そのひと口の余韻

みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野です。

毎年ご好評いただいている「檸檬ケーキ」。
「ずっと続けてほしい」とのお声も多くいただきますが、このケーキは、季節の素材を使った〈冬から春限定〉のもの。
まもなく今季分は終了となります。

檸檬ケーキは、バターたっぷりのサクッ、ホロッとしたパイ生地に、レモン味のカスタードクリーム。
そしてその上に、ふんわりと立てた生クリーム。
甘さと酸っぱさのバランスが絶妙なケーキです。

先日、三軒茶屋店のテラス席にいらしたカップルのこと。
しばらくメニューを見つめて悩んでいたおふたりが、揃って「檸檬ケーキをお願いします」と注文してくださいました。
そこまではよかったのですが──

男性のお客さまが、ドリンクをなかなか決められず、ようやく選んだのが…、
「ではそれに、はちみつ檸檬のサイダー割で!」

わたしは内心、「ええっ、檸檬ケーキに、はちみつ檸檬サイダー!?合わない…!」と叫んでいました。
でも、楽しそうに選んでくださったのを見て、うまく止める言葉が出てこない…。

するとそのとき、女性の方が「それって、ケーキもドリンクも、どっちも檸檬じゃん!合わなくない!?」とツッコミを入れてくださって…!
ナイス!と、心の中で思わず拍手!

ところが男性は「いいの!僕、檸檬が好きだから!」と譲りません。
女性がさらに「いや、それ絶対に合わないよ。口の中が、甘酸っぱいの大洪水になっちゃうよ。別の飲みものにしなよ」と重ねてくださって、わたしもついに言いました。

「余計なお世話かもしれませんが、檸檬ケーキには、はちみつ檸檬は合いません。なぜかっていうと──口の中が、甘酸っぱいの大洪水になっちゃうからです。
珈琲か、せめて紅茶の方が合うと思います。余計なおせっかい、失礼しました。」

すると男性も観念して、「そう。じゃあ、独創紅茶を。」と。
めでたし、めでたし。

たしかに、余計なお世話だったかもしれません。
でもわたしは、ケーキと飲みものの組み合わせ──いわゆる“ペアリング”を、とても大事にしています。
ぴたりと合えば、味わいがふくらんで、気持ちもすっと上向く。
逆に少しでもずれてしまうと、なんだか落ち着かない。
たかが組み合わせ、されどペアリング。

基本はシンプルで、脂っこいものには、油を流してくれる飲みものを。
甘いものには、口をさっぱりさせてくれる飲みものを。
それだけで、次のひと口が、よりおいしく感じられます。

とはいえ、これはわたしの中で自然になっている習慣のようなもの。
ケーキにジュースで育った方には、それがしっくりくる場合もあります。
だから、誰にでも一律におすすめることはしていません。
相手と時を見て、「今なら伝えてもいいかな」と思ったときだけ、そっと声をかけています。

「ペアリングなんて考えたこともなかった。教えてくれてありがとう」
そんなふうに言っていただけると、やっぱり嬉しいものです。

今季の檸檬ケーキ、まもなく終了です。
最後のひと皿を楽しむなら、ぜひペアリングも意識して、よりおいしく味わってくださいね。

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