2002年に「セレンディピティ」という会社を立ち上げました。
ただ、どうもこの言葉、馴染みがないようでして。
領収書をもらう際や電話口なんかで、一回で社名を聞き取ってもらえた試しがありません。
「セレンゲッティですか?」「エデンデピー?」なんて聞き返されるのは、もうしょっちゅうです。
このブログを読んでくださっている方ならご存知でしょうが、これ、「偶然の幸運」という意味なんです。
なにせ自分でつけた社名ですから、ボクなりにこの「幸運」についてはずっと考えてきたわけです。
そこで行き着いたのは、運の正体とは結局、そのヒトの「強い思い」なんじゃないか、という結論です。
つまり、ただ待っていても幸運は来ない。
「こうしたい」という強い思いがあるからこそ、必要な運が引き寄せられるのだと。
ですからボクは、会社を始めた当初から、「今がこうだから、次はこうしよう」と積み上げるんじゃなくて、先に「こうありたい」という未来への「思い」を、もう決まったこととしてドーンと真ん中に置いちゃう、というやり方をしてるわけです。
不思議なもので、そうやって「結論」を先に決めてしまうと、日々の予想外の出来事や、一見ただの偶然みたいな巡り合わせも、全部その未来へ行くための「必然」に見えてくる気がするんですね。
棚ぼたを待つんじゃなくて、やってくる偶然さえも、自分の「思い」の力で物語の一部にしてしまう。
そんなふうに考えているわけです。
さて、そのセレンディピティをテーマに、ラジオドラマを作りました。
ぜひ聞いて下さい。
MAMEHICOやボクが、なにを大切にやってきたかが、ほんのすこしわかるはずです。
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◾️トーク「量子力学」
浪越「科学においても偶然がなぜ起きてるかについての研究も、少しずつ進んでいます」
常連「偶然がなぜ起きるかは興味深いです」
浪越「量子のもつれって知ってますか?」
常連「聞いたことはあります。けど、どういうものなんですか?」
浪越「まずいいですか。電子や光の粒を量子と呼ぶんです」
常連「電子や光の粒が量子」
浪越「これを二つ同時に作ると不思議なことが起きるんです」
常連「はい」
浪越「まったく同じ双子を想像してください。その双子がどんなに遠く離れても、片方が笑った瞬間にもう片方も笑う」
常連「えっ」
浪越「片方が泣いたら、もう片方も同時に泣く。そんなことが実際に起きる」
常連「えっ、遠くにいても?連絡とかしてないのに?」
浪越「そう、まったく接触もなしに、です」
常連「そんなこと、ありえるんですか?」
浪越「普通はボールを投げたから窓ガラスが割れる──相関関係は、因果があると考えるのが常識ですよね」
常連「はい」
浪越「でも量子もつれの世界では、ボールを投げる前にもう窓が割れていると考えるもんなんです」
常連「えっ?投げる前に?」
浪越「そう」
常連「そんなことあるんですか?」
浪越「アインシュタインもね、そんな馬鹿なことがあるかと否定しました。しかし、1980年代以降の実験で、実際にそうした同時性が確かめられたんです」
常連「見えない糸みたいなものでつながっているんですか?」
浪越「そうやってつながっているという発想そのものがたぶん違うんですよ」
常連「そうなんだ」
浪越「まだそれがどうして起こるのか、誰にも説明できません。ただ、それが起きてること自体は事実です。その性質を応用して、量子暗号通信や量子コンピュータが開発されてますから」
常連「すごい。だけど、考えてみると、科学ではないところでは、そういう不思議なつながりって、縁とか運とか言いますものね」
浪越「そうなんです。たとえば心理学者のユングは、それをシンクロニシティと呼びました。
あるヒトが夢で金のコガネムシを見たんだよと話していたら、その瞬間、同じ金のコガネムシが窓から入ってきた──そんな偶然の一致というのはありますよね」
常連「はい、そういうことは、あります」
浪越「ユングはそれを、心と世界が共鳴した瞬間だと考えた。けど、科学的にはそれは因果関係が認められないので偶然で片付けられていた」
常連「思い込みとかね」
浪越「でも量子の世界では、すべてがつながっているという考え方なんです。ひとたび二つの量子が一度もつれた状態になると、どんなに離れても互いに影響し合う。
たとえば死んでしまった誰かが、今も自分に影響を与えている──そういうこともありますね」
常連「それはありますよね」
浪越「それは、量子レベルでもつれたままなんじゃないかともいえるわけで」
常連「死後の世界とつながってると」
浪越「はい。そもそも時間を一直線ではなく、同時に存在するものとして見る。これを多元宇宙(マルチバース)と呼ぶんですが」
常連「過去も未来も、同時に存在するって考えですよね」
浪越「そうです。いくつもの世界が同時に存在し、互いに干渉し合っている。だから、偶然の出会いも、どこか別の次元にいるあなた自身が用意した出来事だと考えることもできる」
常連「なるほど。偶然に見えるけど、実は死んだおじいさんが仕組んでくれてるとか」
浪越「自分が仕掛けているとか」
常連「思いがけない出会いとか、想定外の幸運とかは、たて続けに起きる不幸も」
浪越「それは別の次元のあなたが、今のあなたに贈ったプレゼントかもしれない。それを私たちは偶然と呼んでいるだけなんじゃないかと」
常連「物理頭で考えると混乱しますけど、宗教とかってそもそもそういう考えですもんね」
浪越「そのとおり。自分を肯定する波長が新しい幸運の偶然を呼び込むというのは、宗教では当たり前の考えでしょ」
常連「すべては気の持ちようっていう」
浪越「だから日常の中で例えば自分を肯定するくせを身につける、そうするとどうなるか。それは量子実験ともいえるわけです」



