こんにちは、MAMEHICO神戸・御影スタッフの水野知帆です。
MAMEHICOの新作劇「cinemusica」が、来年3月22日に神戸・御影店で上演されます。
作・演出は井川さん、音楽は女性シンガーソングライターの入日茜さんが手がける作品です。
私にとっては久々の「井川作品」、それも御影で上演されるということで胸が高まっています。
そこで今回は、まだ「井川作品」を知らないみなさんに、私が知る「井川作品」の舞台裏について少しお話ししたいと思います。
井川さんが手がける「井川作品」は、映像や舞台、イベント、音楽、カフェの空間やメニューに至るまで、どれも私にとって心に深く残るものばかりです。
それだけでなく、井川さんの才能は、絵やデザイン、トークなどのパフォーマンスにまで及びます。
あまりに多才なので、「現代のレオナルド・ダ・ビンチ」とおっしゃるお客様が東京にいらしたと、他のスタッフから聞いて、なるほどそうだなと私も思います。
ただ最初からそう思っていたわけではありません。
私自身、中に入るまでは、MAMEHICOがやっていることは、みんなで分業しているものだと思っていました。
ところが実際は、私たちが何人がかり何日もかけてやるようなことを、井川さんは一人で、しかもあっという間に片付けてしまう、そんな場面にいくつも立ち合ってほんとに驚いたんです。
いままでいわゆる「天才」という人種に会ったことがなかった私は、「そんなことありえない」とかなり疑っていました。
でも、知れば知るほど「天才って本当にいるんだな」と驚くばかりです。
ただ、井川さんはいわゆる無名なので、普通の人にそんな話をしても、「あたまおかしんじゃない」と笑われるだけかもしれませんが。
昨年上演された「井川作品」のひとつに「ぽうく」という演劇作品があります。
私はジブリ作品が好きで、映画はもちろん、そのメイキングを見るのも好きだったので、こっそり稽古場を覗きに行ったことがあるんです。
いわゆる「井川作品」がどうやって作られているのか、とても興味があったからです。
「井川作品」に登場する役者さんたちは、プロの役者ではなく、普通のお客さんだったり、いわゆる素人。
その人たちの特徴を捉えながら脚本を書く、いわゆる「あて書き」という手法で作品を作っていきます。
稽古場では、ひたすら地道な作業が繰り返されていきます。
同じ場面のセリフや動きを、何度も丁寧に繰り返していくのです。
「はい、もう一回。違う、もう一回こうやってみて」と笑わせながらも、何度もやらせる井川さん。その作業が延々と続きます。
そして、どうやってもうまくいかないときは、「じゃあ本を書き直すから待ってて」と、さっさとその場で脚本を直してしまうんです。
かなりしつこいときと、あっさりしているときが交互にあって、どんな基準でそうしているのか、私には皆目、検討もつきません。
いざ本番になって見に行くと、私は稽古を見ていたはずなのに号泣してしまいました。
脚本の中の登場人物と自分自身を重ねてしまったからです。
その頃、私はまだ大きな会社の社員でした。
就職活動を頑張って晴れて入社したにもかかわらず、「なんだ、こんなものか」と虚しさを抱えていたんです。
一見、順調に見えてた仕事や生活も、どこかで「虚しい、けどどうしたらいいかわからない」と焦っていました。
「井川作品」を通じて感じたのは、「何かをやっている風ではダメだ」ということです。
本気で何かに向き合わないと、この寂しさや、自信のなさはいつまでも拭えないと気づかされました。
その気づきがあったからこそ、私は行動に移すことができました。
そして今はMAMEHICO神戸・御影店で拾ってもらい働いています。
御影での毎日は、あの稽古場で見た風景そのものです。
一つ一つの仕事、自分自身と格闘する日々。
店長のシゲさんやその妻のみゆきさんも、私を甘やかしてはくれません。
それでも、井川さんが月に一回来ると、みんなのはなしを聞いて、「じゃあ、いっそやり方と、配置をガラッと変えてみようか」と大胆に変えてくれる。
だから飽きることなく、毎日が新鮮で面白い。
地道なことと、予想外の展開が交互にやってきて、充実した日々を送れているなと思います。
さて、そんな「井川作品」の新作「cinemusica」が、来年3月22日、ここ神戸・御影店で上演されます。
映画とオリジナルの歌、演劇が組み合わさった作品と聞いていますが、まだ全然想像がつきません。
お客様にも中身は伝わりにくいかもしれません。
でも、「井川作品」好きの私としては、「井川作品」を見てもらいたいのです。
そこに広がる世界が、みなさんのワクワクになると嬉しいです。

2025.3.22
14:00〜16:00
cinemusica
MAMEHICO御影にて
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