みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野です。
かつて渋谷に、「カフエ マメヒコ宇田川町店」というお店がありました。
入口を入るとチケットカウンター、奥には小さなステージ。
赤い緞帳のかかった空間で、コンサートやお芝居、映画の上映までしていました。
そのステージは、わたしたちの手づくりでした。
照明の角度や幕の高さ、椅子の並べ方まで、全部自分たちで決めて。
「どうすれば人が集まって、出会いが起きるか」──それをいつも考えながら、空間を少しずつ変えていきました。
だから、あの場所は喫茶店でも劇場でもない、特別な空気をまとっていました。
「カフェなのに、映画つくってるんですか!?」そんなふうに驚かれることがよくありました。
けれど、それは思いつきでも勢いでもありません。
わたしはその裏側をずっと見てきたからわかります。
井川さんは、いつもすごく早く決断するので、一見、思いつきに見えるけれど、実際にはすべて計算されています。
お客さんがどう動くか、誰と誰が出会うと化学反応が起きるか。
そのきっかけをどう仕掛けるかを、綿密に考えているのです。
宇田川町店では、いつも複数の企画が同時に進んでいました。
北海道でハタケをやるかたわらでは映画を撮り、その合間にラジオを録る。
ハタケに参加した常連さんが撮影に加わり、いつの間にかスタッフになっていく。
そうやって新しい人が次々と中心に引き寄せられていくのを、わたしは何度も見てきました。
偶然のように見えて、すべてが設計されていたのです。
宇田川町店は「偶然をデザインする」お店だったと思います。
人と人が自然に関わり、そこから新しいことが生まれる──その小さな仕掛けとして、MAMEHICOは劇場のあるカフェとして育っていきました。
そしていまも、変わらずに計算し、いろんなことを試しながら、偶然を起こす仕組みをつくっています。
MAMEHICO銀座は、その延長線上にあります。
あのころと同じように、舞台があり、光があり、物語があります。
お客さんがふらりと訪れ、誰かの話を聞き、舞台を観て、心が動く。
その体験の一つひとつが、また新しい出会いにつながっていく。
銀座店は、宇田川町店での試みをいまの形で続けている場所なのです。
MAMEHICOは、カフェでありながら、舞台が生まれ、映画が撮られ、音楽が鳴り、人が出会う場所。
それは関係を作るためにあります。
偶然が単なる偶然で終わらず、思いがけない幸運を生む──その仕掛けを考え続けてきたのが、井川さんであり、MAMEHICOという場なのです。
どうぞ、銀座の小さな劇場型カフェで、その偶然の中に身を置いてみてください。
きっと、あなたにも何かが始まるはずです。

面白可笑ひこ2025秋
2025年11月3日(月)
昼 開場11:00 /開演12:00
夜 開場16:00 /開演17:00
MAMEHICO銀座にて



