信じることをつらぬく

みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野です。

2025年7月1日、MAMEHICOは20周年を迎えました。
めまぐるしく変わる東京という街で、同じ場所で、同じ想いを大切にしながらお店を続けていくことは、想像以上に難しいことです。

わたしは、MAMEHICOが3年目のときにスタッフとして入り、それから17年間、マメヒコがMAMEHICOへと変わっていく過程を、ずっと近くで見てきました。

MAMEHICOのブログを読んでくださっている方にはおなじみかもしれませんが、このお店は、井川さんという一人の人が立ち上げ、そして今も、ほとんどすべてを井川さん自身の手で切り盛りしながら続けてきたお店です。

井川さんは、いつも「どうあるべきか」と考え、それを言葉にしてスタッフに伝えてくれます。
わたしが初めて会ったときにも、こう言われました。

「時代は、変な方向に進んでいる。そして、それはこれからもっと加速していくだろう。
だからこそ、変わらないものを守るために、自分たちは変わり続けなければいけないんだ」

たとえば、MAMEHICOでは「フェイクを使わない」と決めています。
木に見えて木ではないもの、ガラスに見えてガラスではないもの、バターに見えてバターでないもの──
そういった『それらしく見えるけれど違うもの』を使うことは、結果的にお客さまをだますことになり、最初はよかれと思って使っていても、やがて自分たちの感覚も鈍ってしまう。
だからこそ、そうしたものは使わないと決めているのです。

お店の家具や食器、料理の材料にいたるまで、「これなら本物」と思えるものだけを選び続けるのは、経済的にも楽ではありません。
それでも井川さんは、質と経済のバランスをとりながら、お店を成り立たせています。

みなさんはどんな印象をお持ちかはわかりませんが、ふだんの井川さんといえば、「どっちだっていいじゃん」が口ぐせで、細かいことにこだわらず、厳格な雰囲気の人ではまったくありません。
でも、一度「こうする」と決めたことに関しては、どこまでも貫こうとする強さがあります。

渋谷という街が大きく変わっていくなかでも、井川さんはただ流されることなく、必要な変化は受け入れつつ、信念を守りながらお店を続けてきました。
わたしたちスタッフはその姿をいつも近くで見ていて、「どんなときでも信じたことを柔軟に貫く」その姿勢に、大きな信頼を寄せています。

わたしといえば、日々店頭に立ち、接客や掃除などを担当していますが、「MAMEHICOらしさ」を行動で示すのは、決して簡単ではありません。
たとえば接客では、静かに過ごしたい方か、少し話したい気分の方か──その場の空気を読み取り、さりげなく応えるよう心がけていますが、実際はとても難しいことです。
言葉にしない「気持ち」を感じ取る。
そうした繊細さを、すべてのスタッフに求めるのは現実的に無理があります。

そのほかにも、食器の洗い方、音楽の音量や選曲、照明の調整、季節の花の選び方、ガラスの花瓶の手入れ、一皿ごとの盛りつけ──
どれも「こうあったほうがいい」というわたしなりの基準があり、ひとつでも手を抜けば、お店の空気はたちまち変わってしまうけれど、そうした感覚がスタッフ同士でうまく伝わらなかったり、すれ違いが起きたりすることも多く、日々悩みは尽きません。

それでも、「MAMEHICOって、ここにしかないお店ですよね」と言ってくださるお客さまがいるからこそ、わたしはこの場所に立ち続けることができました。
「ああ、ちゃんと伝わったんだな」と思える、その瞬間が、わたしにとって何よりの支えです。
地味で根気のいることの積み重ねですが、その積み重ねこそが、わたしたちスタッフの誇りでもあるのです。

これからも、きっとMAMEHICOはいままでのやり方を変えないと思います。わたしも変えません。
そして何年ぶりかに訪れても、「MAMEHICOは、あいかわらずMAMEHICOだよな」と思ってもらえる──
そんな、変わらぬ安心感のある場所であり続けたい。
そのために、わたしはこれからも、ここで力を尽くしていきたいと思っています。

+19

このページについてひとこと。この内容は公開されません。