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過剰な自意識に果たし状を
お芝居を始めて5年が経つ。
試しに1回だけっていう好奇心で始めたが、なぜだかずっと続けてる。
ぼくにとってお芝居は、好都合な遊び道具だ。
なにしろ練習しなくたってできる。
ピアノを弾くには、楽譜の読み方を学ばなきゃいけない。
ダンスを踊るには、ステップを学ばなきゃいけない。
茶の道に進むには、茶を立てるしきたりを学ばなきゃいけない。
お芝居は学ばなくたってできる。
ヒトがヒトを演ればいいだけだから。
早く走れなくても、ボールをまっすぐ投げられなくてもいい。
セリフが決まってる分、口下手なヒトにとっては、日常生活より楽かもしれない。
小学校の頃、伴奏者がかっこいいと思い、クラシックピアノを習い始めた。
初日に渡された楽譜が、「ドレドレドレドレドー」だけだったため、嫌になってすぐやめた。
そんな曲ねぇだろ。
そんな調子で、ありとあらゆる習い事に飽きてきたぼくが、今も続けられているのは、クソつまらないバイエルやらブルグミュラーをやらないでも楽しめるからだ。
MAMEHICOに入門して、初日から台本がもらえた。
ちゃんと「エリーゼのために」あたりからスタートがきれる。

ところが、これは半分くらいぼくの思い違いだった。
MAMEHICO、というか井川啓央独特の指導方法だったらしい。
後で知ったのだが、多くの劇団やスクールでは、発声練習とか短音、長音、体の向きとか、そういった基礎訓練から入るようだ。
ぼくが今参加している、他劇団の稽古でもちゃんとやってる。
毎回、基礎訓練から入るので、ちょっとめんどくさい。
20年お芝居やってます。
子役やってました。
みたいな大ベテランの方とご一緒することがある。
たいへん興味深いのが、そのようなヒトたちが上手かというと全くそんなことはないところだ。
経験豊富な方に限って、なんとも不自然な芝居をすることがある。
声はよく通るし、パキパキっと動きはかっこいいのだけど、なんかぎこちない。
一方で、初体験です!がんばります!みたいなヒトが、異様に印象的なお芝居をしたりする。
ここがお芝居の醍醐味でもあり、残酷なところだ。

お芝居とはつまり「ヒト」なので、変に気を張ったり、練習した成果を出そうとしたり、実力を見せようとすると、自然さが損なわれて逆効果になる。
「お前はノイジーなやつだ。音を出せ、出し続けろ。まだ足りない、もっと出せ」
初めてMAMEHICOの稽古に参加した日、井川さんにそう言われた。
全く意味がわからなかった。
そもそもノイジーなやつ、って言われたのも初めてだし。
ぼくが無自覚にノイジーであるように、ヒトには特性ってものがあって、テクニックをつけすぎると、特性が隠れてしまうことが多い。
MAMEHICOが基礎練に走らないのは、特性を活かすことを大事にしてるからだと思う。
おかげでぼくはいまだノイジーなままなのだが。
島田紳助が「漫才師は稽古をしすぎてはいけない」と言ってた。
染みつきすぎてしまうと、ライブ感が損なわれてしまうからだ。
ライブ(=生もの)であることが大事。
これは舞台の上だけの話じゃない。
ヒトも場も同じだ。
お客さんが見ている前で、「自然に存在する」。
それが難しいので、多くの演者は基礎機能を強化させて、演技をテクニカルにしてるのかもしれない。

えてみると、普段の生活だって全くおんなじだ。
・親の目。
・上司や同僚の目。
・通行人の目。
他者の目の中で、いかにして自然に居られるか。
「自意識過剰」という言葉があるが、ほとんどのヒトは、自意識という防衛本能を働かせすぎている。
ぼくも例外じゃない。
元々ぼくは、こういったブログを書いて晒すことにものすごく抵抗があった。
下手な文章だとか、
恥ずかしいやつだとか、
たかだか5年しか芝居をしてないヒトが何を偉そうに語っているんだとか、
そのような他者の目を想定して、怖くてひとめに晒すことができなかった。
しかしぼくは本来、ひとめに晒したいヒトだ。
晒し合って分かち合いたい。
過剰な自意識が、ぼくを守ってくれるどころか、免疫異常のように自らに攻撃を加えていたのだと思う。
自然であることは勇気がいる。
過剰な自意識に果たし状を叩きつけなければならない。
ノイジーであることも受け入れなければならない。

古いマッチ箱とのシーン。後ろで笑ってるのは監督。
5年間芝居を続けて、ある程度の「自然」を獲得できた。
ブログを書くことにも抵抗がなくなった。
実際に晒してみると、想像していたような攻撃は、どこからも来なかった。
そこで気づいたことがある。
他者は自分よりもずっと優しい。
最も自分に厳しいのは自分だ。
最も自然を許さないのも自分だ。
自然でいられると、ちゃんと他者と自分と出会える気がする。
ぼくは他者と自分に出会い直すために、芝居をやっているのかもしれない。




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