節約は思考

MAMEHICOの節約術っていうのは、「どこにお金をかけて、どこを削るか」がちゃんと決まってることです。節約っていうのは、我慢じゃない。
選択の積み重ね。要は「思考」だということです。
うちでは、無駄なものには徹底してお金をかけません。
「とりあえず」で物を買わせない。
洗剤やスポンジといった日用品にいたるまで、欲しいものが見つかるまで徹底して探します。

——あれこれと買わない。
——なんでもいいやと買わない。
——決めたら、もう迷わない。
この選択の積み重ねが、MAMEHICOの節約の基本だというわけ。

そもそも。
「飲食」っていうのは、儲かればいいやって話じゃないでしょ。
ボクたちが作ってるものは、一杯の飲み物であれ、一皿のごはんやデザートであれ、すべてお客さんの体に入るわけで。
そのヒトの血管や血液になってるんだってことです。
大げさに言えば、ヒトの命に近い場所で仕事してる自覚があんのかよおまえ、みたいなことです。

ボクらが北海道でハタケマメヒコを無農薬で10年やってきたとき、土を耕し、種まいて、育てて収穫して売る。
──食べ物を作るとはどういうことか、自分でやってみないとわかんないと思ったからやってみたんです。

都会のクーラーの下で、「農薬はダメ」「有機がいい」って言っても、それは空論でしかない。
雑草を抜き、虫を追い払い、雨を待ち、そうやって育てた豆を、自分たちのカフェで調理して売る。
それで、初めて見えた景色があるわけですよ。

東京で暮らしてるヒトは、メディアで取り上げるほど無農薬野菜に関心が高いわけじゃありません。
だから、無農薬野菜を市場原理で競わせてもうまくいかないのもわかってるし、かといって助成金頼りでやっても、ずるくやるヒトが出てきちゃうのもわかります。

これはどんなことでもそうだろうけど、声が大きいとか目立ってるとかよりも、「誠実におまえやってんの?」「信頼できんの、おまえ?」──にすべてかかってるわけで。

やっぱり、選択の積み重ね。要は思考、だとボクは思う。

MAMEHICOは、食材──とくに基礎調味料には惜しまずお金をかけます
長く使う家具、店のメンテナンス、掃除にもお金をかけます。
お金がなくてどうにもかけられないときは、自分たちでやるんです。
壁も塗れば、什器も直す。
そうすればお金がなくてもなんとかなります。

「MAMEHICOって、母体はどこがやってるんですか?」ってスタッフは聞かれることがあるらしい。
「母体は井川さんです」ってスタッフが言うと、え?ってなるそうです。笑

「あのポスターも、 店内の内装も、 味付けもメニューも、 映画も舞台も、みんな母体は井川さんです、にこり」ってスタッフが笑って言うと、大抵は「気持ち悪」がって、それ以上詮索してこない。

ボクは、お茶会やイベントなんかの収支については、いちいち細かいお金の計算をしません。
イベントは「偶然の出会いを産む装置」として一番大事だからです。
いまボクの周りで働いたり手伝ったりしてくれてる財産といえるヒトたちは、みな、その偶然の出会いの賜物なわけです。

MAMEHICOの節約術というのは、何度もいうけど選択の積み重ね。
要は「思考」だというわけです。

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