面白さに導かれて

あのですね。ずっとむかしから、ボクはほんとに個人的趣味で、ラジオを録ったり、映画を撮ったりしてきたんですね。
それは誰かに認められたいとか、そういうことじゃなくて、ただ自分が「面白いから」と思って続けてきた。
MAMEHICOも二十年になりますから、今までも、ずいぶんとお店を舞台にしたり、そのときのお客さんやスタッフと一緒になって作品を作ってきたんです。

でも、何度も言いますけど、自分が「面白い」と思ってやっているだけなので、世間に広く知られることなど一度もないんです。
けれど、自主制作ですから、やめなければ続けられる。
そして、それは今日もまだ続いているんです。

まず「天才よち丸ラジオ」というのがあります。
これは五年以上続けているラジオ番組です。
ボクがふと思いついた話や、感じたことを気ままに話しているだけの番組です。
なんかためになる話をするというわけでもなくて。
いまでも誰が聴いてくれてるのかよくわからないんですが、それでも、気づけばときどきマイクを前に喋っています。

ラジオと言えば最近熱を入れてるのが、「面白ラジオ」です。
あの名番組「ラジオ・アヴァンティ」を、MAMEHICO流に再現したラジオドラマ。
舞台はMAMEHICOです。
常連客のセツオと店員のレイナが、毎回ひとつのテーマをめぐって語る。

お客さんやみんなが、気軽に参加できる番組を作れないかと思って思いつきで始めたものがレギュラーになってます。

台本があるので、はじめてのヒトでも参加できるようになってます。
演技の経験もとくに必要ありませんしね。
収録スタッフも同時に募集してるし、見学だけの参加も歓迎してます。
これ毎月一本なんですけど、1時間ほどもある番組なので、地味に制作は大変です。

映画だと「MAMEHICOピクチャーズ」です。合計三作あります。
作り始めた経緯が面白いはなしなんですけど、話すと長くなるので割愛します。
田口トモロヲさんを主演に、カフエ マメヒコを舞台にした映画です。
商業映画のような派手さはなくて、とくにストーリーがあるわけでもないんです。
ボクはそもそもストーリーがはっきりした作品が好きじゃない。
なんとなくカフェで交わされる会話、店内に差し込む光、椅子のきしむ音。

そうした日常の断片を刻んでいます。
そういうところに伝えたい、共有したいものがあるので。

「ノッテビアンカ」は、コロナ禍のさなかに撮った連続ドラマです。
出演も撮影も、すべて素人です。
あの頃は時間もたくさんありましたからね。
お客さんもみんな手伝ってくれて、一年間、土日や休日だけ使って、長い一本の物語を仕上げたんです。
ヒトが集まることさえ難しかったあの時期に、「何か、このデタラメを写しておきたい」と、そんな気持ちで創ったのかな。
今見ると、映っているのは、演技ではなく、そのときのそのヒトの素顔、記録ですね。
合計10時間以上にもなるので、誰も見てくれないだろうと思ってましたが、世の中には奇特なヒトがいるもんで、再生回数を見ると、そこそこ見てくれていて、嬉しいやら申し訳ないやらという気持ちです。

動画で言えば最近撮ってるのが、「神戸 暦の手帖」。
MAMEHICO御影の制作で、季節とともに綴る、小さな歳時記です。
山と海に囲まれた神戸のまちを、お花の先生、一谷さんが足もとに咲く草花を拾いながら歩く。まあそれだけの動画です。
摘んだ草花はそのまま店に持ち帰って、花器に活ける。
観光案内でもなく、情報番組でもなく、ただ日々の静かな美しさを、映像として記録する。
季節のうつろいを、一冊の手帖のように残していきたいと思ってるんです。

ほかにもいろいろやってますが、こうして振り返ってみると、ボクはいつでも何かを主張したいわけでもないし、ましてや評価されたいと思って作ることってないんですね。
ただ、カフェをやりながらぼんやりと考えてることを、なんとなくラジオにしたり、映像にしたりする。
もちろん一人では作れないので、近くにいたヒトたちがいつも手伝ってくれて、一緒に作ってきたという感じです。