みなさんこんにちは。MAMEHICO神戸・御影店長しげちゃんの妻の渡辺みゆきです。
小学生の頃、毎週ピアノ教室に通っていました。
いつも母が迎えに来てくれて、家に帰る途中、必ずケーキ屋に寄っていました。
その頃の母は、仕事や子育て、遠く離れた両親の介護に忙しく、今思うと、毎日キャパオーバーだったんじゃないかと思います。いつもどんな時でも怒っていました。
一週間に一度、子供のピアノ教室の帰りに、大好きなケーキを買って食べる。それが唯一ほっとできる時間だったんじゃないかと思います。
ケーキを食べている母は、とても優しい穏やかな表情をしていました。
いつも怖くて近寄りがたいと感じていましたが、その時は、ふっと少しだけ心の距離が近づけた気がしました。
そんな時間を過ごせることが嬉しくて、辞めたくて仕方なかったピアノを、ずるずると高校を卒業するまで続けました。
町で唯一のその小さなケーキ屋は、おっちゃんとおばちゃんの二人で切り盛りしていました。
お店に行くと、「いらっしゃい。今週もよう来たね!今日は何にする?」と、いつも声をかけてくれました。
人見知りだった私は、返事をしたり話しかけたり出来ませんでしたが、目を見て笑ってくれる二人のことを、母の影に隠れてチラチラ見ていました。
大人になった今、お客さんに話しかけたり、スタッフのみんなと本音で話したり、たくさんの人たちと、心から笑って過ごせています。
それは子供の頃、おっちゃんとおばちゃんが、いつも笑って声をかけてくれて、私の心に、小さくても明るい灯を灯し続けてくれたことが大きかったんだろうと思います。
ケーキ屋って、人の心が触れ合うあたたかい場所なんや。いずれ私もこんなあたたかい場所を作りたいな。
そうはっきりと考えていたわけではありませんが、大人になるまでずっと、このあたたかさを心の奥に大切にしまっていました。
そして今回、バレンタインの時期に合わせて、バレンタインたぬきを作ることになりました。
このたぬきケーキ、昭和40年~50年代のケーキ店でよく見かけられたそうです。
作ってみるとよくわかりますが、一つ一つ顔が違っています。全く同じ顔や形を作ることは難しいんです。
スタッフみんなで試作をしている時も「あ、みゆきが作ったたぬきの鼻は、ツンと上向いてる〜!」「しげちゃんが作ったたぬき、タレ目でかわいいやん!」なんて盛り上がりました。
そんなたぬきケーキを食べた時、ふと、ケーキ屋のおっちゃんとおばちゃんのことを思い出しました。
あの穏やかな母の表情も思い出しました。
なぜ思い出したのか不思議で考えていたんですが、たぬきケーキから、あの時のあたたかさを受け取ったからなんじゃないかと思いました。
一つ一つ違っているからこそ、より作り手の人柄や気持ちが伝わる。
少しとぼけたたぬきの顔で「クスッ」と笑えて、少し、心がほぐれる。
そうか、私もケーキを作ってお客さまにお出ししているんや。
あの時のおっちゃんとおばちゃんの役割を受け継いでいるんや。
私はちゃんと、おっちゃんとおばちゃんになれてる?
どんな人の心にも、小さくてもあたたかい灯を灯すことができている?
いつも怒ってばかりいた母がふと見せた穏やかな表情で、お客さまにも過ごしてもらえてる?
なぜ私はこのお店に毎日立っているか、どんな人間でありたいか、そんなことまで考えてしまい、あらためて背筋が伸びる思いでいます。
いろんな顔をしたたぬきケーキを食べてもらいたいな。
そしていつも以上にお客さんの明るい笑顔が見れますように。バレンタインの時期も頑張るぞ!
2025.1.30〜2.17
バレンタインMAMEHICO
カフエマメヒコ三軒茶屋
MAMEHICO東京・銀座
MAMEHICO神戸・御影
詳細はこちらからどうぞ