同じではない美しさ

みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野です。

MAMEHICOでは毎年、その時季ごとの素材をいかしたデザートをお出ししています。
いまのおすすめは「桃寒天パフェ」です。
桃と寒天を組み合わせた、とてもシンプルなデザートですが、シンプルだからこそ素材そのものの味わいが引き立ちます。

桃は産地や品種、そしてその年の気候によって大きく味が変わります。
去年はやさしい甘さが印象的でしたが、今年は香りが華やか。
スタッフ同士でも「去年とちょっと違うね」と話題になるほどです。

今年は途中から、福島の農家さんから直接桃を送っていただいています。
福島では「やわらか派」と「かた派」という好みがあるそうで、同じ県内でも人によって食べ方が分かれるのだとか。
今回MAMEHICOに届いたのは、その中でも「かた派」の桃です。

果肉はやわらかくとろけるタイプではなく、しっかりとした歯ごたえがあり繊維は少なめ。
かじると果汁がほどよく広がり、皮のまわりには甘みと酸味が絶妙なバランスです。

仕上げには自家製の梅シロップをひとさじ。
これもまた、その年の梅の出来によって少しずつ味わいが変わります。

桃も梅も、自然の産物だからこそ「今年だけの味」が生まれるのです。
完璧に同じ味を再現することはできません。
でも、それこそが楽しみだとわたしたちは思います。

いまの大量生産の世の中では、どこで買っても同じ味を楽しめるよう工夫されています。
たしかに便利ですが、本来、土地や季節による小さな違いこそが文化を育ててきました。
その差異を味わうことが、食べる喜びを豊かにするのだと思います。

わたしたちが扱っているのは、商品ではなく自然からの贈りもの。
だからこそ「今年の桃は今年だけ」。
自然とともにある、ささやかな贅沢です。

今年の桃寒天パフェも、季節の移ろいとともに少しずつ表情を変えていきます。
どうぞ、このときだけの桃との出会いを、ゆっくり味わってみてください。