創造とは過剰

今年に入って、ほとんど息つく暇がないんです。
桐生では庭いじりと補修。毎月ある面白ラジオの脚本と収録、それに編集。
御影では新作メニューづくりに加えて、イベントの仕込み。
さらに、これまで手が回らなかったメンバーシップの仕組みと、ホームページの改修にも、ようやく本腰を入れはじめたところです。

そんななかで、舞台作品「cinemusica(シネムジカ)」が動きはじめています。
7月6日、MAMEHICO銀座で上演です。
cinemusicaっていうのは、小芝居と音楽、それから映画の名シーン。
この3つを組み合わせた、ボクの作・演出による新しい舞台作品なんです。
いくつもの物語が、それぞれ別々に進んで、やがて静かに重なっていく、そんな構成です。

cinemusicaに限らず、生の舞台って一度きりで終わるものじゃないのね。
毎回、お客さんの反応を見ながら、脚本も演出も少しずつ変えていく。
神戸でやったときも、いろいろ気づきがあった。

まず、入日茜さんがこの舞台のために書き下ろした新曲があって、それがすごくよかった。
言葉では言い尽くせないような感情を、彼女らしい歌で表現しててね。
そこに、役者ふたりの芝居もとてもよくて、シーンが進むたびに、空気が変わっていくのが伝わってくる。

ラストシーンなんか、感極まってハンカチで目頭拭いてるお客さんもいたくらいでね。
PAなんて鼻たらして、「ウッウッウッ、井川さんてホンマ天才ですやん」って嗚咽してたし。
うまく言えないけど、優しくて、温かくて、なにかが残る。
そんな舞台になってる気がする。
cinemusicaに立ち会った全員が、なにかを受け取ってくれてるんじゃないか。そんなふうに思います。

こうやって、あっちこっちに手を出しているからか、「井川さん、無理しないでくださいね」って、よく言われる。
優しさからかけてくれる言葉だと思うから、ありがたいです。

でもね。
ボクたちMAMEHICOって、無理せずやれるもんでもないわけ。
無理を重ねていくなかから、思いがけず奇跡みたいなことが起きたりする。
実際、cinemusicaの入日さんとの出会いだって、奇跡のひとつだったわけだけど、こういう形で舞台として結実するには、それなりの苦労はあるわけですよ。

「創造とは過剰」。
これはボクの言葉だけど、自然を見れば、それははっきりしてる。
木々は必要以上に葉を茂らせ、果実を実らせる。
べつにその実を、自分で食べるわけじゃないのに、過剰に実をつけるでしょ。
その過剰さが、ある関係を生み、物語がはじまり、やがて次の命を運ぶ、のだとボクは思う。

人間も、たぶん同じ。
やりすぎのヒトのまわりに、ヒトが集まってくる。
ぜんぶ自然の理(ことわり)なんじゃないかしら。

なるべく無駄をそぎ落として、要点だけで勝負する。
そういうのは、無理が効かなくなってからのはなしでしょ。
若いうちは、過剰でやるしかない。

やりすぎて、失敗して、それでもまたやって、失敗する。その繰り返しのなかでしか、手に入らないことがある。
知識や経験でショートカットできるほど、人生ってうまくいかない。

ボクはこれからも過剰でいたいと思う。まだまだ、この過剰さを手放す気には、なれないのね。
やりすぎと笑われるくらいが、ちょうどいい。
ボクのそういう過剰が、MAMEHICOを少しずつ面白くさせていると思うし。

というわけで、7月6日。銀座のMAMEHICOで、ボクのやりすぎ舞台、「cinemusica(シネムジカ)」。
必ず見に来てください。

 

cinemusica
2025.7.6
開場12:00 /開演13:00
開場17:00 /開演18:00
MAMEHICO東京・銀座にて

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