ボクたちMAMEHICOは来年で20周年です。
この20年、経営的にはいつも大変でした。
東京オリンピックが決まった2013年、東京の再開発が加速し、
渋谷の街はどこもかしこも建築ラッシュとなり、
そこにもってして2014年には消費税8%、2019年に10%、
2020年からコロナ禍、東京オリンピックの延期、
緊急事態宣言、マンボーヤンボー、ずっとMAMEHICOは
乱気流に巻き込まれた飛行機のようでした。
とくに直近のコロナ禍では、
「店員がマスクをしていない不潔な店」といった
レッテルを貼られることもあって、お客さんは激減しました。
「人殺しカフェ」と電話がかかってきたことまでありました。
それでもボクたちはボクたちの思いを貫いたわけです。
大家さんと家賃のことで論議になり、3年間かけて裁判もやりました。
にもかかわらず、少ないけれど通い続けてくれたお客さんたち。
お手伝いを自ら申し出てくれたお客さん。
営業を支えてくれたスタッフ、そのおかげ様さまで、
MAMEHICOはなんとか生き延びることができたのです。
ある昔のヒトの話を思い出します。
「空襲の最中、外では爆音が響き、死の恐怖がすぐそこに迫っていた。
だけど家族で身を寄せ合って布団に潜り込んで、
笑い話をして過ごしたあのひとときは子供心に、
不思議と幸福感に満たされていたものだ。
命の危機に晒されているという現実よりも、
家族とぬくもりを分かち合い、寄り添う時間が、
どれほど子どもだった私の心を安らげてくれたか。
その瞬間だけは、世界の荒波から切り離された小さな楽園のように思えた」。
コロナ禍は、ボクにとっての戦時下のようなものでしたが、
この話に似た多幸感がボクにもありました。
当時は頼りなかったスタッフたちも成長し、
いま頼れる存在になりつつあります。
そこで、11月からMAMEHICOでは
商品の価格を500円近く値下げしました。
値下げを決めると「品質、落としたんじゃないの?」って声が聞こえてきました。
「サイズを小さくしたに違いない」という声も聞こえてきました。
どちらもしていません。
おんなじものを、おんなじままで、500円近くも値下げしたんです。
ボクはいままでピンチのたびに値上げをしてきました。
そのたび、「MAMEHICOって高すぎる」、
これはさんざん言われてきたことです。
「日本一高いんじゃないの?」と皮肉られたりもありましたっけ。
お客さんていうのは
「いつも同じ値段で買える安心感」を求めるものだなとわかります。
だから多くのお店が価格をずっと据え置きにして苦しんでいるのでしょう。
「創業以来、同じ値段でやっとります」が
価値あるニュースになっているのでしょう。
今回の値下げをすることで、
より多くのお客さんに来店してもらう狙いがあります。
そして、その結果としてスタッフが多くのお客さんと接し、
経験を積むことでさらに成長してもらう狙いもあります。
ボクはMAMEHICOは、「MAMEHICOにヒトを付ける」のではなく、
「ヒトにMAMEHICOをつける」という方針で最初からやってきました。
これからもそれは変わらないでしょう。
ボクは「ヒトが変わっていくこと」を重視しているのです。
ヒトが変われば、自然とMAMEHICOも変化し、
そのMAMEHICOがまたヒトを変えていく、
その流れを作ることがボクの役割なのです。
近くにいるお客さんやスタッフは、みんなボクのやり方を知っていますし、
それに期待もしているのです。
「ヒトは変わる」。成長もするだろうし、後退もするだろう。
とにかく変わっていくものなのです、MAMEHICOもおんなじです。
変わっていくから面白い、MAMEHICOイズム。