09

美味しくなった 紫陽花ケーキ

みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野沙織です。
今日も「紫陽花ケーキ」のお話です。MAMEHICOのメニューのなかでも、クロカン、檸檬ケーキに次ぐ古株です。
老舗的存在のケーキなので、お話ししたいことがたくさんあります。笑

今年が、いちばんおいしい。

今年の紫陽花ケーキを食べながら、何度も思いました。
「今年が、いままででいちばんおいしい。」
毎年、少しずつ研究や見直しはしています。でも、今年だけ特別なレシピに変えたわけではありません。
なのに、スポンジは軽く、バタークリームの口どけもいい。
なんだか違う。その理由が、先日ようやくわかりました。
でも、その話をする前に、まずは紫陽花ケーキのことを少し。

映画から生まれたケーキ

紫陽花ケーキは、今年で14年目。
もともとは、2012年に制作した映画『紫陽花とバタークリーム』の小道具として生まれました。
映画では、赤い紫陽花と青い紫陽花、二つの意味を持たせたかったので、実はケーキも二種類作っていたんです。
赤はフランボワーズ、青はブルーベリーを使ったバタークリーム。
ところが、ブルーベリーのアントシアニンが卵と反応して、スポンジとクリームの間が緑色になってしまったんです。
最初は「ちょっと色が変わるんだな」くらいに思っていたのですが、お客さんから「これ、カビてませんか?」と言われてしまいまして。笑
調べてみると、ちゃんと理由があったんですね。
泣く泣くブルーベリーはやめて、フランボワーズだけが残ることになりました。
でも、いま思えば、それでよかったんだと思います。
フランボワーズの酸味が、このケーキの印象をぐっと強くしてくれた気がします。

この季節だからこそ。

紫陽花ケーキが毎年この時期に登場するのは、梅雨だから…だけではありません。
実はこの時期、季節のフルーツが少なく、ケーキを考えるには悩ましい季節なんです。
だからこそ、毎年この時期になると紫陽花ケーキが登場します。
14年続いているのは、見た目のかわいさだけじゃない。
ちゃんと、この季節の居場所があるケーキなんです。

毎年、少しずつ育っています。

見た目はほとんど変わりません。
でも、スポンジの焼き方やバタークリームの作り方は、毎年少しずつ見直しています。
「去年より、もう少しおいしく。」
そんな積み重ねを続けてきました。
だから14年前と同じケーキではあるけれど、14年前と同じ味ではありません。
それでも今年は、「なんだか違う」と思ったんです。

答えは、たぬきでした。

その理由は、井川さんと話している途中で、突然わかりました。
「あっ、たぬきケーキだ!」
バレンタインの時期に作っていた、たぬきケーキ。
ココアパウダー入りの別立てスポンジは膨らませるのが難しいのです。
そして、バタークリームも使っています。

始めたばかりの去年は、本当に苦戦しました。笑
去年の冬にたぬきケーキで苦戦し、初夏に紫陽花ケーキを作り、今年のバレンタインでも、またたぬきケーキを作る。
そうやって繰り返してきたことで、知らないうちにみんなの基礎体力が上がっていました。
スポンジも、バタークリームも、最初からいい状態で作れるようになっていたんです。
紫陽花ケーキをおいしくしようと思ってがんばったわけではないのに(おいしくしようとは思っていますが。笑)、別のケーキで積み重ねたことが、巡り巡って紫陽花ケーキを育ててくれていました。
話しながらそのことに気づいた瞬間、「あっ!」と全部つながった気がしました。
去年の苦戦も、毎日の積み重ねも、ちゃんと意味があったんだなぁと思ったら、なんだか胸が熱くなりました。

続けてきたからこその、おいしさ。

ひとつのことだけをやっていても、見えなかった景色があります。
回り道をしたように思えたことが、あとになって思いがけないかたちでつながる。
そんなことって、ほんとうにあるんだなぁ。まさに、セレンディピティ。

今年の紫陽花ケーキを食べながら、「なんだか今年は違うな」と感じていた理由が、ようやくわかりました。
14年続けてきた紫陽花ケーキ。
そのおいしさを、陰で支えてくれていたのは、まさかの「たぬきケーキ」でした。
そんな裏話も思い出しながら、今年の紫陽花ケーキを味わっていただけたらうれしいです。