさんよりも、にぎり寿司が好きです。それも、できればカウンターで食べたい。握ってもらったその瞬間に食べてこそ、「ああ、お寿司よ」と思うんですね。この季節になると檸檬ケーキの持ち帰りを頼まれることがあるけれど、基本的にお断りしています。近所のヒトに頼まれたらなんとかしますけど、ボクは檸檬ケーキこそ、その場で食べてほしいんです。あのクリーム、あのパイこそ、今その瞬間に食べてこその美味しさと

つづきを読む

ルールを超えて

「ルールに基づいて社会を統治する」、ボクの記憶では、平成の30年間でそーゆー空気が強くなった気がするわね。企業も法令やコンプライアンスを盾に動いて。対岸の火事。やれやれと思ってました。 ボクはカフェの経営者だし、「コンプラ?関係ない、やりたいヒトはどうぞご自由に」ってスタンスで、気にも留めなかったのね。正社員でそれなりのお給料をもらってるヒトたちは、社会がそうなれば守るほか無いでしょ。正規の社会が

つづきを読む

適当を認める寛大さ

アジアの街は、今じゃどこも経済発展して近代的な街に様変わりしてるけれど、植民地時代や大東亜戦争、ベトナム戦争、朝鮮戦争、激しい闘争の歴史がきれいな町並みの背後に見え隠れしていて。もちろんシンガポールも例外じゃないんです。 大航海時代からイギリスの植民地で、東西を結ぶ貿易の拠点となって、そこに中国からやってきた華僑やらが絡み合って、いまの独特な文化を作り出した。そんなシンガポールを代表する最高級ホテ

つづきを読む

全ての卵を1つのカゴに入れるな

カフエ マメヒコは、三軒茶屋でお店を出しました。20年前の7月のことです。飲食店のアルバイトさえしたことなかったボクが、まさかカフェを始めるなんて思いもよらなかった、というのが本音です。今もって、なんで始めたのか、神のいたずらだったんじゃないか、と思っています。 とはいえ、始めちゃったわけですから、真面目に一生懸命、潰さないようにしなくちゃなと。それでやってみてすぐに、「あっ、これ、一軒だけやって

つづきを読む

vol.38 雨は恵み、風は歌

桐生に通うようになり、紫香邸の庭いじりをしている。土を掻き、石を積み、一年中紫の花が咲くようにと願いを込めて、花壇を作ってみる。去年の春先、剪定した木や枝を庭の隅に積んでおいたら、半年後、それがちゃんと土に変わっていたという経験をして、枯れた植物が新しい命のもとになることがやっと腑に落ちた。頭ではわかっていたけれど、きちんと目の当たりにして、ボクはようやく自然の力を「信じられた」。なんと愚かなんだ

つづきを読む

代表が語る、MAMEHICOのこれから

カフエ マメヒコは、2005年に三軒茶屋、その後、渋谷にオープンしました。それから18年。東日本大震災、渋谷の再開発、コロナ禍を経て、渋谷のマメヒコは閉店し、2022年9月、メンバーシップ制のイベントカフェ「MAMEHICO」を銀座、神戸と二店同時にオープンしました。あらゆるものを理性と理屈でコントロールしようとする社会に、「もっと自由に、面白可笑しく生きよう」というメッセージを、様々な活動を通じ

つづきを読む