みなさん、こんにちは。MAMEHICO神戸・御影店長シゲちゃんの妻の渡辺みゆきです。
MAMEHICO神戸がオープンして、約2年半になります。
今日は私のお恥ずかしい話を聞いて下さい。
正直、私、うちの若いスタッフ、あえて名前は言いませんが、彼女にヘトヘトなんです。
たとえば、ケーキの型にタネを流し込みますよね。
それを彼女に頼むんですが、もういま流し込むという段になって、「あっ、型に敷く型紙を用意するのを忘れてました!」ってことが何度も起こるのです。一度じゃなく、何度も、です。
最初はうっかりかなと思っていたのですが、何回もそれをするので、怒るというより疑問のほうが強くなって、「彼女はどうして、このタイミングまで型紙がないことに気づかないのだろう」ということばかり考えてしまいます。
型紙を準備するのはケーキ作りの中でも基本的な作業です。
ましてやケーキ作りはほぼ毎日やってることです。
それなのに、毎回、タネを流し込む直前まで、型紙がなくなっていることに気づかずにいるだなんて。
そしてまた、そのことを特段、気にしていない態度にも、疑問と戸惑いを感じてしまいます。
「ひょっとして、ナメられてる?」
なぜ大事な部分が抜け落ちたまま、この人は平気なのだろう。
小さな店に、私とまったく違う他者がいるのかと思うと、怖いような不思議な気持ちになりました。
それでもきちんとやらなくてはいけません。
そこでまず、型紙をカットする作業を忘れないように、「型紙を作る曜日」を決め、その曜日に必ず1週間分の型紙を作ることにしました。
「これでさすがに、忘れることはなくなるだろう」。
私は安心して仕事を任せました。
ところが翌週には、「あっ、型に敷く型紙を用意するのを忘れてました!」というのです。
「この前、たくさん用意したんじゃないの?」
「でも使っちゃったんです」
「どうして足りなくなったの?そもそも何枚作ったの?」
「あっ、、、、ぱっと見て、こんくらいあれば足りるだろうと思ったくらい作りました。で、何枚作ったかまでは数えてません」
その返答を聞いて私の脳天に1000Vの雷が落ちました。
私は常にものごとを計算してから準備を進めるタイプなのです。
このようにざっくりとしか準備しないという人間がいることを知らなかった。
そこで次は「1週間で必要な最低枚数」をきちんと数え、その枚数をカレンダーに記入し、用意してもらうようにしました。
この方法を取り入れてからやっと、作業がスムーズに回るようになり、型紙が足りなくなることもなくなりました。
もうひとつ聞いて下さい。
オーブンでチーズケーキを焼くとき、「ちょっと焦げないように見ててね」と彼女に頼むことがありました。
その間に、他の仕事を進めたかったから。
彼女は「はい」とそれはそれは元気の良いお返事をします。
しかし、オーブンを開けると大事なチーズケーキは焦げているのです。
「なんで見ててねって言ったのに、見てないの?」
「見てました」
「見てたって言ったって、焦げてるじゃない?」
「いや、キッチンタイマーを夢中で見てたんですよ」
「───」
「なもんで、オーブンの中のチーズケーキは見てなかったというわけですね」
その返答を聞いて私の瞳は10000V、の電流が走りました。
さっそく、オーブンの中にいるケーキの表面を一緒に見たり、ビデオや写真に撮って共有したりしながら、かなり細かく時間を区切って確認するようにしました。
これなら少し任せられるかなと思いつつも、結局、私がずっと見ることになっています。
私にとって、MAMEHICOで起こるすべてが勉強であり、修行なのだとしみじみ思っています。
同じものを見ても、人によって解釈がまったく違うんやなということもMAMEHICOで知りました。
「こう言えば、こうしてくれるだろう」なんて、他人にはまったく通用しない。
いやただ、同じ言い方をしても、ぱっと伝わる人もいる。
ただそういう勘の良い人は少ないし、私もそういう人間ではありません。
自分がいかに言葉足らずかもMAMEHICOで知りました。
相手と自分を見て、二人の架け橋になるような共通言語をどうやって見つけるかが仕事なんですね。
正直、彼女にはヘトヘトですし、もっと私を汲み取ってよと心から思います。
疲れてるときは、しんどくて彼女に苛立ってばかりです。
ですが、これは私だけが体験していることじゃなく、たとえばお子さんをお持ちのお母さんや、お年寄りのお世話をしている人、あらゆるお仕事されてる人は、みな似たような体験をされてたんですよね。
そんなこともMAMEHICOに入るまで知らなかったのです。
毎朝お店に向かうとき、「今日はどんな一日になるんだろう」と心して臨みます。
今日も彼女は満面の笑顔で私を迎えてくれます。
心底、その笑顔にヘトヘトなんですが、一人スマートにやっていた頃よりもいまは、生きてるなって感じがしてMAMEHICOは今日も楽しいのです。
