季節を待つよろこび

こんにちは。MAMEHICO神戸・御影スタッフの水野知帆です。

最近、ネットの情報を見て来てくださるお客さまが増えました。
そして、こんなやりとりがよくあります。

「これ、メニューに載ってないんですが、ありますか?」
スマホの画面に映っていたのは、MAMEHICOで人気のデザート、檸檬ケーキの写真でした。

「あ…」と少し間を置いてから、私はお伝えしました。
檸檬ケーキは季節限定のメニューであること。
国産レモンが採れる冬の時期に、またご用意する予定であること。

こうしたお客さまは、一人や二人ではありません。
説明をすると、少し残念そうな表情をされることもあり、そのたびにふっと考えてしまいます。
「これ、通年メニューにしたらいいのでは…」

今はスーパーに行けば、チリ産やアメリカ産など外国産のレモンも並んでいます。
国産にこだわらなければ、夏でも手に入る。
だから、作ろうと思えば作れるのでは…と、新人の私はつい思ってしまいます。

それでもMAMEHICOは、季節にこだわります。
人気があっても、その果物の旬を無視してまで続けようとはしません。
「それが普通でしょ」と、井川さんだけでなく、長く勤めているスタッフも口にするからです。

実際、檸檬のことだけでなく、檸檬ケーキの土台となるパイ生地も、サクサクの食感に仕上げるために、バターが溶けないよう室内をよく冷やすことが大切だと、ほかのスタッフが話しているのを聞いたことがあります。
となると、エアコンをつけても暑い夏のキッチンで、美味しい檸檬ケーキを作るのは無理があるのだと分かります。
そういう意味でも、MAMEHICOの檸檬ケーキはやはり冬がベストシーズンなのだと、一年通して店に立ってみて実感しました。

そんな中、檸檬ケーキを調べて来てくださったお客さまとの会話がありました。お会計のときのことです。
「檸檬ケーキをお目当てに来てくださったのに、お出しできなくてすみません。」

申し訳ない気持ちでそうお伝えすると、笑顔でこんな言葉を返してくださいました。
「季節のパフェ、とっても美味しかったです。檸檬ケーキ、冬ですよね。食べられなくて残念だったけど、その時が待ち遠しいです。また来ます。」

気をつかって言ってくれたのかもしれません。
でも私は、「待ち遠しい」という言葉を聞いて、はっとしました。
そうか、今は手に入らないことを残念がるのではなく、その時が来るのを楽しみに待つ――そんな楽しみ方もあるのだ、と。

季節をまたいで待ってくださるお客さまがいることが、ありがたいです。
その期待に応えられるように、私もそのときどきの季節を大切に過ごしていきます。