工房には、小さな庭があります。
ある日、その庭を見た井川さんが、軽やかに言いました。
「花壇を作ろうよ! どう?」
スタッフみんなも、「おー! 楽しみです!」と盛り上がります。
まずは土を整えておくことになりました。
雑草を抜いて、培養土を足せばいいかな。なんて簡単に考えていた私でしたが、レンガの囲いの中の土を少し掘ったところで、思わず固まってしまいました。
外からはまったく見えなかった根っこが、土の中にびっしりと張り巡らされていたのです。
たった30センチほど掘るだけで、1時間。
汗まみれ、泥だらけになりながら、「これは…大変だ」と途方に暮れました。
すっかり日も落ち、「今日はもう帰ろう」と思ったとき、ご近所の方が「お疲れさま」と声をかけてくださいました。
「はい、根っこがすごくて!」
少しお話しをして、その日は帰宅しました。

ところが翌朝、工房に着いてびっくり。
花壇の土が1メートルほど掘り返され、根っこがきれいに露わになっていたのです。
驚いていると、昨日声をかけてくださった男性が、そばに立っていらっしゃいました。
お隣のご主人でした。
聞けば、ここがMAMEHICOの工房になる前、長年住んでおられた方と深いお付き合いがあったのだそうです。
その方がいなくなったあとも、「庭が荒れないように」と手入れを続けておられ、今回も困っている私を見かねて、手を貸してくださったのでした。
それから一週間。
毎朝のように根っこや石を取り除き、土を入れ替えて、何から何まで整えてくださいました。
自分たちだけだったら、きっと3か月はかかっていたと思います。
そして先日、ついに井川さんとマフィン隊のみんなで力を合わせて、苗を植えました。
これからこの花壇を美しく育てていくことが、ご主人への一番の恩返しになればいいなと思っています。
まだ、花壇が完成してからはお会いできていません。
でも、きっと「いいね〜」と笑顔で言ってくださるはず。
こうして、ご近所の方に助けてもらいながら、私たちは今日もここでマフィンを焼いています。
なんだか、とてもありがたいことだなぁと思います。




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