先だってあんまり失敗が続く若いスタッフに、「おいこら、なんで君は深く考えることから逃げるんだ」とボクは問い詰めました。
すると彼女、「なんでかわからないけど、深く考えることが怖いんです。小さい頃から、いつも音楽や動画で頭を満たし、考えることから逃げ続けてきたんです」と訴えるのです。
いやはや。ボクはその開き直りの態度にイラッともしたので、「そうですか。だったら勝手にすればいいけど、今後ボクと一緒に仕事するのは無理ですね」と突き放しました。
すると彼女はそれを拒み、「イヤです。見捨てられたくないです。甘やかされてきた自分の今のままではダメなのはわかってます。きちんと変わりたい」と食い下がるじゃありませんか。
とまぁ。まるで程度の悪い恋愛ドラマみたいなやりとりですが、こんなシーンはボクの中では日常茶飯事のできごとなんです。
さて、この若いスタッフの行動や気持ち。ボクはよくわかります。
ボクにも彼女くらいの娘がいます。
こんな彼女たちの気持ちは、「現代社会が抱える根深い病理のひとつ」と認識しているので、若いヒトを捕まえて責め立てたところで、簡単に変わったりするわけない、と冷ややかに見ているのです。
うちの子たちの子供時代を見ていると、あまりにも滑らかで精製され過ぎている気がします。
清潔な水や整備された道路、スマホ、ショッピングモールなんかはもちろんのこと、「根源的な欠乏」といった人間の負の部分でさえ、社会システムによって丁寧に除去されてしまい過ぎてる気がします。
これこそが、若者たちを苦しめている根本的な原因だろうとボクは睨んでいるわけです。
あえて言うことでもありませんが、人類の歴史とはこれすなわち、空腹や寒さ、危険といった「欠乏」との闘いでありました。
この闘いの中でヒトは、「生き延びよう」という生命力を自然と鍛えてきたはずで、今のように、すぐに周囲が「甘やかし」、誰かが「助けてあげる」というシステムは、「生き延びるという生命力」を鍛えるメカニズムとしてはすっかり解体されてしまってるわけです。
さらに深刻なのは、なんでも子供たちに「自分で決めていい」「無理しなくていい」と促してしまうことでしょう。
自分で決定することができるのは、自分の力で生きられること、自分の面倒を見られること、すなわち「自立」とセットの上に成り立つわけで。
それが未熟なうちに、なんでも自分で決めていいよとなれば、それは甘やかしでしかない。
うちのスタッフにも多い、「誰か助けてくれるはず」、そして「助けてもらえなかった自分は被害者」という依存的な思考の中で育ったヒトは、いつも不安そうです。
見捨てられるんじゃないか。
不安な割には態度がでかく、上からの物言いで、「その態度、かえって逆効果なんですけど」と首を傾げてしまうんですが。
不安を頑張りでカバーしたりしようとするので、過度に働きすぎ体を壊したり、躁鬱を繰り返したりもします。
あくまで、MAMEHICOで起きているはなしですが。
ただ。誤解なきようにお伝えしておくと、ボクは今の若者が恵まれているとはちっとも思っていません。
彼らは昭和のような貧しさや暴力といった苦労はなかったとしても、質がまったく異なる、大きな苦労は強いられまくっているのを知っています。
働けどもちっとも生活は楽にならない経済的な重圧もそうだし、過当競争が激しく、少しでもスキルが足りなければ生き残れないシビアな椅子取りゲームにも立たされています。
さらに、社会のルールだ、コンプライアンスだとくだらないことに神経を使い、友達との遊びや恋愛、昔は普通だったやんちゃ遊び?も「リスク」と感じたりしている。
なんと息苦しいことでしょう、ああ気の毒です。
しかし。
結局いつの時代も苦難から逃れることはできないのが人間なわけで、「なにくそ、今に見ていろ」と決意し、自発的に「苦労」を選んだほうが人間として進歩するのは間違いないわけで。
それがベストとは言いませんが、少なくともベターな人生ではあるわけで、そういうことを大人が若い子に伝えたほうが良い、MAMEHICOを通じて伝える、というのがボクのスタンスです。
もちろんボクも例外なく、滑らかな時代に生きているわけで、ならば生命力の濃度が弱まってしまわぬよう、意図的に「精製」から距離を置き、自ら苦難、ノイズ、不純物を味わい「生命力を高めるトレーニング」を選択したほうがいい。
そのトレーニングとは、べつに命の危険ごっこではなく、日常に負荷をかける習慣の再構築です。
毎日掃除をするとか、朝、落ち葉は掃き清めるとか、水回りは常にきれいにする、約束は守る、とかです。
そうやって、自分で始めたことは続ける、という訓練が、失われてしまいがちな生命力を補っていると思う。
紫香邸で庭いじりをしたり、一人芝居なんかをしていると、いろんな若いヒトと出会います。
ボクたちが自らの限界を超えている姿に触れて、刺激を受けてくれたら良いなと思います。
若い子が抱える虚無感は薄めてあげたい。
スカしていた若い彼女だって「ほんとは強く生きたい」と願っているわけですから。
サプリメントを飲めば人生は楽になるなんてヒドイ嘘を、一刻も早く気づいてほしいと、娘たちに父は思います。

「MAMEHICOの大切にしている10のこと」をご紹介しながら、続けることの意味をお話しします。
2025.12.20
10:00〜/15:00〜
MAMEHICO神戸・御影にて



