水色の黒豆をめざして

こんにちは!MAMEHICO東京スタッフの前島由紀です。

今年の梅雨はほとんど雨も降りませんでしたね。
こう蒸し蒸しと暑い日が続くと、お店では粉物のケーキよりはやっぱりつるんと冷たいMAMEHICOの定番、白玉クリームクロカンやあんみつがよく出ます。

私自身も、MAMEHICOの数あるデザートの中で、やっぱりこのクロカンがいちばん好きです。
クロカンの黒豆は、北海道産のものを使い、保温調理鍋で4日間かけて、ゆっくりと火を入れて煮ていきます。

先日のこと、先輩スタッフの日野さんが「紫香邸の黒豆がめちゃくちゃ美味しく炊けている!」と言っていました。
MAMEHICOでは各店舗でそれぞれ黒豆を炊いていて、同じレシピでも味に違いが出ることがあります。
いつも美味しく炊けていると思っていた私は、その味の違いにあまり気づけていなかったことに、ちょっと目からウロコが落ちる思いでした。

そのときの黒豆のことを聞いてみると、煮汁がまったくすっぱくなくて、とても澄んだ味だったそう。
「水色の煮汁にさえ思えた」と話す日野さんの言葉に、私は思わずそんな光景を想像してしまいました。
(実際には黒豆の煮汁はアントシアニンで黒っぽいのですが。笑)

この黒豆はきび砂糖と白砂糖、2種類の砂糖を使って炊いていて、火の入れ方によっては汁が煮詰まって酸味が出てしまうことがあるのです。

私は、その話を聞いて、日々の火入れの仕方を反省しました。
大好きな黒豆なのに、そこまで気をつけて味の差異を気にしたことがなかったからです。

日野さん曰く、「私も最初からできたわけじゃなくてさ、いつも味見をしながら、火加減を調整したり、タイマーで時間を測って火入れしてみたり。何年もかけて、ようやくコツがつかめてきたんだよ。」

忙しい朝の仕込みの時間に聞けたちょっとした黒豆の話でしたが、とても心に残りました。

黒豆を炊くのは難しいことではありません。
煮汁の温度が少し下がった頃合いを見て、朝、昼、晩と1日に何度か火入れすればよいのです。
けれどこの簡単な作業こそ、難しい。
単純なことほど、丁寧に。
やり方次第で、仕上がりに大きな差が出る──それを、あらためて思い知らされました。

三軒茶屋のお店は、おかげさまで毎日とても忙しいです。
でも、その忙しさに流されて、一番大切なことをおざなりにしてはいけないと思いました。
小さな差異に気づくこと。
そして今、自分は何のためにここにいて、何のためにこの仕事をしているのか、自分に問いかけてみる。
澄んだ水色の黒豆の味になるように、今日もこの黒豆と向き合いたいと思います!

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