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トウモロコシとメンバーシップ制

北海道ではトウキビと言ったりしますが、夏になるとよく食べますよね、トウモロコシ。

最近もスタッフの子が、お友達の農園から大量に取り寄せてくれて、連日食べています。ボクも北海道の畑MAMEHICOでトウモロコシを作っていた経験があるので、この植物については割と詳しいんですよ。トウモロコシはイネ科の植物で、いわゆる穀物です。小麦、お米、トウモロコシが世界の三大穀物と言われていて、痩せた土地でも育つ優秀な作物です。最近の品種は皮が薄くて、生でも食べられるくらい甘いのが主流になっていますが、皮が薄くて甘いということは、それだけアブラムシがつきやすいということでもある。だから無農薬で作るのは、今の品種だと非常に難しい。ボクらも無農薬でやっていて、皮を剥いたら中に虫がいた、なんてことがあって、お客さんに随分不快な思いをさせた経験もあります。ちなみにボクが好きなのは八列とうきびという在来種で、皮が硬くてポップコーンみたいな香ばしい味がするやつです。

さて、本題です。このトウモロコシという植物、実はかなり変わった花の作りをしています。植物の花には大きく2種類あって、ひとつは、ひとつの花の中にオシベとメシベが両方入っているタイプ。これが、みんなが花と聞いてイメージするものです。もうひとつは、ウリ科やイチョウのように、オバナとメバナが別々に分かれているタイプ。トウモロコシは後者なんですが、これがまた面白い。上にふわふわっと伸びているのがオバナで、脇からトウモロコシの実になる部分がメバナなんですけど、この2つ、同じ株の中にありながら、花粉をつけるタイミングがズレるんです。オバナが咲いて花粉を出す頃には、その株自身のメバナはまだできていない。つまり、自分の花粉では受粉しないように、あらかじめ仕組まれている。

だからトウモロコシは1本だけ植えても実がなりません。まわりに何本も植えて、よその株の花粉をもらって、初めて受粉する。わざと違う遺伝子を取り込むことで、自分たちの種を強くする戦略を取っているわけです。人間で言えば近親婚を避けるのと同じで、植物も、自分の個体だけで完結すると弱くなるということを、ちゃんと知っているんですね。

これ、メンバーシップ制の話ともつながると思うんですよ。

飲食店というのはとにかく儲からない商売でしてね。できるだけヒトを雇いたくない、というのが業界の一般的な傾向です。夫婦2人だけ、家族だけでやっている店が多いのもそのためです。カフェなんかは特に儲からないから、限られたスタッフ、それこそ社員2人にあとはアルバイト、みたいな形で回すことになる。そうすると、21年やってきた経験から言えるんですが、どうしてもヒトと交流しなくなっていく。新しいスタッフが入っても、感覚的なことが伝えづらい。「もうちょっとポテッとなるまで泡立てて」と言っても、受け手のイメージとズレていれば、それはポテじゃなくてボソボソだよ、みたいなことになる。そうすると結局、その感覚がわかるヒトたちだけでやろうとしてしまう。その方が早いし、ストレスも少ないから。こうして、飲食店はどんどんクローズドなコミュニティになっていきがちなんです。

ボクはこれをずっと打破したいと思っていました。とはいえ、給料を上げていろんなヒトを雇う、ということが簡単にできるわけでもない。そこで考えたのが、MAMEHICOという植物の中に、お客さんという遺伝子を組み込めないかということでした。たとえば、昨日行ったら白玉が少し粉っぽかったよ、なんて言ってくれるお客さんがいる。関係性ができているからこそ、言いたくないけどちょっと生っぽかったよ、と言ってくれる。それを言ってくれるということ自体が、お客さんの遺伝子がMAMEHICOの中に入ってくるということです。そうすると、スタッフの中で気をつけようという話になるだけじゃなくて、言ってくれてありがとう、という関係が生まれる。お客さんの側も、自分の言ったことをちゃんと受け止めてもらえて嬉しい、と思う。これが、お店の中の遺伝子組み換えになっていく。長く続けるコツのひとつは、そこにあるんじゃないかとボクは思うんです。

これはどこかのコミュニティで学んだというより、畑でトウモロコシを育てているときに気づいたことです。オバナとメバナを時間差でずらすことで、自分たちだけで完結しないようにする。クローズドなものはどうしたって先細っていく。だから、いろんなヒトを取り入れていったほうがいい、とボクなんかは単純に思ってしまうんですけど。ただ、そのときに大事なのは、今いるヒトたちを傷つけてまで新しいヒトを入れる必要はない、ということでもある。その攻め合い、そのバランスをどう取るかが、常に経営者やリーダーの手腕なんじゃないかなと思います。

「天才よち丸ラジオ」のご視聴はこちら
MAMEHICO代表・井川さんのラジオです。
何気ない言葉の中に、ふと立ち止まるきっかけがあります。
お店の中の遺伝子組み換えって何?
ぜひ一度、耳を傾けてみてください。
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