生活は整理整頓

部屋が片付かないのでと嘆くヒトがいて、
「井川さん、何かアドバイスを」、なんて求められましたけど、
そうですねぇ、とお茶を濁しときました。
望んで片付けないヒトも大勢いるので、他人のボクが、
とやかくアドバイスしたところで、聞く耳を持たないはずです。

お店は共有スペースなので、散らかさないよう、
掃除しやすいよう、日頃から気をつけています。
スタッフにも「一に段取り、二に段取り、そのためには掃除だよ」と
うるさく言ってきましたが、できないヒトは
いくら言ってもできないので、うちの店に長くはいません。
店はうちのほかにもいくらでもありますから、
それはそれ、仕方ありません。

新しいお店を作る場合、ボクはいつも、
「収めるもの、収まる場所」、ふたつセットで考えます。
たとえば包丁は、何種類、何本用意し、
それをどこで使い、どこで洗い、どこにしまい、どこで研ぐのか。
たとえば小麦粉は、何種類用意し、どこで使い、
どんなケースに詰め替え、使用するさじはどこに収め、
10kgの大きな袋はどこに保管し、開けた袋はどこにどうしまうのか。
すべてのアイテムを、そうやって考えて収めていきます。
収める場所までボクが考えます。
そうしないと、美しく収まりません。

収める場所は、仕舞いやすく、
使いやすい場所を選ぶのですが、それがなかなか難しい。
一度ここと決めても、何度かやり直すこともしょっちゅうです。
ボクは料理をしますし、大人数の食事会も頻繁に行っています。
そのときキッチンにあるステンレスのボウルを使うわけですが、
小さいボウルから大きいボウルまで重ねて収納するヒトがいて、
やめてほしいと小言をいいます。
使おうと思うとき、すぐに使えないのです。

ボウルというカテゴリーでくくれば、大中小はみなボウルですが、
使用頻度というタグを付けて分類すると、
大小のボウルは使用頻度が少なく、
中くらいのボウルの使用頻度は群を抜いて高い。
ということは中くらいのボウルを使うたびに、
上に重なっている小さなボウルが邪魔で、どけなくてはいけない。

調味料でも、醤油はよく使うけれど、ナンプラーはあまり使わない。
それなのに醤として横に並んでいるのは、とても使いにくい。
酒とみりん、味噌と豆板醤。
似ていても、使う頻度というタグを付けて収まる場所を変えます。
よその台所だと仕事しにくいのは、
それぞれのタグ付けが共有されていないからだと思います。

収納かごは便利だから、よく使います。
分類しにくい小物も、いろんなタグを決めて、
かごに放り込んでおけばいい。
かごは目より上の高さに置いておけば収納にもなるし、
なによりインテリアにもなる。
インテリアになるということは
奥にしまい込まなくていいということです。
かごはふたがないので、出し入れがしやすい。
玉葱、にんにく、芋は冷蔵庫に入れないのでかごにしまいます。
鰹節や干し椎茸などの乾物は、かさばるけど軽いので、
大きいかごに入れて高い棚にしまいます。

先だって、九州で竹籠を編む女性に会いました。
「教えるから、もっとみなさん編んだらいいのに」と言ってました。
ボクもそう思います。
もっとみんなで竹籠を編んだらいい。
材料の竹は竹害と呼ばれるほど、あちこちで迷惑してる。
だったらそれを編んでかごにして使えばいい。

かごは手間がかかりますから、お店で買うと、案外高いものです。
それを自分たちの手で編めば、ほとんど無料でできるんだから、
やらない手はないと思います。
かごは時間が経つと飴色になっていい感じになるし、
お金では買えない、自分だけのものができる。
籠目は魔除けのシンボルだそうですよ。

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