11月からの銀座店は曜日ごとに表情が変わります

初日は11/3 「火曜の一皿」ご予約お待ちしています

まずは型、その先に自主性

飯塚 友美2026年10月27日

風邪をひいて、熱は下がったのに、咳だけがなかなか止まらない。
できれば薬に頼らず、自然に治るのを待ちたいところです。
でも、咳が続けば、それだけで体力を消耗してしまう。
そんなときは、根本的な原因を治すこととは別に、ひとまず咳を和らげることも必要になります。

最近、仕事を教えることも、これと似ているんだなぁ、と思うようになりました。

本当は、トライアンドエラーを繰り返しながら、本人が自分で気づくまで待ちたい。
自分の頭で考え、実際にやってみて、失敗して。
そうやって、自分の体と心で納得したことでないと、本当の意味で身についたことにはならないと思うからです。

でも、店の現場では、そうもいきません。
本人が気づくまで待っている間の失敗を、お客さんにまで負担してもらうわけにはいかないからです。

もちろん、みんな、いいお店にしたいとは思っているでしょう。
でも、そもそも「いいお店」とは何なのか。
それがわからなければ、何をどう頑張ったらいいのかもわかりません。

自分だったら、いいお店を知るために、いろいろ出かけます。
ちょっと背伸びをして高級なお店に行くこともあれば、真夜中のファストフード店に、わざと行ってみたこともありました。

そうやって、いろいろなお店を見ていると、「あぁ、これは真似したいな」と思うこともあれば、「これは自分たちのお店ではやりたくないな」と思うこともある。
その積み重ねで、自分の中に少しずつ「いいお店」の判断基準ができていくんです。

だから、スタッフにも「もっといろんなお店に行って、勉強してね」と伝えます。
でも、考えてみれば、みんなが私と同じように行動するわけではありません。
そう言われたからといって、すぐに勉強に出かけるスタッフは、ごくわずかだと思います。

考えてみれば当たり前のことなのですが、これまでの私は、どこかで本人の自主性に任せていたところがありました。
そのうち必要性に気づいて、自分から動き出すだろう。
本人のお尻に火がつくまで、待っていたんですね。

でも、今日も明日もお店を開けている以上、いつまでも待っているわけにはいきません。

だったら、まずはこちらが「いいお店とは、こういうことだよ」と、具体的に示していかなければならない。
だから、どこの企業にも、マニュアルや仕事の「型」があるのでしょう。

例えば、
メニューを出すときに、どう声をかけるのか。
キッチンの盛り付けは、どうあるべきか。
店内を、どんな状態に整えておくのか……。

そういう一つひとつのことを、まずは具体的な形にして伝える。
最初は、なぜそうするのか、意味を十分に理解できていなくても、まずは決められたやり方を身につける。

以前の私は、そんなふうに形だけ覚えたって、中身が伴わなければ意味がない、と思っているところがありました。
でも、まずは形を整えることも必要なんだと、ここ最近、ようやくわかってきました。

型があることで、お店として一定の仕事の質を守ることができる。
そして、まずはその型を繰り返すうちに、なぜそうするのか、少しずつ意味がわかってくることもあるでしょう。

もちろん、言われた通りにやるだけの人になってほしいわけではありません。
いずれは自分で考えて、判断できるようになってほしい。

でも、自主性を育てることと、自主性に任せきりにすることは、違うんですよね。

自分で考えて気づくことと、まずは型を身につけること。
長い目で人を育てることと、目の前のお店の質を守ること。

どちらも大切だからこそ、どうやってその型を伝えていけばいいのか。
そして、型を教えながらも、本人が自分で考える力を、どう育てていけばいいのか。

そんなことを考えている、今日この頃です。