お店とはボクの子供

ボクは子供が大好きです。
できることならたくさんの子供たちと、日々過ごせたらいいのに。
そんな願いも虚しく、ボクには19歳の娘がひとりいるだけですし、
少子高齢化の進んだ東京では、そもそも子供が周りにいません。
なんだかな、という思いです。

子供と一口に言ってもいろいろですけど、
とりわけ3歳児までの、次になにをやらかすかわからない、
果たしてなにを考えているのかさっぱりわからない、
けど、よくよーく観察すると、なんか分かってくる。
子供のそういうところが、愛くるしくて好きなのです。

娘が生まれたとき、育児書というものを
始めて手にとり、興味深く何度も読みました。
それによれば。
0歳から1歳6ヶ月くらいの時期を乳児期と呼ぶんだそうです。

生まれたばかりの赤ちゃんて、
親に頼らなくては生きていくことができませんよね。
だから周囲に、自分の生理的欲求を、
泣いて伝えることでアピールしないと生きていけない。
アピールすることで親や周囲のヒトに
助けてもらったり、かまってもらったりしながら、
たくさんの愛情を受けとることで、
ヒトを信頼することを覚えたり、安心感を得たりする。
にも関わらず、泣いてみてもだれも助けてくれないなんて状況が続くと、
赤ちゃんはヒトを信頼することができず、不信感が芽生え、
その後の人生観や性格に大きな悪影響が及ぼすのだと。

そんなことが書いてあります。

つづいて。
1歳6ヶ月から3歳くらいの時期は幼児前期と呼ぶ。
言葉を話したり歩いたりできるようにもなり、
成長が早い子供は、走ったり、
拒否したりすることもできるようになる。
これまで親や周囲にしてもらっていた着替えや排泄、
食事なども、どんどん自分でできるようになる。
そうすることで、自律性が養われてきます。

この時期になっても、子どもに何もさせず、
親がすべてしてあげているようでは、
子どもの自律性は育ちません。
また、せっかくチャレンジしたものの失敗したからといって、
必要以上に叱りつければ、子どもは萎縮してしまいます。
なんてことが書いてあります。
子育てにおいても、さじ加減が大事だということですね。

さて。
ここ数年、新しい店を次々と作ってます。
そして作った店は、当たり前だけど、月日を経て成長していく。
三軒茶屋のカフエマメヒコは、来月の7/1で19歳。来年は晴れて20歳です。
一方、銀座と神戸のMAMEHICOといえば、ともに1歳と9ヶ月。
育児書に習うと「幼児前期」ということになるでしょう。
さらに桐生の紫香邸は「乳児期」です。

お店といえど、子育てと同じで、
自律性を育む時期や信頼を育む時期ってあるよなと思います。
そう、自分が作って生み出したお店は、
ボクにとっては子供みたいなものなんです。
働いてくれるヒトが子供なのではなくて、
「店」そのものをひとりの子供とみてるんです。

19年前、三軒茶屋にマメヒコが誕生したときにいたスタッフは、
誰一人残っておらず、ボクしかいません。
店で働いてくれるヒトは、ボクの経験からすれば、
いなくなってしまうものなので、
ヒトではなく「店」を子供と考えているのです。

渋谷にいくつかあったマメヒコは、どれも20歳を待たずして、
この世から消えてしまいました。
思い返すと、胸がキュンと締め付けられます。
マメヒコといえど、やっと19歳なのだからね。
まだまだチャレンジ、たくさんの失敗を続けなくてはね。