MAMEHICOは、ずっと誠実さを信条にやってきました。
ひとつひとつの仕事を丁寧にやりましょうねと。
それがボクが二十年かけて築いてきた、この店のやり方です。
けれど、誠実でありさえすればいい、正直でさえあればいい。
そういうもんじゃないのもわかっています。
誠実は、美徳なんです。ともすると、それに酔ってしまいそうになるんですね、それではだめです。
世の中の仕組みは、誠実なボクたちを支えるようにはできていません。
Honesty is such a lonely word──誠実は虚しい言葉だ。
材料費は上がり、家賃も上がる。
誠実に手間をかけるということは、経費のかかることでもある。
端的に言えば人件費ですが、その人件費を削って「正直にやってます」とドヤ顔するのは、お人好しがすぎると思う。
この社会は、もっと誠実さでお金を生み出せたらいいのに、と思います。
けどボクたちの誠実が、きちんとお金の流れにつながるように、ボクはしなければならない。
そう思って、いろいろ試行錯誤してます。
阪急・御影駅の構内に大きな看板を出したい。
店がそう言うので、それをクラウドファンディングで集めることにしました。
プラットフォームの手数料もばかにならないので、自分でシステムを組み、早々に目標金額に達しました。
ご支援くださった皆さん、本当にありがとうございました。
ボクがいまやらなくちゃいけないと思っているのは、ボクたちの誠実さをどうやってお金や価値に変えていくかということです。ここが、まだまだできていない。
たとえば、MAMEHICOで毎日焼いているマフィン。とても美味しいのね。
ホームページからも買えるようにしました、ぜひ、買ってね。
でも、マフィンはマフィンなんです。巷にいくらだってある。
だからこれに付加価値をつけ、買ってもらうのは簡単なことではありません。
そのために仕込みから焼き上がりまでの工程を、全部見せたいとたとえば思ってます。
どんな材料を使い、どんな手で、どんな思いで焼いているのか。
その誠実さをきちんと伝えなければならない。
過程そのものを価値に変えたい。
完成品だけでなく、過程にこそお金を支払ってもらう時代だと思う。
店の裏側を見せるということは、うまくいかないことも、やり直す姿も隠さないということですから。
それを見せられるということで、少しずつ信用を得る。
そういう地道な工夫を積み重ねていきたいんですね。
こうした発信を、MAMEHICOの編集班、広報班としてもっともっとやらなくちゃだめだと思っています。
けれど、まったく手が足りません。
お金もありませんから、どどんと雇うこともできない。
それでも、手伝ってくれるヒトを探しています。
思いに賛同してくれてること、人間が優しいこと、文章が好きなこと、写真を撮るのが得意なこと。
どれか一つでもあるとね、小さな力でも構わないんですよ。
誠実さを伝える仕事を、一緒にやってくれるヒト、まじで求めています。
世の中の多くの店が、効率や拡大を目指していくなかで、MAMEHICOのような小さな店が必要よ。そう言ってくださるお客さんはたくさんいるんですね。
けどその声を、もっと見える形に変えていかなければならない。
そうしなければ、小さな店はみんな疲弊していくだけです。そうなる前に、なんとかしたいのです。
これまでも、困難はいくつもありました。
けれど、そのたびに乗り越えられたのは、「小さな力しかありませんが」と言って手を差し伸べてくれるヒトが現れたから。
MAMEHICOは、そうした小さな力で生き残ってきたんです。
だからこそ、いまも呼びかけたいなと。

小さな店として始めて二十年。「MAMEHICOの大切にしている10のこと」をご紹介しながら、続けることの意味をお話しします。



