こんにちは。MAMEHICOで音声まわりのお手伝いをしているMAMEHICOメンバーの内田亨です。
今回は「面白RADIO」の制作の流れについて、ご紹介したいと思います。
みなさんは「RADIOを作る」と聞いて、どんな風景を思い浮かべるでしょうか。
かつては、サテライトスタジオのようなガラス張りの空間で、アナウンサーがゲストと会話をし、背後には専門機材を扱う多くのスタッフが控える──そんな、特別な世界のものでした。
しかし今では、スマートフォン一つで誰でも簡単に配信ができる時代。
RADIOは「手軽に作れるもの」と思われがちです。
けれど、少しでも完成度を高めようとすると、その制作の大変さは、デジタル時代になっても変わっていません。
「面白RADIO」の制作は、まず収録日に参加できる役者さんのブッキングから始まります。
出演者が揃えばすぐに台本づくりに入れますが、集まらないと締切が迫る中でもなかなか書き出せず、やむなく身近な人が配役されることもあります。
出演者が決まると、井川さんが台本を書き始めます。
料理にたとえるなら、「材料を見てから献立を決める」ようなプロセスですが、完成した台本を読むたびに「よくこの材料から、こんな物語が」と毎回感心させられます。
台本を受け取った役者さんたちは、本番一週間前に一度集まって読み合わせを行い、台詞の間合いやキャラクターの擦り合わせをして、各自で練習しながら収録日を迎えます。
収録当日。
マイクを組み立て、録音機をセットするあいだに、どのシーンから始めるかを相談します。
とはいえ、たいてい台本の順番通りにはいきません。
スケジュールの都合や終電の時間によって、先に収録するシーンが決まってくるからです。
ちなみに、食事のタイミングは読めないため、各自が合間を見てまかないをさっといただきます。
いつも美味しいご飯をありがとうございます。
さて、本番が始まると、録音はシーンごとに「OKテイク」が出るまで続きます。
とくに最初のシーンは、監督の想定と演者のキャラクターにズレがあることが多く、NGが続きがちです。
でもその「ぎこちなさ」が、かえって面白かったりもします。
OKテイクには残らないのが残念ですが、ぜひ演者の皆さんにも一度聴いてもらいたいと思う瞬間があります。
一つとして同じ収録の流れはありません。
たとえば、簡単そうな台詞なのに、どうしても言いづらい言葉があってNGが続く──そんなとき、「台詞のほうを変えてしまおう」と即座に判断されることもあります。
頑張っている役者にプレッシャーをかけすぎない。
そんな井川さんのやさしさが、自然と現れているように感じます。
収録は順番どおりではなく、シーンごとにバラバラに録るため、すべてのテイクに番号と記録が必要です。
どのシーンが何回目でOKだったかを記録する「スクリプター」の存在が欠かせません。
収録中は何度も同じセリフを聞くことになり、ついウトウトしてしまうこともあるほどです。
収録が終わると、マイクを片付け、録音データを回収します。
平均で約120ファイル、出演者が4人いれば単純計算で480ファイル。
これをすべて記録表に基づいて整理していきます。
見た目には地味ですが、手間と時間のかかる作業です。
そしてここまでで、ようやく「下ごしらえ」。
このあと、整音(音量の調整やノイズの除去)、間合いの調整、効果音の挿入、シーンの構成など、井川さんの「料理」が続いていきます。
こうして完成する「面白RADIO」は、実に膨大な工程を経てできあがっています。
その裏側が見えてくると、「OKテイク」だけでない、作品そのものの奥深さが伝わってくるのではないでしょうか。
もし機会があれば、ぜひ一度「面白RADIO」の現場をのぞきに来てください。
その面白さと熱量を、もっと感じていただけると思います。