先週、三軒茶屋でMAMEHICO二十周年のパーティーをやりました。
古くから通ってくれているヒト、最近通いはじめたヒト、かつて一緒に働いたスタッフ、舞台に関わったヒト──いろんなヒトたちが集まった夜でした。
二十年を祝うパーティーといっても、派手なことはとくにしたくない。
じゃあ集まって何をしたのかというと───出席者の「自己紹介」です。
ただひたすら名前を言って、MAMEHICOとの関わりを話す、それだけ。
十年前の冬、絶望してたとき、MAMEHICOに救われた話。
引っ越したばかりで、知らない街にMAMEHICOがあってホッとした話。
スタッフとして入って、失敗ばかりしていたけど成長できた話。
多くのヒトは「自分が何をしたか」ではなくて、「MAMEHICOから何をしてもらったか」という話をしてくれました。
ボクは、いろんなヒトが混じり合いつつも揉め事の少ない、良いコミュニティを作っていくうえで、この自己紹介というのは、もっとも重要なことのひとつだと思ってます。
メンバーシップ制のカフェとしてからはより一層それを感じている。
ヒトがヒトを信じる。
それは、そのヒトの物語に触れたかどうかがとても重要です。
あなたの物語を話すことで、相手はあなたを「信頼に足るヒト」かどうかを判断する。
ボクは映画や舞台の脚本を書いたりしてるわけですが、良い物語というのは、登場人物が自分についてきちんと語り、観客がその登場人物を信頼し感情移入できてこそ、なわけです。
そのうえで、大切なことは3つあります。
「私は何者であるか」を語ること。
──ヒトはみな、他者を警戒してるものです。だまされまい、と身構えていたりする。一方で、ヒトは疑うより、他者を信じたい生き物でもあるんです。だからこそ、あなたはあなたが何者であるかをちゃんと話さないといけない。
「私はなぜここにいるのか」を語ること。
──MAMEHICOになぜ参加しているか、なぜ長い時間をMAMEHICOで過ごしているのか、その動機をはっきりと示し、相手が納得できるかたちで伝えることです。それがわかれば、ヒトは安心するし、近しいものがあれば共感する。
そして、シンプル、そして誠実に語ること。
──自分のちょっとした失敗談、過去の恥ずかしい思い出。こんなこと話したら嫌われるんじゃないかと心配するヒトがいますが、自分の弱さがにじむ話に、相手は心を開くものです。だから誠実に語らなくてはいけない。そして重要なのは、わかりやすくシンプルに示すことです。自分の感情をわかってもらわんと、こと細かく伝えようとするヒトがいるけれど、感情なんて言葉を尽くしても、伝えきれるものではない。だって感情は、刻一刻と変化するものだからです。
今回の自己紹介パーティー。
なんと三時間にも及んだわけですが、話しているヒト、聞いてるヒトの境目が、ふっと消える瞬間が、何度かありました。
「あなたの話」を聞いているのに、「自分の話」を聞いているような感覚に、会場が一瞬なるのです。
こういう経験をボクは何度もしている。
これは仏教でいうところの「自他一如」だと思うのです。
ボクがMAMEHICOを通して、二十年かけて訴えてきたもの。
それは、この「自他一如」ではないか。
そんなことをボクは帰り道、ぼんやりと思った夜でした。
次は銀座で、20周年パーティーをやります。



