出会いは静かにあたたかく

はじめまして。MAMEHICO神戸・御影メンバーの市場里香と申します。

Instagramで偶然見つけた「小さな音楽会」出演者募集のお知らせ。
私好みの内装と、クラシカルな調度品で整えられた美しい店内写真。
それが、私と MAMEHICO神戸・御影との出会いでした。

実際に訪れてみると、どこか懐かしく、落ち着いていて、ふっと心がほぐれるような空気が流れていました。
今どき珍しくポットで提供されるコーヒーには、
「どうぞごゆっくり」
という優しいメッセージが込められているようで、古伊万里の蕎麦猪口をコーヒーカップとして使うセンスにも心をつかまれました。

そんな温かい空間をつくっているオーナーの井川さんが、「始めて続ける」をテーマにトークイベントをされると知り、“どんな方なんだろう？”という純粋な興味から参加してみました。

私が参加した昼の部は15名ほどの少人数で、最初に参加者一人ひとりが自己紹介と参加理由を話していったのですが、すでにその時点で刺激たっぷり。
ご夫婦で参加されている方、遠路はるばる三重から来られた方、お勤めの方もいれば自営の方も。そして、中学生のお子さんと親子で参加されている方もいらっしゃいました。
個性豊かな参加者それぞれの物語に触れ、特に中学生のお子さんがびっくりするほど真剣に自分の人生と向き合い、将来の展望を堂々と語る姿には感銘を受けました。

井川さんは、ご自身のことを「源泉100％かけ流し」「気当たりするタイプ」と笑いながら話すユニークな方で、確かにキャラは濃い（すみません笑）。
少し乱暴に聞こえる言葉もあるけれど、その裏には愛情があって、不思議と空気があたたまるような独特の存在感を持つ方でした。

お話の中で特に印象に残ったのは、“本物を提供し続けることの難しさ”。
MAMEHICOのように素材や器、家具、調度品、空間の心地よさに徹底してこだわると、カフェの利益率はなんと2％ほどだそうです。

もしコーヒー1杯が500円なら、1,000円の利益を得るためには100杯のコーヒーを出さなければいけません。
大手チェーンのように大量仕入れでコストを抑えることができないので、本物思考を追求すればするほど、それを続けることは難しくなります。

そして、お客さんが来てくれなければ、お店は存続できない…。
思い返せば私も、お気に入りのお店がいつのまにか閉店していて寂しさを感じたことがありました。
「老舗が惜しまれつつ閉店」というニュースで、最終日に行列をつくる人たちの気持ちもよくわかります。
でも井川さんは言います。

「みんな閉店を嘆くけど、あなたたちがお店に行かなかったから潰れちゃったんでしょ！」

…確かに、その通りですよね。
とはいえ、毎日通うのは難しいし、いくら好きでもマフィンを一度に5個、10個と食べられるわけでもない。
MAMEHICOがメンバー制度を設けているのは、そこに理由があるのだそうです。

月1,000円ほど払って応援メンバーになれば、
“月に100杯コーヒーを飲んだのと同じくらいお店に貢献できる！！”

お店側は、応援メンバーが増えればお店の維持に頭を悩ませる必要がなくなり、ポリシーを守りながらより良いお店づくりに注力できる。
メンバー側にとっても、頻繁には通えなくても、大好きなお店が長く続くように力を添えることができる。
双方にとって win-win の素敵な仕組みだなぁと思いました。

MAMEHICOは、コーヒーや軽食を提供するだけの場所ではありません。
さまざまなイベントが企画されたり、お店を飛び出して遠足に出掛けたり、映画やラジオ、YouTube制作をしてみたり、古民家再生や庭造りまでやってしまう！
カフェと全く関係ないやん！とツッコミたくなるけれど、人と人がゆるやかにつながる、温かいコミュニティづくりを大切にされています。

社会の中で人間関係が希薄になりつつある今、大人のサークルのような存在はとても貴重だと思います。
ここに集まる人たちのストーリーに触れる時間は、ふと自分を見つめ直すきっかけをくれたり、新たなご縁を運んでくれたりします。

この場所の温かさは、井川さんとスタッフのみなさんの“受け入れる姿勢”から生まれているのだと思います。
「MAMEHICOが好き」という気持ちを持つ人たちが自然と集まってくるからこそ、あの心地よい空気が保たれているのだと感じました。

私と MAMEHICO の物語はまだ始まったばかり。
これからどんなふうに紡がれていくのか、楽しみです。

次回のトークイベントは、12月20日（土）に開催されます。
自分を見つめ直すきっかけが欲しい人。
癒やしを求めている人。
ピリッと刺激が欲しい人。
そして「特に何も求めていない人」でも（笑）。
来てみたら、思いがけず“新しい自分”に出会えるかもしれませんよ〜！