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三茶と神戸でお届け中。今季最後の贅沢をどうぞ

登っている途中

飯塚 友美2026年09月28日

ここ最近、若いスタッフの子で、どうも自信を失っている子がいます。
一生懸命やっているのですが、やればやるほど失敗して、そのたびに注意される。注意されたことを直そうとすると、今度は別のところで失敗する。

本人としては、こんなに頑張っているのに、どうしてうまくいかないんだろう。そんな気持ちなのかもしれません。
こういう時期って、誰にでもあるものです。

でも、私は、そういう時こそ、実は一番成長している時期なんじゃないかなと思っています。
スタッフにもよく話すのですが、山を一生懸命登っているときって、自分の中では、確実に登っている実感があるものです。

昨日より少し高いところまで来た。前はできなかったことが、今日は少しできるようになった。前だったら気づかなかったことに、気づけるようになった。
ほんの少しずつだけれど、自分では、確かに前に進んでいることがわかる。でも、それって、周りの人にはなかなかわからないんですよね。

むしろ、登れば登るほど疲れた顔をしていたり、何度も転ぶ姿を見かけたり。本人は必死に登っているのに、周りからすると、どうも上手くいっていない印象のほうが強い。
「また同じところで失敗している」「いつになったらできるようになるんだろう」なんて、そんなふうに思われてしまうことだってあります。

しかも、本人も、周りからそういう目で見られていることを、なんとなく感じ取っている。だから、余計に焦るんですよね。

早くできるようにならなくちゃ。次こそ失敗しないようにしなくちゃ。
そう思えば思うほど、体も頭も硬くなって、普段だったらしないような失敗までしてしまう。なんとも苦しい時期です。

でも、そういう時に必要なのは、とにかく自分が自分を励ますことだと思います。
どんなに周りから厳しい目を向けられても、「大丈夫。昨日よりは良くなってるよ。大丈夫、大丈夫」って。笑
だって、その坂道を登っていることを実感できるのは、自分しかいないのだから。

周りの人は、目に見える結果で判断します。
昨日よりどれだけ頑張ったのか、何を考えて、どこで悩んで、どんなことが少しずつわかるようになったのか。そんなことまで、いちいち見てくれているわけではありません。
だから、周りの評価だけを頼りにしていると、いつまでたっても自信が持てなくなってしまいます。

自分で自分の小さな変化に気づいてあげること。
昨日はできなかったけれど、今日はできた。今日は失敗したけれど、昨日とは違うところまで進めた。
そういうことを、自分自身がちゃんと認めてあげないと、長い坂道なんて、なかなか登り切れないと思うんです。

そして、その坂道には、ちゃんと終わりがあります。
長い坂道を登り切ると、ふっと平地に出る。すると、急に景色が変わるんです。

今まであんなに大変だったことが、いつの間にか、当たり前のようにできるようになっている。
あんなに考え込んでいたことも、いちいち考えなくても、自然と体が動くようになっている。
仕事って、そういう瞬間があるんですよね。

そして、不思議なことに、そうやって平地を歩き始めた頃に、ようやく周りの評価もついてきます。
正確には、安定して一定のクオリティを出せるようになった頃に、周りの目が変わるんです。

「あれ、最近できるようになったね」「ずいぶん仕事が早くなったね」なんて、急に言われたりする。
でも、本人からすると、そこに至るまでに、ずいぶん長い坂道を登ってきたわけです。
周りからは、ある日突然できるようになったように見えても、本人にとっては、毎日毎日、少しずつ積み重ねてきた結果なんですよね。

そして、しばらく平地を歩いていると、また、その先に次の山が見えてくる。今度は、前よりも少し大きな山だったりする。
せっかく楽になったと思ったのに、また登るのかぁ……。笑
でも、そうやって山を登ったり、平地を歩いたりしながら、少しずつできることが増えていくのだと思います。

さて。
今、悩みに悩んでいるそのスタッフを見ていると、やっぱり私も、「もっとしゃきっとやりなさい!」と、お尻を叩きたくなるときがあります。
というか、実際に叩いていることもあります。笑

お店の仕事ですから、本人が一生懸命やっているというだけでは、どうにもならないこともあります。
お客さんは待っているし、ほかのスタッフだって、それぞれ自分の仕事を抱えている。
いつまでも失敗していていいわけではないし、できるようになってもらわなくては困る。
だから、注意するべきことは注意するし、もう少し頑張ってほしいと思うこともあります。

でも、ふと、思うんです。
「ああ、これは、傍から見ると上手くいっていないように見えるけれど、実は登っている最中なんだろうなぁ」と。

自分だって、山を登っている最中は、そんなに格好のいい姿ではなかったはずです。
必死になって、何度も転んで、周りからはちっとも成長していないように見えていた時期もあったと思います。
そう考えると、目の前で失敗を繰り返しているスタッフのことも、少し違った目で見られるようになります。

もちろん、だからといって、何も言わずに見守っていればいいというわけでもありません。
必要なときには注意するし、手を貸すこともある。でも、代わりに山を登ってあげることはできないんですよね。
どんなに周りが励ましても、最後は本人が、自分の足で登っていくしかない。
そして、登っている最中の自分を一番信じてあげられるのも、結局は自分自身なのだと思います。

今、あの子が登っているのは、どのくらいの大きさの山なんだろう。
あと少しで平地に出るのか。それとも、まだまだ長い坂道が続いているのか。
そんなことを、ちょっと想像しながら、近くで見ています。