こんにちは、MAMEHICO神戸・御影店スタッフの水野知帆です。
先日、「神戸・暦の手帳」の撮影がありました。
MAMEHICOのYouTubeで配信している番組で、私たちのお店がある神戸の景色や季節の草花を、店内の花を生けてくれている一谷先生と共に巡るというものです。
普段は店長夫妻がカメラを持って進めているこの撮影。
今回は、東京から井川さんが監督として参加してくれて、私も初めて現場に関わらせてもらいました。
撮影が始まる前、井川さんは集まったスタッフにこんな話をしてくれました。
「山歩きの動画で、インタビュアーがヒールを履いていたら、それだけで嘘っぽく感じるでしょ。小さな嘘ほど、見る人には強い違和感を感じるんだよ」
何気ない例え話でしたが、その声のトーンから、映像作りへの強いこだわりが感じられ、「ああ、これがプロの視点なんだ」と思わず背筋が伸びました。
撮影場所は店から始まり、店から歩いて10分ほどの神社でも、撮影が行われました。
お参りを終えた一谷先生が階段を降りてくるシーンで、台本にはなかった、店長が一谷先生にカメラ越しにインタビューするということになりました。
モニターにはふっと力の抜けた一谷先生の表情が映し出され、二人の信頼関係が伝わってくるようなやりとりに、私はその光景を微笑ましく見ていました。
ところが、シーンを撮り終えた井川さんが、すぐに「体の向き」について指摘します。
「体の向きがおかしいね。本来はお参りを終えて降りてくる場面なのに、この向きだと、これから参拝に行く途中で、後ろから声をかけられて振り返って話しているように見えるよ。」
そう言われて初めて、私もその不自然さに気づきました。
そして同時にハッとしました。
撮影を始める前に聞いた「小さな嘘」の話が、まさに目の前で起きていたのです。
撮影前は「そういうこと、あるあるですよね」と頷いていたのに、いざ自分が作る側になると全く気づけない。
自分の視点の狭さを思い知らされました。
撮影後、その気づきを井川さんに伝えると、さらにこんな話が返ってきました。
「気づけるようになるためには、作っている段階から見る人がどう感じるかを想像することが大切なんだよ。それは映像だけじゃなく、店の仕事もね。」
キッチンで料理を作っているとき、席で待つお客さんの気持ちをどれだけ想像できているか。
「盛り付けて終わり」と自分の仕事を区切ってしまうと、お客さんが受け取ったときに感じる違和感に気づけない。
その言葉は、まさに自分の日常にも直結していて、耳が痛くなる思いでした。
全ての撮影が終わり、東京に帰る前に井川さんが店に顔を出してくれました。
最近始まったモーニングでお出ししているミルクスープを見て「具とスープのバランスがおかしいね」という指摘を受けました。
その一言に、またもやハッとさせられました。
「言われた通りに盛り付けて終わり」と自分の仕事を区切ってしまい、お客さんがどう受け取るのかを、想像できていなかったなと思ったのです。
その後、店長を筆頭に「じゃあこうしてみよう」と即座に改善に動く周りの姿を見ながら、あの神社での階段シーンが頭に浮かびました。
小さな違和感に気づけるかどうか。
その意識ひとつで映像も料理も変わり、受け取る人の心に残るかどうかも変わります。
今回撮影した「神戸・暦の手帳」は、私にとってそんな気づきのきっかけになった回です。
神戸の美しい景色とともに、一つ一つのシーンにもこだわっていますので、ぜひYouTubeで公開された時は、そんな点も注目しながら見てみてほしいです。



